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二章
来訪
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「失礼。そこを行くお嬢さん方、少しお時間よろしいですか」
振り返ると、そこには旧教派の司祭服や修道服とも違う祭服を身にまとった二十代半ばの男性が立っていた。
金色の前髪を立ち上げたツーブロックの髪型は、およそ聖職者には似つかわしくないものだ。緩やかなカーブを描いた口元は何を考えているのか読み取れなくて、ひどく胡散臭い。
「あ、あの……」
思わず身構える私に、エリカはぎょっとして私の口を抑えた。それから私の頭を力一杯抑えつけて、深々とお辞儀をした。
「ジーク枢機卿、ようこそいらっしゃいました。お見苦しいところをお見せしてしまい、大変申し訳ありません」
枢機卿といえば、教会における最高指導者を指す役職だ。アウレリア様が新教を奨励しているとはいえ、あくまで国教は旧教なので、枢機卿は旧教の司祭から国王によって選任される。つまり、私達の上司にあたる人だ。
知らなかったとはいえ、先程の不躾な態度を咎められやしないか戦々恐々としていると、頭上からぷっと吹き出す音が聞こえてきた。
「ははっ、嬢ちゃん達おもろいな~……って、ちゃうちゃう! はぁ、今さら締まらへんし、もうええか」
完全に大阪にいるあんちゃんのノリで笑うジーク枢機卿に、私達はすっかり度肝を抜かれて、互いに顔を見合わせた。
「あ、あの、もういいとは一体……?」
「言葉通りの意味や。ボク、堅苦しいのって苦手やねん。お使いやさかい、しっかりせなあかん思ててんけど、やっぱダメやったわ。今日はオフってことで見逃してくれへん?」
「も、もちろんですわ」
両手を合わせて頼みこむジーク枢機卿だったが、私達のような一介の修道女が逆らえるはずもない。気安い態度に砕けた言葉使いといい、ジーク枢機卿は私が考える偉い人とはかけ離れた人物のようだ。
「あれ、どこにやってもうたかな?」
どこかとぼけた調子で、ジーク枢機卿は懐に手を突っ込んで何か探しているようだった。
「お、あったあった。はい、これ」
そう言うと、ジーク枢機卿は懐から手の平サイズの薬瓶を取り出すと、エリカの手にぎゅっと握らせた。
「ジーク枢機卿、こちらは?」
「アウレリア様からもろた、神秘の霊薬や。スプーン一杯分を飲ましたら、どんな病気も治んねんて。大事にしてな」
ガラス瓶の中に入った青い液体は、まるで星を閉じこめたようにキラキラと輝いていた。
「ありがとうございます、ジーク枢機卿!」
突然降って湧いた奇跡のような施しに、私は柄にもなく神に感謝を捧げたくなった。
良い意味であっけない幕切れだったが、あの子を助けられるのだから、これほど喜ばしいことはない。私はエリカと喜びを分かち合おうとしたが、すっかり舞い上がっている私に対し、エリカは複雑な様子で薬瓶を見つめていた。
振り返ると、そこには旧教派の司祭服や修道服とも違う祭服を身にまとった二十代半ばの男性が立っていた。
金色の前髪を立ち上げたツーブロックの髪型は、およそ聖職者には似つかわしくないものだ。緩やかなカーブを描いた口元は何を考えているのか読み取れなくて、ひどく胡散臭い。
「あ、あの……」
思わず身構える私に、エリカはぎょっとして私の口を抑えた。それから私の頭を力一杯抑えつけて、深々とお辞儀をした。
「ジーク枢機卿、ようこそいらっしゃいました。お見苦しいところをお見せしてしまい、大変申し訳ありません」
枢機卿といえば、教会における最高指導者を指す役職だ。アウレリア様が新教を奨励しているとはいえ、あくまで国教は旧教なので、枢機卿は旧教の司祭から国王によって選任される。つまり、私達の上司にあたる人だ。
知らなかったとはいえ、先程の不躾な態度を咎められやしないか戦々恐々としていると、頭上からぷっと吹き出す音が聞こえてきた。
「ははっ、嬢ちゃん達おもろいな~……って、ちゃうちゃう! はぁ、今さら締まらへんし、もうええか」
完全に大阪にいるあんちゃんのノリで笑うジーク枢機卿に、私達はすっかり度肝を抜かれて、互いに顔を見合わせた。
「あ、あの、もういいとは一体……?」
「言葉通りの意味や。ボク、堅苦しいのって苦手やねん。お使いやさかい、しっかりせなあかん思ててんけど、やっぱダメやったわ。今日はオフってことで見逃してくれへん?」
「も、もちろんですわ」
両手を合わせて頼みこむジーク枢機卿だったが、私達のような一介の修道女が逆らえるはずもない。気安い態度に砕けた言葉使いといい、ジーク枢機卿は私が考える偉い人とはかけ離れた人物のようだ。
「あれ、どこにやってもうたかな?」
どこかとぼけた調子で、ジーク枢機卿は懐に手を突っ込んで何か探しているようだった。
「お、あったあった。はい、これ」
そう言うと、ジーク枢機卿は懐から手の平サイズの薬瓶を取り出すと、エリカの手にぎゅっと握らせた。
「ジーク枢機卿、こちらは?」
「アウレリア様からもろた、神秘の霊薬や。スプーン一杯分を飲ましたら、どんな病気も治んねんて。大事にしてな」
ガラス瓶の中に入った青い液体は、まるで星を閉じこめたようにキラキラと輝いていた。
「ありがとうございます、ジーク枢機卿!」
突然降って湧いた奇跡のような施しに、私は柄にもなく神に感謝を捧げたくなった。
良い意味であっけない幕切れだったが、あの子を助けられるのだから、これほど喜ばしいことはない。私はエリカと喜びを分かち合おうとしたが、すっかり舞い上がっている私に対し、エリカは複雑な様子で薬瓶を見つめていた。
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