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April

プロローグ①

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『転入生が来るで!!!!!』


 桃色の花弁が風に舞い散り、新緑の季節が近付く4月の中旬。
 俺、藤咲ふじさき蒼葉あおばは気持ちのいい春風に包まれながら、部活動に勤しんでいた。

 より良い画質で撮るためにと背伸びをして買った愛用の一眼レフカメラ。
 高等部旧校舎の3階のベランダから、オレンジの夕陽に照らされ、放課後の学園の桜並木の真ん中に立つ2人に照準を合わせる。

 何も話さず、横に並んでゆっくりと桜の下を歩いている2人。
 今日こそきっと、2人にとっての記念日になるんだろうなぁ、なんて考えていたその時。
 突然、着信音が鳴り響いた。

 スマホのようなこの端末は、この私立天照てんしょう学園に通う全生徒に配布されている生徒手帳の代わりとなる端末で、【TSP】という。の略らしい。
 名前に関しては、多分そんなに深い意味は無い。だって、端末ならPじゃなくてTだし。

 このTSPは、教室や寮に入るIDカードの代わりや、広大な敷地を所有するこの天照学園のマップ、学園内のお店では財布代わりになり、所属する委員会や部活のグループチャットや電話までも出来る優れもの。ちなみに、親衛隊のような学園非公認の組織までは対応していない。

 他にもいろいろ機能はあるが、俺はこの学園に来てまだ1年しか経っていない外部生。なので、使いこなしきれていないのが現状。
 やっぱり使い慣れた自分のスマホやPCの方がラクで、そっちばっかり使うんだよなぁ。

 それはさておき、胸ポケットに入れているTSPを軽く取り出して、着信相手を確認する。その上で、通話を切った。俺は今忙しいんだ。
 1年間ずっと見守っていたCPが、この桜が散り切る前に桜の木の下で恋を成就させるさまをベストポジションで収められる。逃したら二度と見れない一瞬だ。だから邪魔をするな。

 しかも何でTSPにかけてきてるんだ。普通にプライベートのスマホにかけてくればいいのに……ってそうか。スマホ、今マナーモードでカバンの中だからか。
 TSPは身分証明書だから確実に手元に持ってるもんな。

 初めこそ無視を決め込んだが、胸ポケットに入れた端末は一向に止まる気配がない。
 音はうるさいし、しかも腕にほど近い場所でずっと震え続けるため、手元が定まらない。
 これじゃ写真が撮れない。くそ!


「なんだよ陽希はるき! 今いいところで──」


 痺れを切らし電話を取った瞬間、TSPの向こうにいる相手に怒鳴った。

 そして、冒頭に戻る。
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