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二章
頼みごと
しおりを挟む「ボク、アウレリア様と新教を潰したいんや。そやさかい、君らにも協力してほしいねん」
まるでピクニックに行くみたいなノリで宣うジーク枢機卿に、エリカも私も完全に固まってしまった。
「あれ? なんでそないに驚いてんねん」
本当に分かっていない様子のジーク枢機卿に、私は苦笑しそうになるのを必死で抑えながら、
「先程ジーク枢機卿はアウレリア様と協力関係にあるとおっしゃられていたものですから……」
記憶違いでなければ、対立する気はないとも言っていたはずだ。それなのに、あんな爽やかな顔で物騒なことを言われたら、誰でも驚くと思う。
「あんなん建前に決まってるやん」
ジーク枢機卿は何がツボだったのか、ケラケラと心底おかしそうに笑って手を振った。
「ボク、根本的な解決がしたいって言うたやん。
あの煤をなくすためにも神様に戻ってきてもらわなあかんのに、新しい宗教広められちゃ困るんや。そんなん、今の神様を追い出すようなもんやさかい。さすがにそら見過ごされへん」
とんでもない発言の数々に、てっきりヤバい人なのかと思っていたが、枢機卿として真剣にこの事態を憂えているらしい。
「お言葉ですが、アウレリア様にも何かお考えがあるのではないでしょうか。この霊薬を用意されたのはアウレリア様ですし……」
恐る恐る口を挟んだエリカに、ジーク枢機卿はまるで痛ましいものを見るように目を伏せた。
「そこがあの子のこわい所やな。これだけ話しても、信じ続けてる子が多いねん。あの子がこの国のためにしてきたこと考えたら、疑われへん気持ちも分かるけど……」
悩ましげにため息をつくジーク枢機卿に、責められているわけではないはずなのに、ひどく落ち着かない気分にさせられた。
「ボクに言わしたら、みんなの信頼を得るために色々やってるとしか思われへんねん。この霊薬配るってのも、えげつないわぁ。明らかに点数稼ぎするためやん。
これで煤が治ったら、アウレリア様のおかげやさかい。ほんで、これも私の信じる神の力です、とでも言うたら、信者が増えてがっぽりや。そもそも、こんな事態になったのはなんでや思う?」
急に水を向けられて、私達は顔を見合わせた。
「世界を管理なさっている神様が、何かしらの理由で管理できなくなったから……でしたよね?」
私の言葉に、ジーク枢機卿は大げさなくらいに頷いた。
「せやねん。今までは問題なかったのに、あの子がけったいなことやり出してから煤が表れ出してん。今までボクらのために住みやすい世界を作ってくれとったのに、急に手の平返されたら、なんぼ優しい神様でもヘソ曲げるに決まってんで」
当然ではあるが、ジーク枢機卿は煤が表れた原因は、アウレリア様が新教を興したせいだと考えているらしい。
それが正しいのか私には判断ができないが、後半に至っては殆ど当たっているから末恐ろしい。実際にはへそを曲げているのではなく、戦々恐々としているらしいが。
「ですが、それこそ私達のような一介の修道女に何か出来るとも思えません。もちろん、日々のお勤めにはより一層励むつもりではありますが……」
お手本のようなエリカの言葉に、ジーク枢機卿は先程までの拗ねた様子から一転して、それは嬉しそうに顔を輝かせた。ここまでの流れで、この人が楽しそうにする時は良くないことが起きる気がしてならない。
「そんな卑下せんでええねん。ボク、出来へんことやれとは言えへんし。こら、エリカちゃん達でないと出来へんことなんや」
私達じゃないと出来ないこと――。
嫌な予感しかしないが、心の準備が整うのを待ってくれるはずもなく、ジーク枢機卿は満面の笑みと共にとんでもないことを言ってのけた。
「どっちか片方、アウレリア様の侍女になって情報流してくれへん?」
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