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砂漠の国

マスクドウサギ参上!

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 さて、ギルドでステータスを見て楽しんだ(主に私のカードでだけどね!)私たちはトンガを北上して砂漠に向かう。砂漠なんて行ったことないし、砂ばっかりとしか想像つかない。トンガの国境はすでに超えたけれど、入国の審査をするような場所もない。砂漠は在住できるような環境ではないようだ。一応アサジーニという国の管轄であるようだがそれもオアシスがある街まで無法地帯のようだった。そうすると色々な事情の人が集まってきて集団を作るらしい。

「で、たぶん、どこかの賊かと思うんだよねぇ。珠を持ってるのは。」

「ふーん。」

「このあたりで野営でもしたら襲ってくるかな?」

「襲ってくるかもしれないけどお目当ての賊とは限らないよ。いちいち確かめていたらキリがないしね。取り合えずはオアシスを目指す。情報収集が先。エイデンの鳩や蝙蝠も砂漠は来れないでしょ?地道に聞き込みするよ?」

「おい、うさ公はどうすんだ?留守番ばっかじゃかわいそうだろ。」

「ふっ、ふっ、ふ。ありがと、ライリー。私の心配はいらない。じゃーん!!」

 私は三人に見せびらかすように胸を張った。

「「「おお!!」」」

「いいよ!怖さが半減してるよ!」

「うまいこと顔が隠せてんじゃないか!」

 トンガの市場で覆面を見つけてエイデンに買ってもらったのだ。これなら裂けた口がほとんど見えないからそこまで怖くないはず!

「でもさ、うさちゃんの存在自体、怪しくない?見た目がマシになったとしてうさちゃんて2歳児の大きさの黒兎だよ?一般的に受け入れられるの?獣人だって獣の姿か人の姿で耳としっぽくらいでしょ?こんな中途半端なの、普通に街を歩いていたら魔獣だよ。」

「「「……。」」」

 ーーだよねー。

 ライリーが慰めるように肩をたたいてきて泣きそうになった。


 ΘΘΘ

 結局私は部屋で留守番だ。ちぇっ。ライリーが「美味いもん買ってきてやるからな!」と言ったのを楽しみにするしかない。

 元の体に戻してもらう?ああ、でもなぁ。アーロン、絶対キスしてっていうもん。アーロン経由しないで、もうちょっと簡単に入れ替われるように神様に相談しようかな。

 リアムに貸してもらった裁縫道具でチクチクと服をキモうさサイズに直しながら私は暇を持て余していた。

 ぐすっ。

 ううっ。

 針を置いてうとうととし始めたころ、外から子供のすすり泣く声が聞こえた。泣き終わるか少し待ったけど、なかなか泣き止まない。うさ耳は小さな音でも拾うので多分小さな堪えて泣いてる声だ。私は声が聞こえたほうの窓から下を見下ろした。

 あれ?

 8歳くらいの子供が女の人の腹に手を当てながら泣いてる。あの女の人……血が流れてる!!

 大変だ!そのまま飛び出そうとしてしばし考える……そうだ!私には覆面があったじゃないか!

 窓からヒラリと飛び降りる。痛いだろうけど、不死身だからね。

 あー。足がビリビリするぅ。

 空から現れて華麗に(?)着地した覆面ウサギにびっくりした子供が私を見て固まっていた。

「これ、お母さん?」

「ち、ちがいます…けど。あ、あなたは……神の御使い様?た、助けてください!サチャが死んでしまう!」

 ーー助けて!レダが死んじゃう!

 昔叫んだ自分の声が重なる。倒れている女の人はお腹を押さえている。小さな手はその上で流れる血を抑えようとしていたようだ。

「刺されたの?表通りまで運んで助けを求めようか。」

「ダメ!ここまで逃げてきたんです。悪い人がまだ近くにいるかも。」

 どうしようか。私にはなんの力もないし…。

 すると上からの声を拾った。「ただいまー。」の声はリアムだ!ナイスタイミング!!

「リアム!」

 上を向いて何度か叫ぶとしばらくしてリアムが窓から顔を出した。

「下!下にいるの!リアム、降りてきて!」

「うさちゃん?何してるの?え?ちょっと待ってて。」

 降りてきたリアムは女の人をみて渋い顔をした。

「リアム、この人、お腹を刺されているの。治してあげて。」

「うさちゃんの頼みなら治してはあげるけど…面倒事はゴメンだよ。」

 そうは言ったがリアムは治癒を施してくれた。リアムがブツブツと呟いて手のひらをかざすとホワリと女の人のお腹が光った。

「知り合いでも無いよね?さ、傷は治したし、うさちゃん、帰るよ。」

「うん……。」

 女の人は顔色は悪いものの、出血は止まり、傷も塞がった。

「すごい…治癒の力なんて初めてみました…しかも治ってしまうなんて…。」

 子供はリアムを信じられないものを見るように見ていたが、次の瞬間リアムに土下座した。

「助けてください!SSランクの方とお見受けしました。報酬は出来るだけ貴方の要求を飲みます!」

「ちょっと…例えランクがそうだったとして、今はやる事があるから依頼を受ける気は無いよ。」

「もう、頼れる人がいません!せめて、サチャが目が覚めるまで匿って貰えませんか!?」

 子供がリアムを見て、私を見る。

「悪いけど、これ以上は……。」

 リアムの断りの言葉を私は遮る。

「匿うだけね!」

「え?うさちゃん、ちょっと!」

「リアム、私のギフトは「幸運」だよ?きっとこの出会いは損にはならない。」

 確証なんてなかった。ただ、この子とあの時の私が少しだけ重なっただけだ。

「……。ライリーに運んで貰うよ。」

 渋々承知したリアムの声を聞きながら縋るような瞳がキラキラと輝き出すのに見とれた。

「ウサギ様……ありがとうございます。」

 後から来たライリーに女の人を運んで貰って、その後ろを子供と手を繋いで着いていった。

 ……様って、この姿で言われるとは思わなかった。
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