腐男子な俺が全寮制男子校で女神様と呼ばれている件について

茅ヶ崎杏

文字の大きさ
4 / 94
April

プロローグ③

しおりを挟む
『あああ遂にこの時が来た……っ! 6年も待ったんや。おもろい展開にならな、承知せんでえ!!』


 陽希は既に臨戦態勢だ。電話越しに、カチャカチャと機械を触っている音が聞こえる。
 おそらく、あのどでかい正門に仕掛けるカメラや盗聴器などを用意しているんだろう。王道転入生と言えば、門をチート的な運動神経で飛び越えて、副会長イベに突入するのだから。

 腐に関してのこいつの行動力には、本当にいつも驚かされる。
 お迎えに行くのが、王道展開と同じ生徒会役員の腹黒副会長様であることも、すでに調査済みなんだろうな。

 その後も、陽希はブツブツと何か言いながら電話の向こうで用意をしていたので、やっと気持ちが落ち着いてきた俺も当初の活動を再開することにした。

 三脚に取り付けていたカメラを取り外し、手で構える。レンズ越しに、桜の木の下に佇む2人を見つけた。
 よかった、まだそんなに進んでいないみたいだ。

 頬を赤らめた受けの先輩が、攻めの爽やか先輩を見上げている。
 何それ最高なシチュエーション。桜の木を背にしているところがさらに最高。桜ドンですね、今しかできないやつですね、わかります。

 見つめ合う2人。そしてそのままゆっくりと唇が重なる。
 あぁ、なんて素晴らしい光景。先輩方が笑顔で何よりです。幸せそうなオーラが、遠く離れた校舎の屋上の俺にまで届いています。この半年、お2人をずっと見守っていた甲斐がありました、ありがとうございましたご馳走様です。

 照れ臭そうに手を繋いで、ゆっくりと寮に向かって歩いていく2人。
 見えなくなるまで思う存分撮影して、背中すら見えなくなった頃、ようやくカメラを下ろした。

 あぁ、よかった。最高に綺麗な恋愛だった。ありがとう先輩方、これで俺の筆も捗ります。お2人の恋の軌跡は、きちんと1冊の本にして残しますね。もちろんプライバシーは守ります。安心してください。
 なんて、そもそも俺がこんなふうに2人の恋路を見守っていたとは露ほども知らないであろう先輩方に、心の中で連絡をしておく。

 そう、俺は漫画研究部の部員だ。自分で執筆したBL本を校内で時々販売している。もちろん部活なので学園公認。グルチャはTSP経由だ。
 販売会は月1。売れるものは個人を特定できないもの、及びフィクションに限るけど。

 ちなみに、写真部員でもある。ただ、こんなにがっつり恋愛している写真はいろんな意味で売っちゃダメなので、今回は見送り。
 写真部として売れるのは、天照学園伝統のランキング──抱きたいランキング&抱かれたいランキング入賞メンバーの、セクシーショットやオフショット。そんなものはここでは撮れない。

 部活を掛け持ちしている活動的な俺だが、ワケあって、どちらの部活も〈藤咲蒼葉〉という生徒が在籍しているのを知っているのは、それぞれの部長のみだったりする。
 まぁ漫画研究部も写真部も、趣味の延長でバイト感覚でしている程度だ。部活自体に思い入れがあるわけではない。

 さて、用事も終わったし帰ろう。
 カメラを片付け出した時、繋げっぱなしだったTSPから、俺へ向けた声が発せられた。


『あ、そうや蒼葉』
「何だよ?」


 それは、この後の運命を変える、衝撃的な一言だった。


『そいつが来るん、蒼葉とおんなじ2-Aやってさ』
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

どうしてそうなるんだよ!!!

藤沢茉莉
BL
俺様な会長、腹黒な副会長、無口な書記、双子の庶務……不本意ながら生徒会役員に選ばれてしまった見た目不良なお人好し主人公が、個性的なメンバーに囲まれながら頑張る話。 多忙のため少々お休み中。 誤字脱字ほか、気になる箇所があれば随時修正していきます。

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...