GAMEなら何でもいいってわけじゃないよね  五十路のオッサンゲーマーは異世界で何かする

なかのしま

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133話:おっさん困る

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 「すいません、私のせいでこんなことになってしまって。」
 「お嬢が謝ることじゃない、悪いのは教会の連中だ。」
 「そうそう、カナンちゃんは何も悪くないからねぇ。」
 「奴らには指一本触れさせんから安心しろ。」
 はぁ・・・カナンお付きの3人が、なんだかとってもウザいんですけど。
 こういう感じって、漫画とかアニメでしか見た記憶が無いんだけどね、現実に目の前でやられると、どうしていいんだかって感じになるんだね。
 今の若人はこういうノリに入っていけるんだろうか?
 それともスルーするんだろうか。
 オッサンとしては、どっちも無理っぽいです。
 なので、
 「ごめんね、いつ襲撃されるか分からないから、ちょっと声のボリューム落としてね。」
 こうやって逃げることにした。
 黙れって言えないビビリなオッサンなのです。
 困ったもんだ。
 
 俺とカナン達4人はドワーフ村を出て、整備中の街道予定地とは反対方向へと向かっている。
 なるべく負担の大きくない場所を選んでいるつもりだけれど、道などない山の中を進まなければならないため、移動にはかなり体力を消耗する。
 カナンの体調が完全に戻っていない現状、できれば取りたくない方法だった。
 それでも、急がなければならない理由があるのだ。
 ハイド、ルーク、リンクのカナン親衛隊(と、勝手に呼んでいる)は、意識を失ったままのカナンを連れてドワーフ村へ案内すると、気が抜けたように意識を失った。
 その後、2日ほどで3人とも回復、さっそく詳しい話を聞こうとしたんだけれど・・・。
 はぁ・・・。
 カナンの許可がない限り何も話さないとか言い出して、結局カナンが回復するまで10日間も事情が分からないままだった。
 マジで勘弁してほしいよね。
 仕方なく俺も付き添いでドワーフ村に滞在、支店の開業準備やら何やらに、ドワーフ村を訪れる種族たちとの交渉とか、非常に真面目な生活を余儀なくされてしまった。
 収穫あったから良しとしよう。
 ドクリオやネコビトが持ち込んだ薬草類、これらやノエルさんが育てている薬草を使えば、中級までのポーション類のほとんどが再現可能だと判明した。
 当然だけど季節ごとに採れる薬草も変わるので、ひょっとすると上級ポーションも作れるようになるかもしれない。
 想像以上の成果だ。
 他の種族との取引も、支店を通じてやり取りすることで順調に話が進んだ。
 ここら辺も村としての取引ってことでユーキに丸投げしたかったんだけどね。
 取引量が少ないだろうし、彼らの所在は位置的に王家直轄領の中になるわけで、いろいろ面倒になりそうだから俺との個人的な取引ってことにしてくれって言われちゃったんだよね。
 後から聞いたんだけど、俺たちが王都に滞在中、ダンス練習だのお披露目の準備だのに忙殺されていた中、スロークたちはドワーフの扱いをどうするかで一悶着あったらしい。
 ドワーフとの関係を良くしておきたいスロークや王家は、ドワーフ達は直轄領とする前から暮らしていた先住民であり、尊重するべきだとして今までどおりの生活を約束するとした一方、王家直轄領の中に住む以上はサンザ王国の国民として統治するべきだという貴族たちも少なからずいた。
 ありがたいことに、俺がダンスやらに辟易としている間に決着をつけてくれていた。
 統治する王家と、隣接するカルケール、コリント両伯爵の口添えもあってこちらの主張が通ったみたいだけれど、さらにドワーフ以外の存在と取引、なんて話が伝わったら、ゴタゴタが再燃しかねないので黙っておいてくれと。
 そういうことだったので仕方ない、一人で頑張るしかない。
 夜は夜で毎晩大宴会の大騒ぎである。
 俺にとってはね。
 驚くべきことに、ドワーフにとっては日常らしい。
 おかげでキュア使いまくり。
 熟練度稼ぎにすごく良い・・・MAXだから意味無いけど。
 
    **
 
 「私、リムヴァの教会でポーションを作らされていたんです。」
 そう言って始まったカナンの説明は、なかなかに衝撃的なものだった。
 かつてみどり村を襲撃して来た連中から聞いた話から、聖都リムヴァってのはなるべく関わりたくない相手として認識していたんだけれど。
 誠に残念ながら、すでにドップリと関わってしまっていたようだ。
 推測ではあるけれど、迷彩服の男、まだ村がワタリビトだけだった頃に突然襲撃して来たあいつ。
 あいつが狂行に走った切っ掛けとなった事件は、カナンが教会からの脱出を決心するきっかけにもなっていたに違いない。
 俺たちを魔物と断罪するだけなら、納得はできなくても理解はできる。
 でも、その裏ではワタリビトの力をいいように利用していたなんてな。
 腹立たしい。
 カナンの生活は奴隷、とまではいかなくても、自由を制限され、監禁に近い状態で強制的にポーションを作らされていたらしい。
 「他にもお嬢のように、力を持つ者が捉えられている可能性は高いな。
 教会の暗部には、悪魔の力を受け入れたっていう”下天”とかいう組織もあるらしい、あくまでも一部の高位者だけの秘密になっているようだが。
 リムヴァの教会には、3人の枢機卿と5人の聖女がいるんだが、5人の聖女のうちの一人がお嬢だ。」
 隠密行動が得意だというルークが、教会で情報収集した結果を話してくれたけど・・・
 「聖女?」
 聞き間違いじゃないよね?
 「なんか、そういうことにされちゃってました。」
 オイ!
 まずくね?
 おーまいがーだよ、それ。
 逃げ出した聖女なんて・・・確実にヤバそうな連中が追ってくるじゃん。
 ”下天”だっけ?
 悪魔の力を受け入れたって、なんのアニメだよ、そいつら。
 「本当なら、街道を通ってあなたたちの村に向かう予定だったんです。」
 「街道にも教会の暗部らしき一団を見かけたんでね、ぐるっと回って、反対側から森を突っ切ろうとしたんだけどさ、も~大変だったよね、特にハイドが音を上げちゃってさぁ。」
 「音を上げてなどいない。」
 カナンに続いてリンクが、彼らの行動を説明しつつハイドをからかい、即座にハイドが反応する。
 こういう状態じゃなかったら飽きなくていいだろうね。
 今はやめてほしいが。
 「体力的に大丈夫?
 ゲームのプレイヤーが追っ手の中にいるなら、ここが襲撃されるかもしれない。
 できる限り早くここを離れないと。」
 目覚めたばかりの女の子(中身は分からんけど)を急かすのは気が引けたけれど、ドワーフや村に集う様々な種族のヒト達に被害が及ばないようにしなければならない。
 「大丈夫です!
 これ以上ご迷惑をおかけするわけには行けませんから。」
 と、今にも倒れそうな顔色で元気いっぱいにガッツポーズをとる少女に、思わずエイルヴァーン製のクッキーを渡してしまった。
 餌付けじゃないぞ、クッキーには気力回復効果が付いてるからだからね。
 
 そんなわけで、俺たちはカナンの様子をうかがいながら山道を歩いているわけだ。
 襲撃に備えながらの道中はなかなか進まない。
 例の伝書鳩を使ってエースを呼ぶか、とも思ったけれど、みどり村で何か起こった時に航空戦力になるグリフォンのエースは必要だろうと、徒歩での移動を決めた。
 フブキは第四貯蔵庫で待機させているけれど、追っ手と対峙した時の予備戦力として隠しておきたい。
 もし俺の手に負えないような敵だったのなら、最悪カナンを連れて逃げてもらわなければならないからだ。
 「”下天”のトップは、たぶんパレオルトリス枢機卿辺りじゃないかと思っているよ。」
 「え?リンファレイオ枢機卿じゃなくて?」
 「あぁ、確かにお嬢を軟禁していた首謀者はリンファレイオだけどね、”下天”がお嬢や俺たちみたいに特殊な能力を持っているなら、結界を通り抜けられないだろ?
 なら、”下天”の本拠地は結界の外のはずなんだ。
 枢機卿で結界の外に出るのはパレオルトリスくらいだから、トップっていう可能性が高いんじゃないかってね。」
 なんか舌噛みそうな名前が飛び交ってるんですけど。
 「教会では、教皇からホーリーネームが与えられるんだ。
 聖典から引用されるんでなじみのない響きが多い。」
 「そ、だから、本人たち同士でも本名知らないんじゃないかな。」
 ついに、ハイドとリンクにも俺の考えてることが筒抜けになってしまっている模様・・・一応直そうとしてるんだけどなぁ・・・いっそ、麻痺させて表情動かないようにしてやろうかな。
 その時、突然俺の”広域警戒”に反応があった。
 「真上?!」
 スキル”警戒”や”広域警戒”の欠点は、真上から見た平面状でしか認識できない点にある。
 だから、途中をすっ飛ばしていきなり反応が重なって現れたことで、俺は地面のある下ではなく真上だと判断した。
 見上げるのと、ドスンという衝撃音がほぼ同時だった。
 (くそ、転移か何かか・・・。)
 ”広域警戒”の範囲より高い位置、エースのような飛行ユニットからのダイブだと思った俺は、間抜けなことに天を仰いでしまった。
 腹に重い一撃。
 が、ドワーフ村を出る前にシッカリ装備を整えている。
 二~三歩後ろに下がったものの、大きなダメージはない。
 ウリエガノフを抜き様に切りつけた。
 が、襲撃者はバックステップで軽くかわし、上物と思わしき黒いローブを脱ぎ捨てた。
 中身は先ほどまで纏っていた上質のローブとは真逆の、何とも貧相な服だった。
 「聖女は返してもらうぞ。」
 それだけ言うと、中腰の姿勢を取り、両腕を顔の前で交差させた。
 「アビスティェンジ。」
 その言葉が、襲撃者の全身を一気に隆起させた。
 (なるほど、だからローブを脱いだのか。)
 ローブの下に着ていた服が裂け、黒い鱗状の体が盛り上がる。
 (特撮ファンか?コイツ。)
 少し訛っていたけど、間違いなくアビスチェンジと言っていた。
 初代マシンライダーの敵幹部、アビスロードに変身する時のセリフとポーズだ。
 しかし、ライダーになるならまだしも、敵になるゲームなんてあるのだろうか?
 さすがのオッサンも、初代放映時はまだ生まれていない。
 懐かしのヒーロー特集で必ず出てくるくらい有名な敵幹部だから知っていたけれど、そこで見た以上の知識は無い。
 「トリプルフォースガード。」
 カナンが魔法を使用したのか、3人だけじゃなく俺にまで淡い光が体を包むように現れて消えた。
 自分以外に支援系魔法かけられたことなかったけど、こんな感じなんだ。
 「ツインポテンシャルアップ。」
 続けるように補助魔法が飛んでくる。
 最初が防御系で、次は攻撃、速度上昇系の魔法みたいだ。
 「プロヴァケーション! アイアンウォール!」
 「スナイプ。 ツインアロー。 ペネトレーション。」
 「フレイムエンチャント。 ホーミング。」
 ハイドとルークも能力向上と思われるスキルを展開、リンクもハイドとルークに付与系の魔法をかけている。
 これを、敵が変身を終えるまでのわずかな時間に完了していた。
 さすがの連携力だ。
 俺、こういうの苦手だったなぁ。
 だからシングルゲームに逃げたんだけど。
 「おぉおぉおお!」
 って、余計なこと考えていたら敵の変身が終わったようだ。
 細マッチョだった男が、筋骨隆々、黒い爬虫類のような体になり、痛そうな棘やらが無数に飛び出している。
 俺はこの間、伝家の宝刀ばかのひとつおぼえマジックミサイルを強化中、今回は最大の5倍まで強化するつもりだ。
 準備時間が非常に長いので、こういったチャンスでもないとなかなか5倍化までできないんだよね。
 5発全弾命中すれば、現状の俺では最高火力を発揮できる。
 消費魔力も比較的良心的。
 この先の戦いのためにも最大火力がどこまで通じるか知っておきたかった。
 それが間違いだった。
 どうして俺は、大事な選択でミスるんだ?
 5対1だからと油断した?
 明らかに俺より強いであろうハイド達に甘えた?
 変身を終えたアビスロードの姿はそのままに、灼熱の痛みを伴って、異物が俺の腹を貫いていた。
 その異物感が消えると、準備していたマジックミサイルは霧散し、足の力が抜けその場に膝をついた。
 「シンさん!!」
 カナンの叫びが聞こえた。
 そうして、ようやく俺は、目で追えないほどの速度で背中から生えた触手に腹を貫かれ、即死級の一撃を食らったのだということに気づいた。
 即死で良かった。
 それほどの一撃でなければ、速攻で戦線離脱しているところだった。
 一度だけ死を肩代わりして生命力を半分まで回復してくれる激レアアイテム”不死鳥のネックレス”。
 生き返った時からずっと身に着けていたコレのおかげで命拾いした。
 自慢の鎧には大穴が開いているけど。
 「ぐあっ!」
 俺が死にかけから復活するとほぼ同時に、ハイドが吹っ飛ばされていた。
 あの触手はヤバい。
 防御力重視のハイドでもこらえきれずに吹っ飛ばされる威力、直撃ならハイド以外誰も耐えられないだろう。
 「これを使え!」
 俺は、”商会”の能力で貯蔵庫内に保管されていた大型のタワーシールドを取り出すと、ハイドに投げた。
 「ありがたい!」
 触手の攻撃を紙一重で躱したハイドは、俺が投げたタワーシールドを掴むと、それを正面に構えてアビスロードに突進した。
 「シールドバッシュ!」
 シールドが光り、アビスロードの触手攻撃を弾き飛ばし、さらにはアビスロード本体をもシールドで弾き飛ばした。
 「レインアロー!」
 弾き飛ばされたアビスロードの頭上から、ルークが放った無数の矢が降り注ぐ。
 「インフェルノ!」
 すかさずリンクが魔法を使い、アビスロードを紅蓮の炎が包み込んだ。
 なるほど、これが連携なんだね。
 でも、なんでハイドは盾持ってないの?
 どう見ても、最近流行りのタンク職って奴に見えるけど。
 いかんぞ、俺、何もやらずに終わってしまいそうだ。
 このままじゃ、ただの”へそ出し盾投げオッサン”として終わってしまう。
 なんて不安は無用だった。
 アビスロードが強すぎる。
 触手だけでも厄介なのに、本体もたいがいに強い。
 拳一つでタワーシールドがひしゃげ、ハイドが吹っ飛ぶ。
 2本の触手は、まるで別の人格が宿っているんじゃないかってくらいの動きで俺やルーク、リンクを攻めまくる。
 カナンは触手の圏外をキープしながら回復と補助にかかりきりだ。
 カナン達4人の見事な連携をあざ笑うかのようにジワジワと追い詰めるアビスロード。
 俺は、連携を邪魔しないようにアビスロードに”嫌がらせ”をすることに決めた。
 触手から逃げ回るふりをして、アビスロードの死角に入ると、せっせとデバフをかけてゆく。
 エイルヴァーンのデバフ系魔法は、抵抗されても1/5程度は影響を与える上に、重ねがけができる。
 魔法抵抗力、筋力、速度、防御力の順にデバフを重ねてゆき、ルークの”レインアロー”に合わせて、頭上から魔力弾の雨を降らせる”マジックレイン”を放ったり、ハイドに近づいた時には”シールド”をハイドのタワーシールドに重ねたりしながら、邪魔にならない邪魔を続けた。
 そしてついに、戦局が変わる。
 カナンの補助によってハイドたちの能力は向上し、俺の邪魔によってアビスロードの能力が減衰し続けたことで、とうとうパワーバランスが崩れた。
 途中でシンの意図に気付いたアビスロード(グラン)だったが、その時はすでに対処が困難なほどに両者の差が縮んでいた。
 それならば、一瞬でも早く、バランスが崩れきる前にケリをつけてしまおうと攻勢を強めた。
 しかし、防御に徹したハイドを崩せぬまま、グランの魔法抵抗力は、シンのデバフを抵抗できないまでに低下していた。
 一気に能力が減衰し始めたグランに、カナン達4人(プラスお邪魔なオッサン)の連携に対抗できるだけの力は無かった。
 リンクの”インフェルノ”で変身が解除されたグランは、ルークの矢で眉間を貫かれて倒れた。
 「はぁ~、何ともとんでもない奴だった。
 しかし、みんな強いね、連携とか、いい勉強になったよ。」
 苦手だなんだ言ってないで、真剣に連携とかも勉強しないと、なんて思ったもんだから、嘘偽りなく感想を伝えた。
 「何言ってんのさ、シンの魔法が無かったら勝ててないじゃん。」
 地面にへたり込んだリンクがこんなこと言ってくれる。
 「そもそも、この盾が無かったらあの触手すら防げていなかった。
 すまない、もうこれでは使い物にならないな。」
 そう言ったハイドの持つタワーシールドは、見事なまでボコボコにひしゃげていた。
 「ごめんなさい、どうしてもお金の工面が出来なくて、森に入る直前に・・・。」
 「カナンのせいじゃない、入り組んだ森に中でタワーシールドは邪魔になると思っただけだ。」
 なるほど、やっぱりハイドは盾職だったのか。
 ってことは、最初にハイドが使った”プロヴァケーション”ってのがヘイトを自分に集めるスキルか。
 「これは、何だ?」
 いつの間にか襲撃者の元でしゃがみこんでいたルークが、変身でボロボロになった服から落ちたカードのようなものを拾い上げていた。
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