異世界言ってみよう

サラニネル

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キノコ狩りの悲(喜)劇

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暗闇の森で迷うのは避けたいので、夕陽が沈むかなり前には結界の家に帰宅した。
とりあえずグリーンスライムを倒した後も湖の周りを探り、その日は薬草30本、毒消15本、ツノウサギ4匹、スライム5匹、グリーンスライム1匹、オオトカゲ1匹という成果だった。
少し休憩すると街に行きエーリカの所へ向かうことにした。

いつも通り、エーリカの客間で色々なものを眺めていると、見慣れないキノコがあるのを見たところでエーリカがあくびをしながら、やってきた。
「今日はこんだけ取れたぜ!」ツッコは今日の成果の薬草と毒消草を机に出し機嫌良さげに笑った。
「西の森での採集は順調ってとこね。じゃあ、以前言ってたキノコの話をするわ」エーリカは薬草類を確認すると、さっき見たキノコを机の上においた。

「キノコは同じようなものが多いから、見分けがつきにくいんだけど、この8種類ならあなた達でもわかるはずよ。そのうち5種類のキノコなら買い取るわ。残りは食用だから、時々なら買い取ってもいいけど、まあ自分たちで食べたら美味しいと思うわ。それ以外は触ったりしただけでも危ないものもあるから絶対に触らないでね」エーリカは3人の顔を見ながら続ける。

「そういや細長い三角錐みたいな赤いキノコみたけど、あれは毒キノコなのか」ツッコは以前見たキノコを聞いてみた。
「あ~それは、猛毒ね。触ったら危なかったわね。だから知らないキノコは触らないように言ったでしょ」エーリカは当然という顔で言った。
「ボッケ!てっめえ、やっぱり俺が悲惨になるとこだったじゃねえか!」ツッコはボッケを睨んだ。
「ああ、ええっと!エーリカさん、これどれが一番買取金額高いんですか?」しかしボッケはツッコの怒声を無理やり無視して話題を変えるとツッコも気になったのか不機嫌ながらも黙ることとなった。

「そうねえ...」エーリカの専門的な話が続き、キノコは3つのグループに分けられた。4種類は麻痺、睡眠、石化、混乱などの異常を治す薬。1種類は睡眠薬となるもの。残りの3種類は食用だった。
そして買取額は10本あたり銅貨で麻痺は20枚、睡眠は10枚、石化は90枚、混乱は40枚、睡眠薬は30枚、残りの食用は全て10枚だった。さらに採集の難しさは値段の高さで決まり、あまり生えていない上に時期もばらばらで探すのは、骨が折れるとのことだった。そのせいで、一部は取れない時期のものなのか干からびていた。
「あと植物の根っこみたいなとこは取ってこなくていいから、ちぎるか、ナイフで切ってとってきてね、次生えてこなくなったら、あなた達も嫌でしょ?」最後にエーリカはしっかり念押しをするとサンプルに一つづつキノコをくれた。

「これからは、キノコ鍋も食べれるようになりそうだね。それに、もっと生活も楽になるかもね」ボッケは嬉しそうだ。
「そうだな、西の森は俺たちの生活を、やっと安定させてくれるのかも知れねえな」ツッコも感慨深い。
「それって取らぬ狸の皮算用とかいうんじゃないの?あとそれ食べたらダメだからね」アマリの言葉にため息をつく2人だった。
そんなことを言いながら、ギルドで換金してから結界の家に帰ることになった。

全員で夕食を取ったあと、キノコを眺めながら話し合いが行われた。
「なんか、あれだけキノコの話聞いてたら、食べたくなってきちゃったよ!明日は、きのこ狩りだね」ボッケはしいたけっぽいキノコを見ながらつぶやいた。
「まあ、お粥の味もよくなりそうだしな、楽しみだな」ツッコも白色のマッシュルームのようなキノコを見ながらつぶやいた。
「とりあえず、紙に特徴と絵を書いとくね。スマホあれば楽なのにな...」アマリはペンで紙に簡単な説明と絵を書き出した。ドゥエンデは、お手玉の椅子にまたがって眠そうに頭を揺らしていた。3人は顔を見合わせ苦笑し、夕食でお腹も膨れていたこともあり、ほどなく眠りについた。

翌日も雲ひとつない快晴で気分よく、きのこ狩り優先の採集を始めることとなった。
結界を出て森に入ると、沈み込む土の柔らかさと、独特の匂いを感じ警戒しつつ探索を始める。前日エーリカにキノコは木や、倒木や切り株などに生えやすいと聞いていたので、重点的に探した。

「ねえこれ、食用のキノコじゃないかな」
ボッケは朽木に生えていたキノコを指さした。
「待てよ、このサンプルと比べて...同じだな」
ツッコも確認してキノコを採取した。
「同じとこに、結構生えてるね」アマリも見ると8本ぐらい生えていた。

さらに調べ回り、ツッコが倒木を裏返すと薬になるキノコを1本だけ発見した。
「なんだぁ、さっきの食用と違って、こいつらは1本ずつかよ」
ツッコは見つけた喜びから一気に嫌そうな顔になった。
「確か希少だから買取も高いって言ってたよ。ツッコの運のなさも希少だし、ある意味、運命の出会いだね」ボッケはしみじみいうと背後の殺気を感じ逃げ出した。
「お兄ちゃんたち、真面目にって言ったでしょ!」「マジメ イッタデショ」冷たい目で怒るアマリと楽しそうなドゥエンデの声に、おとなしくなる2人だった。

「アマリが僕たち以外でも、この声で話してくれたらなあ」ボッケは笑顔でツッコに耳打ちした。
「お前のバカさは置いといて。まあ俺にも言えるようになったし、成長してるよ」ツッコもボッケに耳打ちして笑顔になった。
「もう!まだ、何か言ってるの!」アマリの迫力にビビる2人であった。アマリからすれば、ふざけて毎回走り出す2人に呆れていたのだが。

その後も、キノコを優先的に探した結果この日の結果は睡眠状態を治すキノコ18本、睡眠薬になるキノコ17本、食用キノコ28本、薬草31本、毒消し草16本、ツノウサギ1匹、オオトカゲ3匹で報酬は銅貨374枚だった。
結局、探した場所か時期的に問題があったようで食用以外のキノコは2種類しか取ることができなかった。
なお食用キノコ10本はエーリカが「私、キノコ好きだから時々食べたくなるのよ」と言って買ってくれた。
「あと、キノコは干して食べると、保存もきくし美味しくなるからおすすめよ」と普段より前のめりで話していた。

「エーリカさんが言ってたから、キノコ鍋はやめるか?」ツッコが言うと。
「それは今度の時でいいよ、今日絶対食べようよ、もういつもの塩味だけは飽きたよ」ボッケは即座に反論した。
「私もすぐ食べたいよ。干すのは、いつか多く取れた時でいいと思う」アマリも両手を握って決意は硬そうだ。兄妹揃って食い意地が張っていた。
「そうだな、俺も同意見だ。じゃあやるか!キノコパーティー!」ツッコの号令で調理が始まった。結果的にキノコの串焼きに塩をつけたものとお粥にキノコを入れただけという適当な料理だが、3人にとってはご馳走だった。

「「「いただきます!」」」「イタ ダキマス」
全員言うや否や一心不乱に食べ出した。
「これ、うめえぞ、お粥もいい味出てるじゃねえか」
ツッコは口にかっこみながら言った。
「この串焼きも塩だけでも、ものすごいいい味だし、食感も最高だよ」
ボッケは最初は目を瞑り味を噛み締めたが、そこからは早かった。
「これから絶対キノコは必要だよ、これ本当に美味しいよぉ」
アマリも最初は美味しさに感動していたが、食べるのは止まらないようだ。
ドゥエンデは串焼きのキノコを口いっぱいにかぶりつき、夢中で食べ進んでいた。

瞬く間に全員が全てを空にしてしまった。
「キノコ優先でとると、儲けがあんまねえが...これはキノコじゃねえ!希望だったんだな」腹の膨れたツッコはいい顔をして言った。
「僕たちはキノコをとりにきたんだよ、西の森に!これが運命なんだね」
ボッケも乗っかった。2人はどこか遠くを見ていた。
「お兄ちゃん達がさらに、バカになるぐらい美味しいのもわかるよ」
アマリはにっこり笑うと。2人は行き先を失い途方に暮れ、ドゥエンデは、お手玉の椅子抱きしめるように寝息を立てていた。

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