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占者の洞窟
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「あら。アーロン。お久しぶりね?」
美しい顔を少し引きつらせながらもヴィーテ神がそう答えて、私を握る手に力を込めた。
「--無駄ですよ?セイドンでは私を止めれません。焦って出てくると思ったんですよ。ゼス神がレナ神に「離婚」したいと言ったものですからね。」
「アーロン、見逃して?私はゼスの妻になる気はないもの。貴方だって大好きなお母さまを悲しませたくはないでしょう?」
「ええ。まあ。母は今怒りと涙に暮れていますよ。貴方を差し出せば母の気も収まるのではないですかね?」
「そんな!酷いわ!私、消滅したくないもの。それに、悪いことしてないわ。ゼスに目を付けられて逃げられる女神がいるとでも思うの!?」
「母の配下に入ればよかったでしょう?」
「嫌よ。管理されるなんて。」
「パオラを離しなさい。今更なんです?父と身勝手に地上に誕生させて放置していたくせに。」
「会いに来れなかっただけよ?パオラを愛してるもの。」
「--愛してくれるの?」
「そうよ?パオラ。ママは貴方を愛してるわ。」
ほわりと胸が暖かかくなる。愛してくれるの?ヴィーテ神をうっとりと見つめると冷めたアーロンの目と合った。
「はあ。それが貴方の手口ですよね?」
アーロンが私の額に人差し指をくっつけた。パチンと音がして鈍い痛みが額を走る。--途端にさっきまでのふわふわとした気持ちまでなくなってしまった。
あれ?
あんなにキラキラと輝いて素敵に見えていたヴィーテ神が落ち着いて見れる。
「娘に魅了をかけて従わせて、いったい何をするつもりだったのですか?」
「人聞きが悪いわ。魅了はかけようとしてかけているんじゃないもの。娘としてただ愛してるだけよ?まあ。貴方にしてほしいお願いがあったからちょっとパオラから口利きしてもらおうとは思っていたけれど。」
「口利き?」
「アーロンは私の事、好みじゃないでしょう?でもパオラは「妻」にしたいほど好きだって聞いたわ。」
「否定しません。」
「私は自由が欲しいの。だから……。パオラとアーロンの子供の後見人にしてほしいの。」
「「へ!?」」
「モーラに未来を見てもらったんだけど、アーロンとパオラの子は冥界の王になるみたいなのよね?いくらゼスやレナでも冥界の王の後見人には手が出せないでしょう?」
「シファンの花を開き、空白の座を埋める……。」
「そうそう!?パオラ、モーラの神殿で聞いたの?それ、貴方の事だからね?冥界の王が消滅して100年以上になるし、そろそろ誕生させて育てるべきよね?」
「待って?シファンの花って?」
「天界では神は母のーーレナ神の祝福を受けて産まれます。祝福された女神に着床した卵は天界の命の泉のシファンの花から誕生するんです。」
「お腹から生まれないんだ……。」
「アーロンがいいなら私と試してくれてもいいんだけど、アーロンは私じゃ駄目だったし……。モーラが見た未来はアーロンと私と縁のあるもの……パオラと交わってるって言うから。」
「え……。」
「母はパオラと私との結婚を反対してます。祝福されるわけないでしょう?子供なんて無理ですよ。」
「ちゃーんとアーロンが約束してくれるならこの指輪貸してあげるよ?」
「なっ!!どうしてあなたがそれを!!」
ヴィーテ神がひらひらと指に嵌めた指輪をアーロンに見せるとアーロンが青ざめた。
「パオラにも言ったけど、ゼスが無理やり私に持たせたんだからね?どうする?パオラは人間だもの。冥界の王の子育てはできないでしょ?私が後見人となって代わりに育てることが条件よ。あなたも冥界の王の父親になるならゼスから褒められても怒られることは無いわ。」
「しかし、それでは母が……。」
アーロンが考え込む。話が私をスルーしすぎなんだけど、結局どういう事?ゼス神とレナ神が夫婦で、ゼス神がヴィーテ神と浮気。(まあ、ここでわたしが生まれるわけだけど。)でもヴィーテ神は夫婦仲を壊す気は無くてゼス神から逃走中。嫉妬にもえるレナ神にゼス神が「別れてくれ」と火に油を注ぐ。ヴィーテ神はそんな二人から逃げるために冥界の王を誕生させようとしている。--それがまだ見ぬアーロンと私の子供ってこと??
「レナ神は息子にまで裏切られた気になるでしょうね。お気の毒かもしれないけれど、今までどれだけの女神が被害を被っていると思っているの?いい?ゼスが気まぐれに手を出してきた結果がこれだし、それを今まで止めれなかったレナ神にも問題があると思うわ!」
「それは……。」
「貴方が女性不信になっていたのもそのせいでしょう?だから、貴方はただ一人を愛することにこだわるのよ。」
「ヴィーテ!すまない!アーロン神が!!」
新たな男の声がしてアーロンが私をヴィーテ神から離して抱き寄せた。
「セイドン!私は大丈夫よ?貴方こそ酷いことされていない?」
真っ青な短い髪に真っ青な瞳をした浅黒い肌の美丈夫が焦った顔で現れた。これがセイドンという神様かな?男くさい感じ。彼は一目散にヴィーテ神のところにやってきて彼女を抱き上げた。
「もう、行かないとゼス神とレナ神にバレる。」
「ええ。セイドン。アーロン、考えておいて。悪い話ではないでしょう?パオラ、またね。」
私にウインクしたヴィーテ神はセイドン神の腕に抱かれたまま消えていった。
美しい顔を少し引きつらせながらもヴィーテ神がそう答えて、私を握る手に力を込めた。
「--無駄ですよ?セイドンでは私を止めれません。焦って出てくると思ったんですよ。ゼス神がレナ神に「離婚」したいと言ったものですからね。」
「アーロン、見逃して?私はゼスの妻になる気はないもの。貴方だって大好きなお母さまを悲しませたくはないでしょう?」
「ええ。まあ。母は今怒りと涙に暮れていますよ。貴方を差し出せば母の気も収まるのではないですかね?」
「そんな!酷いわ!私、消滅したくないもの。それに、悪いことしてないわ。ゼスに目を付けられて逃げられる女神がいるとでも思うの!?」
「母の配下に入ればよかったでしょう?」
「嫌よ。管理されるなんて。」
「パオラを離しなさい。今更なんです?父と身勝手に地上に誕生させて放置していたくせに。」
「会いに来れなかっただけよ?パオラを愛してるもの。」
「--愛してくれるの?」
「そうよ?パオラ。ママは貴方を愛してるわ。」
ほわりと胸が暖かかくなる。愛してくれるの?ヴィーテ神をうっとりと見つめると冷めたアーロンの目と合った。
「はあ。それが貴方の手口ですよね?」
アーロンが私の額に人差し指をくっつけた。パチンと音がして鈍い痛みが額を走る。--途端にさっきまでのふわふわとした気持ちまでなくなってしまった。
あれ?
あんなにキラキラと輝いて素敵に見えていたヴィーテ神が落ち着いて見れる。
「娘に魅了をかけて従わせて、いったい何をするつもりだったのですか?」
「人聞きが悪いわ。魅了はかけようとしてかけているんじゃないもの。娘としてただ愛してるだけよ?まあ。貴方にしてほしいお願いがあったからちょっとパオラから口利きしてもらおうとは思っていたけれど。」
「口利き?」
「アーロンは私の事、好みじゃないでしょう?でもパオラは「妻」にしたいほど好きだって聞いたわ。」
「否定しません。」
「私は自由が欲しいの。だから……。パオラとアーロンの子供の後見人にしてほしいの。」
「「へ!?」」
「モーラに未来を見てもらったんだけど、アーロンとパオラの子は冥界の王になるみたいなのよね?いくらゼスやレナでも冥界の王の後見人には手が出せないでしょう?」
「シファンの花を開き、空白の座を埋める……。」
「そうそう!?パオラ、モーラの神殿で聞いたの?それ、貴方の事だからね?冥界の王が消滅して100年以上になるし、そろそろ誕生させて育てるべきよね?」
「待って?シファンの花って?」
「天界では神は母のーーレナ神の祝福を受けて産まれます。祝福された女神に着床した卵は天界の命の泉のシファンの花から誕生するんです。」
「お腹から生まれないんだ……。」
「アーロンがいいなら私と試してくれてもいいんだけど、アーロンは私じゃ駄目だったし……。モーラが見た未来はアーロンと私と縁のあるもの……パオラと交わってるって言うから。」
「え……。」
「母はパオラと私との結婚を反対してます。祝福されるわけないでしょう?子供なんて無理ですよ。」
「ちゃーんとアーロンが約束してくれるならこの指輪貸してあげるよ?」
「なっ!!どうしてあなたがそれを!!」
ヴィーテ神がひらひらと指に嵌めた指輪をアーロンに見せるとアーロンが青ざめた。
「パオラにも言ったけど、ゼスが無理やり私に持たせたんだからね?どうする?パオラは人間だもの。冥界の王の子育てはできないでしょ?私が後見人となって代わりに育てることが条件よ。あなたも冥界の王の父親になるならゼスから褒められても怒られることは無いわ。」
「しかし、それでは母が……。」
アーロンが考え込む。話が私をスルーしすぎなんだけど、結局どういう事?ゼス神とレナ神が夫婦で、ゼス神がヴィーテ神と浮気。(まあ、ここでわたしが生まれるわけだけど。)でもヴィーテ神は夫婦仲を壊す気は無くてゼス神から逃走中。嫉妬にもえるレナ神にゼス神が「別れてくれ」と火に油を注ぐ。ヴィーテ神はそんな二人から逃げるために冥界の王を誕生させようとしている。--それがまだ見ぬアーロンと私の子供ってこと??
「レナ神は息子にまで裏切られた気になるでしょうね。お気の毒かもしれないけれど、今までどれだけの女神が被害を被っていると思っているの?いい?ゼスが気まぐれに手を出してきた結果がこれだし、それを今まで止めれなかったレナ神にも問題があると思うわ!」
「それは……。」
「貴方が女性不信になっていたのもそのせいでしょう?だから、貴方はただ一人を愛することにこだわるのよ。」
「ヴィーテ!すまない!アーロン神が!!」
新たな男の声がしてアーロンが私をヴィーテ神から離して抱き寄せた。
「セイドン!私は大丈夫よ?貴方こそ酷いことされていない?」
真っ青な短い髪に真っ青な瞳をした浅黒い肌の美丈夫が焦った顔で現れた。これがセイドンという神様かな?男くさい感じ。彼は一目散にヴィーテ神のところにやってきて彼女を抱き上げた。
「もう、行かないとゼス神とレナ神にバレる。」
「ええ。セイドン。アーロン、考えておいて。悪い話ではないでしょう?パオラ、またね。」
私にウインクしたヴィーテ神はセイドン神の腕に抱かれたまま消えていった。
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