そこに愛はあるか

竹輪

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本編

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 後から聞いた話だと、エルフというのは番がいないと精通しないのだそうだ。だから、一生中世的なままで終えるエルフもいるらしい。ロイはもちろんそのつもりだったらしい。

 ただ、後夫(?)に入ると夫婦の営みがなくとも精通でき、その後他の種族と交わることも出来るという。そうやって少しづつエルフも子孫を残そうと変化しているらしい。

 ロイは古代種と呼ばれる血が濃いエルフで、その為に愛情がないと欲情しないらしい。ロイはあくまで「唯一の番」にこだわっていたようだ。

 ハンターとして俺とパートナーを組んだ時ロイは俺と居ると不思議と落ち着くと思っていたそうだ。その時は「親友」の位置。それが、女になった俺を見た途端、「唯一の番」と感じたという。まあ、ワームの毒のおかげなんだろうと俺は推測する。勘違いにせよ、惚れてくれたことに感謝だ。そう言うとロイは口をとがらせて怒るのだが……。

「綺麗だ……私の奥さん。」

 惚気顔でそう言うロイはドレスに体を押し詰められた俺を穴が開くんじゃないかと思うくらい眺めてくる。

 今日は町総出の俺たちの結婚式だ。俺が人攫いをやっつけたことで益々、この町の人は俺とロイを称えるようになった。なんか、慕われていると思うとほんとむず痒い。

「ほんと、スウさん、綺麗!妖精みたい!」

「これ、最後にお花!!」

「ありがと、ミリー、エル。」

 そう言って二人の頬にキスを贈ろうとするとロイがそれを妨害してきた。

「どうしたの?ロイ……。」

「私はスウが女の子好きだったのを忘れてないですからね。」

「……。」

 どうやらロイは俺が男といるよりもずっと女の子と仲良くする方が気になるらしい。

「男の嫉妬は醜いですよ。」

 ミリーはそう言って頬を膨らした。可愛かったので頬を突こうと指を伸ばしたがロイに掴まれる。

「スウ、ダメです。今日は特に、私のものなんですから。」

 そう言ったロイが口紅が取れると怒られながら長ーい口付けを俺に施したのは後の町の笑い種だ。

 白い花が町中を舞う。生花や、紙でできた花を町の人一軒一軒で沢山用意してくれたらしい。祝いの花吹雪だ。花婿と花嫁は町中をお礼や挨拶に練り歩く習わしだ。これが多い花嫁は幸せになるという……ちょっとやりすぎだけどな。

 少し男っぽくなった美しいエルフが俺に熱い視線を送りながらエスコートしてくれる。ああ、この人が俺の愛する人なんだと実感して涙が出そうだ。

「スウ、私は幸せです。」

 何度もロイが俺の白い手袋の先にキスをする。

「俺の方が幸せだと思うよ。」

 そう言うとロイはとろけるほどの笑顔で今度は頬に、額に、首に、唇に……えーっと、だから、キスが長すぎんだよ!!はーなーせー!!と何度も道の往来で俺たちは停滞した。もう、人前でとか恥死するし!

「おめでとう」

「おめでとう!」

 笑われながら、そのたびに白い花が投げられる。俺はこの日を忘れない。

 ロイを、幸せにすると誓った日だからだ。

 ***

 こうして俺はロイと夫婦になった。

「もし、突然男に戻ったらどうする?」

 ロイに偶に質問してみる。ロイは平気な顔をして言う。

「そしたら、また二人でハンターに戻ってもいいですね……次何かあったら私が女性にしてもらいますよ。まあ、別に男同士でも、何になったとしてもスウが傍にいてくれたらそれでいいです。」

 それくらい、貴方を愛してますよ。

 耳元で囁くロイはそのまま俺の耳を食んだ。

 あれから、毒は愛情に変わり、毎夜その交わりは続いている。しばらくしてその交わりは控えられるのだが……

 俺とロイとの間になんと子が生まれ、真顔でブレアが第二夫にしてくれと俺に頼み込みに来てロイに伸されたり……

 生まれにくいとされた娘三人を儲けたときにエルフの里に招待されたり……

 そんな話はまあ、またこれから未来の話。



本編***完***

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