上 下
15 / 212
旅の始まり

人魚と私

しおりを挟む
 精神的ダメージを大いに受けて身構えていた私だが、人魚たちの様子がおかしいことに気付いた。

 ーーなに?私を痴女だと警戒しているんじゃないの??

 しかし、よくよく見ると人魚たちだって女の子はおっぱい曝(さら)しっぱなしである。乳首ないからエロくないけど。なんとか乳首を伸びる水着でギリ隠している私の方が露出は少ない筈……。人魚の出方を伺っているとなんと一人の人魚が膝をついて私の手を取ってキスをしてきた。

 ーーえ、どういうこと?

 ポカンとする私に周りの人魚たちも我先にと私の手を取ってキスをしてくる。どうやら味見ではないようだし、何が起きているのだろう。そのうち驚くことに人魚たちが光る珠を私に取れと誘導してきた。

 ーーまあ、そういうなら遠慮しないし。

 あっさりと腕輪に二つ目の神器の欠片をはめる。一つ目の神器の欠片は神様に渡しているけど珠の形だけは残っているのだ。

 ーー任務完了なんだけど。

 うっとりと私の周りをまわる人魚たち。ひょっとしてと思って上に連れて行ってくれないかと指をさしてみた。それには人魚たちは曖昧に笑うばかりだ。次第に接触が大胆になってきて頬に触れたり腕を絡めたりしてきた。

 ーーもしかして。

 人魚は綺麗なものが好きだってリアムが言っていた。私は人魚たちの御眼鏡にかなったのではないだろうか。しかもこの美少女ボディは魅了付きだったようだし。このままでは地上に帰れる気がしない。一か八かと私はにっこり笑って一人の人魚の手を取ってキスをして上に指さした。

 効果はテキメンだった。

 彼女は喜びのあまり私の周りをぐるぐる回りながら私を上へと誘導する。羨まし気な他の人魚にも軽くキスを贈ると我も我もと皆が手にキスを求めてぐるぐるまわりを回って私を上へと誘導してくれた。

 やっとのことで地上に着くと人魚たちは陸に上がった私を名残惜し気に見ていた。

「はあ、はあ。また、今度ね。この姿に戻ったら遊びに来てあげる。」

 四つん這いになって湖面を見つめると悲しそうな眼……。

「--わかった。じゃあ、お別れとお礼のキスをほっぺにしてあげる。」

 そういうと人魚には伝わったみたいで順番に頬を出して人魚たちがキスを強請った。

「なんだか、可愛いな。」

 手を振ると人魚たちも寂しそうにしていたが手を振ってくれた。彼らと別れてライリーたちの場所を目指す。

「体戻ってからじゃないとな。」

 濡れた髪を絞りながら息を整えて歩いていると草むらからガサゴソと音がした。

「ぎゃーーーー!!」

 思わず叫ぶと熊が!!

 じゃない、熊のように見えたライリーが!!

「うおっ!!エロい美女……ぐがぐぁ!!」

 ーーライリーが言い終わるまでに傍に有った丸太でライリーを思いっきり殴った。

 ーー私は悪くない。


 ΘΘΘ



「珠を取ったときに紐がブチッと切れたんだよ!」

「ごめんねぇ、キモうさ。紐が繋がってないと幻影魔法かけれないから。あと、強化魔法って肉体にしか効かないんだった。それもこれもライリーの持ってきた紐のせいだから!」

 謝るエイデンとはライリーを殴った後に体が戻ってすぐに合流できた。しかし、ごめんねぇで、済むか!

「まあ、うさちゃんが無事に地上に戻れてよかったよ。うさちゃんは出来る子!なんだか人魚の動きが大人しくて拍子抜けだったけど……珠を取られて怒り狂うかと思ってたのに。」

 ……そうそう、私の活躍のお陰だからな!言わないけど!口が裂けても言わないけど!

「まあ、いいじゃない。珠さえ手に入れたら僕たちには関係ないし。」

「で、ライリーはどうして鼻血吹いて伸びてるの?」

「キモうさを探しに湖面を見ながらウロウロしていた筈なんだけど……あ、目が覚めた。」

「ううっ……。」

「ライリー、何かあったのか?」

「なんか、エロい美女……いや、美少女だったかもしれんーーに丸太で急に殴られた……。」

「はあ?そんな人いたの??」

 リアムの声にエイデンと素知らぬ顔で首を振った。

「木にでもぶつかって夢でも見たんじゃない?」

「いや、あのはち切れんエロさは本物だった!信じられんくらいの超ド級の美少女が想像できないようなドスケベな恰好してたんだぞ!特にあのむき出しのマ〇筋は本物だ!」

「「「……。」」」

「すっげぇんだぞ!マシュマロみたいなおっぱい乳首だけ紐で隠してよ!んで、食い込み半端ねぇ下半身のマ〇筋のエロい事ったら!」

「そんな痴女が森を歩いているわけないでしょ?ライリー……頭大丈夫?」

 エイデンの声にリアムと頷きながら

 ライリー、死ね。

 ついでにエイデンも死ね。

 と思った私は悪くない。
しおりを挟む

処理中です...