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旅の始まり
その片足は滑っただけ
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「ぐはっ、ゲホゲホ!」
内臓がよじれる感覚でまた戻されたことがわかる。目を開けると心配そうなエイデンが私を見下ろしていた。
「キモうさ、大丈夫?リアムが無茶させるから……。」
「うん、でもすごいよね!吹っ飛んだ腕が戻ってきてくっつくんだから!」
「リアムの魔法じゃなかったの?」
「いくら治癒が得意だって、離れちゃったものをくっつけるのは無理だよ。」
「おい、うさ公、お前、便利じゃないか!」
ライリーが二カッと笑って頭をぐしゃぐしゃに撫でるのにイラっと来る。便利で済む問題か!
「……あのさ。」
「「「ん?」」」
「言っておくけど痛いから。普通に痛いから。すげー痛いから。」
「え、痛くないって言ってなかったか?でもすぐ治るんだろ?」
「治ってもすっげー痛いから。あの時は純粋なぬいぐるみだったけど今は生ウザギボディだから。あと……。」
「あと?」
「お腹空いた。」
「「「えっ?」」」
「お腹が空いたの!」
「あ、はい。何か用意します……。」
ΘΘΘ
なにこれ、美味しい。
ガツガツと食べる私をテーブル越しに三人が見ている。テーブルといっても何かの木の箱を裏がしただけの上にリアムが持ってきた果物やらスープやらを置いてくれたのだ。因みに私の食事風景をリアムは遠い眼をし、エイデンはがっつき気味でライリーは眉に皺をよせて見ていた。
「おい、うさ公、もうちょっと何とかなんないのかよ。」
「?なにが?」
「お前の食べてる姿、ホラーだ、ホラー。その口裂けてんのか?開けると半端ねーほど怖えよ。唾液が引いてるのも怖い。」
「そこがいいんじゃない。ウサギなのに前歯の他は尖った牙なんだよね?僕のスイートキモうさ。」
「うさちゃんの食事は外じゃできないね。気絶ものだよ。」
「この口、食べにくいの。前歯は異常に大きいのが出てるのに他の歯は尖ってるし、噛み切るのが顔全体動かさないと無理なんだもん。」
「うはっ。コエッ。」
確かにスープも口の端から幾分か漏れてしまう。しかしホラーって言われようが仕方ない。私のせいじゃない。
「……まあ今日は一番の功労者であったわけだし。いっぱい食べてくれたらいいんだけど。ああ、これ見た後うさちゃんと同じ部屋で寝れる気がしない。うなされそう。」
失礼なことを言うリアム。
「キモうさ、僕のところはダメ?服も着て寝るし、何もしないから。」
「エイデン、私は男の何もしないって言葉は信じないことにしてるの。」
「ぶはっ。そりゃそうだ!不気味なうさ公が不気味声で言うなって感じだけど正論だ。仕方ない。俺の部屋で預かるわ。食べ終わったら俺と一緒にこい。」
はあ。今晩はライリーの部屋か。横目で見るとライリーは用意してくれていたのかシーツを敷いた籠を持っていた。あれ?なんだ、気が利くじゃない。
「お腹いっぱい。ご馳走様。」
簡単にご馳走様の神の祈りをする。胸に手を重ねるのがそうなのだが別にあの神様に感謝しているわけではない。ただの習慣だ。さっそくライリーの部屋に入って籠の中にダイブしてみるとなかなかに居心地が良かった。
「気に入ったか?」
「うん。有難う。」
ライリーを少し見直してから籠の中のシーツを自分の良いように整えた。
「トイレ行ってから寝る。トイレ何処?」
「え、トイレ?うさ公は何処でもトイレか?出来れば外の草の陰にしてくれ。」
「何言ってんのよ、普通にトイレで出来るわ!」
「あー、良かった。そこの扉がトイレだぜ?嫌だけど体持っててやろうか?」
「大きなお世話よ!一人で出来る!」
変態め、とライリーを睨みながらトイレに入って用を足した。
……足したんだけど。
何とか足せたんだけど…。
滑って片足を便器の中に落としてしまった。
屈辱に震えながらもライリーを呼んで抱えてもらい、シャワーで足を洗ってもらったのは記憶から消し去ってしまいたい出来事だった。
内臓がよじれる感覚でまた戻されたことがわかる。目を開けると心配そうなエイデンが私を見下ろしていた。
「キモうさ、大丈夫?リアムが無茶させるから……。」
「うん、でもすごいよね!吹っ飛んだ腕が戻ってきてくっつくんだから!」
「リアムの魔法じゃなかったの?」
「いくら治癒が得意だって、離れちゃったものをくっつけるのは無理だよ。」
「おい、うさ公、お前、便利じゃないか!」
ライリーが二カッと笑って頭をぐしゃぐしゃに撫でるのにイラっと来る。便利で済む問題か!
「……あのさ。」
「「「ん?」」」
「言っておくけど痛いから。普通に痛いから。すげー痛いから。」
「え、痛くないって言ってなかったか?でもすぐ治るんだろ?」
「治ってもすっげー痛いから。あの時は純粋なぬいぐるみだったけど今は生ウザギボディだから。あと……。」
「あと?」
「お腹空いた。」
「「「えっ?」」」
「お腹が空いたの!」
「あ、はい。何か用意します……。」
ΘΘΘ
なにこれ、美味しい。
ガツガツと食べる私をテーブル越しに三人が見ている。テーブルといっても何かの木の箱を裏がしただけの上にリアムが持ってきた果物やらスープやらを置いてくれたのだ。因みに私の食事風景をリアムは遠い眼をし、エイデンはがっつき気味でライリーは眉に皺をよせて見ていた。
「おい、うさ公、もうちょっと何とかなんないのかよ。」
「?なにが?」
「お前の食べてる姿、ホラーだ、ホラー。その口裂けてんのか?開けると半端ねーほど怖えよ。唾液が引いてるのも怖い。」
「そこがいいんじゃない。ウサギなのに前歯の他は尖った牙なんだよね?僕のスイートキモうさ。」
「うさちゃんの食事は外じゃできないね。気絶ものだよ。」
「この口、食べにくいの。前歯は異常に大きいのが出てるのに他の歯は尖ってるし、噛み切るのが顔全体動かさないと無理なんだもん。」
「うはっ。コエッ。」
確かにスープも口の端から幾分か漏れてしまう。しかしホラーって言われようが仕方ない。私のせいじゃない。
「……まあ今日は一番の功労者であったわけだし。いっぱい食べてくれたらいいんだけど。ああ、これ見た後うさちゃんと同じ部屋で寝れる気がしない。うなされそう。」
失礼なことを言うリアム。
「キモうさ、僕のところはダメ?服も着て寝るし、何もしないから。」
「エイデン、私は男の何もしないって言葉は信じないことにしてるの。」
「ぶはっ。そりゃそうだ!不気味なうさ公が不気味声で言うなって感じだけど正論だ。仕方ない。俺の部屋で預かるわ。食べ終わったら俺と一緒にこい。」
はあ。今晩はライリーの部屋か。横目で見るとライリーは用意してくれていたのかシーツを敷いた籠を持っていた。あれ?なんだ、気が利くじゃない。
「お腹いっぱい。ご馳走様。」
簡単にご馳走様の神の祈りをする。胸に手を重ねるのがそうなのだが別にあの神様に感謝しているわけではない。ただの習慣だ。さっそくライリーの部屋に入って籠の中にダイブしてみるとなかなかに居心地が良かった。
「気に入ったか?」
「うん。有難う。」
ライリーを少し見直してから籠の中のシーツを自分の良いように整えた。
「トイレ行ってから寝る。トイレ何処?」
「え、トイレ?うさ公は何処でもトイレか?出来れば外の草の陰にしてくれ。」
「何言ってんのよ、普通にトイレで出来るわ!」
「あー、良かった。そこの扉がトイレだぜ?嫌だけど体持っててやろうか?」
「大きなお世話よ!一人で出来る!」
変態め、とライリーを睨みながらトイレに入って用を足した。
……足したんだけど。
何とか足せたんだけど…。
滑って片足を便器の中に落としてしまった。
屈辱に震えながらもライリーを呼んで抱えてもらい、シャワーで足を洗ってもらったのは記憶から消し去ってしまいたい出来事だった。
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