19 / 35
4-3 親子喧嘩は最大の見世物
しおりを挟む
久々にエルフの集落を訪れる。例の裏道からだったので、普通に向かうよりも早く辿り着くことができた。
現在、この集落で生活している者は減っており、砦で働いている者が増えている。砦のエルフたちは、休みになると集落へ戻り、家族で団欒を過ごしているらしい。
後は、この辺りの探索を行っているエルフたちや、混成部隊も、エルフの集落を間借りさせてもらっていたり、森の中へ山小屋を作って仮設住宅にしているようだ。
変化を肌で感じていると、ミスティがニッコリ笑った。
「長たちが待ってるで!」
「うんうん」
ミスティに腕を引かれると、自然と笑みが浮かんでしまう。俺が普通の家庭に産まれていたら、弟や妹とこんな関係を築けていたのかもしれない。そんな妄想が浮かび上がる。
しかし、そんなものはないのだ。現実は非常である。
「……なんでニコニコしたり、落ち込んだりしてるのよ」
「全部落ち着いて、誰かが王位に就いたら、普通の家庭を築きたいな、って思っていただけだよ。その時には、俺も王位を失っているからね」
もちろん最低条件に、殺されないことや死なないことはあるが、そこまで無理な願いでは無いように思える。たぶん、心強い仲間を得たからだろう。
だが俺のそんな大きい夢に、スカーレットは肩を竦めた。
「どうせなら、もっと大きい理想を抱きなさいよ。王族全員の弱味を握って、全員手を出せないような影の支配者になってやる! みたいなやつをね」
バンバンと肩を叩かれ、スケールの違いに笑いが出る。
「いや本当、スカーレットの奔放さには憧れるよ。俺もそのくらい大きなことを言えるようになりたいな」
「褒めてる? バカにしてる?」
「もちろん褒めてるよ」
「ならいいわ!」
一人で生きていけそうなくらい強くて、誰が相手でも自分の意思を曲げない。俺には無い部分を持ち合わせているからこそ、スカーレットに憧れるんだろうなぁと、冷静に分析をする。……ただ、もう少し謙虚なほうが生きやすそうだなと素直に思った。
なぜかミスティに腕を抓られ、悲鳴を上げつつ進むこと数分。扉に赤い布を下げている家の中に、長たちはいた。
「どうも、ご無沙汰してます」
「久しぶりやな! 元気そうでなによりや! ……でもな、わしらの雇い主になったのに、腰が低い商人みたいな登場はやめてもらえんか?」
「ふーははははは! 久しぶりだな長たち! セス=カルトフェルンが――」
「やっぱりさっきのでええわ」
「あ、はい」
期待に応えたつもりだったが、どうやら違ったらしい。
そのまま手前に座ろうとしたら、上座に座れや! と怒られる。なんでエルフが上座にうるさいんだよ……と思いつつ、言われた通りの場所に座った。
俺が座ったのを確認し、長が口を開く。
「で、呪いについてはよく分かってへん。ミスティがちょいちょい体を調べてるやろ? その報告を元に話し合っているんやが、なんせ文献とかがあらへんからな。とりあえず、もうちょっと調べてみるわ」
「ミスティが?」
「子供なのに? みたいな顔をしとるが、ミスティは魔法に関しては天才的でな。契約している精霊も二等級と、わしらの中でも最上位に入ってん」
「へぇー。ミスティはすごいんだな」
「えへへ。うち結構やるんやで!」
司令室をうろちょろしたり、エルペルトを手伝ってお茶を注いだり。そんなイメージしか無かったが、ちゃんと理由があって俺の傍へ寄越されていたんだなぁ。
小さな天才児へ素直に感心していたのだが、よく考えるとここ最近は天才ばかりに出会っている気がする。エルペルトとか、スカーレットとか、ミスティとか、ティグリス殿下とか。もしかしたら、他にも隠れた天才がいるかもしれない。
今苦労しておけば、将来は安泰だな。優秀な部下たちに全て任せ、働かない生活を送れそうだと、満面の笑みを浮かべる。小声でエルペルトが言った。
「セス殿下、顔が緩んでおりますよ」
「おっと、失礼。……それで、精霊と契約して呪いをなんたらって聞いてきたんですが」
「あぁ、その通りやねん。ただ、精霊に呪いを解いてもらうっちゅーわけじゃないで? 呪いが魔法なら可能かもしれんが、それすら分からんからな。とりあえずは、危機的な状況にあったとしても、魔法が使えたら身を守れるかもしれない、ってことや」
「なるほどなるほど」
確かに、手は多いほうがいい。それに、魔法ってものに憧れが無いと言えば嘘になるだろう。男の子だからね。
契約について話していると、スカーレットが勢いよく手を上げた。
「あたしも契約したいわ! それで魔法剣士になるの!」
別に、魔法剣士が珍しいというわけではない。エルフの剣士なんて、ほとんどは魔法剣士だ。
適性があるかは分からないが、別に構わないだろうと思っていたのだが、珍しくエルペルトが反対の意を表明した。
「……まず、剣の腕を上げるべきではないですか?」
「そうね、父上の言うことに間違いはないわ。でも、それは魔法を使えてはいけない理由にはならないでしょ?」
「剣の修業が疎かになると私は思います。なので、まだスカーレットに魔法は必要ありません」
「それを決めるのはあたしよ」
「「……」」
あれ? なんだろう、空気が重い? もしかして、親子喧嘩が勃発しかけている? 大丈夫?
気付けば二人は向かい合っており、その間に俺が立っている。他のやつらはそっと離れていた。
視線を左右に動かし、手で小さく冷静にと示しておく。もちろん効果は無い。
「父上は考えが古いのよ。剣も、魔法も、なんだって使えたほうがいいに決まっているわ。選択肢が増えるということは、強くなったということよ。父上もそう教えたじゃない」
「私が教えたのは、強くなれば選択肢が増える、です」
「どっちも同じよ」
「いいえ、違います。ただ選択肢を増やすだけであれば、悪い結果を増やす可能性が高いのです」
我が護衛の二人が、我が陣営で最強の二人が、今目の前で決裂しようとしている。
ここは毅然とした態度で止めねばと、震えながら声を発した。
「ふ、二人とも冷静に――」
「表に出なさい、スカーレット」
「父上に恩返しをする日が来たようね。師匠越えってやつを見せてやるわ」
二人はバチバチに睨み合い、そのまま外へ出て行く。慌てて追いかけたが、すでに斬り合いは始まっていた。マジ勘弁してください。
しかも、それだけではない。
エルフたちが集まり、そのうちの一人が上級魔法を使用して地面をへこませ、まるで決戦場のようなスペースを作った。完全に上級魔法の無駄撃ちである。
「串肉~串肉いらんか~」
「ワインあるで、ワイン! 砦でもらったワインあるでー!」
「現在、8:2! エルペルト8! スカーレット2や! はったはったー!」
エルフ逞し過ぎない? と思っていたら、混成部隊のやつらも混じっていた。どうやら人もエルフも、こういったことは大好きらしい。
いつの間にか用意された特等席へ座り、二人の決闘を観覧しながら呟く。
「……俺の契約どうなったの?」
誰も答えてくれるはずがなく、額に手を当て深く息を吐いた。
勝負の結果については、スカーレットの十戦十敗。さらに泣きの一回を五回やったことで、十五戦十五敗で終わった。
現在、この集落で生活している者は減っており、砦で働いている者が増えている。砦のエルフたちは、休みになると集落へ戻り、家族で団欒を過ごしているらしい。
後は、この辺りの探索を行っているエルフたちや、混成部隊も、エルフの集落を間借りさせてもらっていたり、森の中へ山小屋を作って仮設住宅にしているようだ。
変化を肌で感じていると、ミスティがニッコリ笑った。
「長たちが待ってるで!」
「うんうん」
ミスティに腕を引かれると、自然と笑みが浮かんでしまう。俺が普通の家庭に産まれていたら、弟や妹とこんな関係を築けていたのかもしれない。そんな妄想が浮かび上がる。
しかし、そんなものはないのだ。現実は非常である。
「……なんでニコニコしたり、落ち込んだりしてるのよ」
「全部落ち着いて、誰かが王位に就いたら、普通の家庭を築きたいな、って思っていただけだよ。その時には、俺も王位を失っているからね」
もちろん最低条件に、殺されないことや死なないことはあるが、そこまで無理な願いでは無いように思える。たぶん、心強い仲間を得たからだろう。
だが俺のそんな大きい夢に、スカーレットは肩を竦めた。
「どうせなら、もっと大きい理想を抱きなさいよ。王族全員の弱味を握って、全員手を出せないような影の支配者になってやる! みたいなやつをね」
バンバンと肩を叩かれ、スケールの違いに笑いが出る。
「いや本当、スカーレットの奔放さには憧れるよ。俺もそのくらい大きなことを言えるようになりたいな」
「褒めてる? バカにしてる?」
「もちろん褒めてるよ」
「ならいいわ!」
一人で生きていけそうなくらい強くて、誰が相手でも自分の意思を曲げない。俺には無い部分を持ち合わせているからこそ、スカーレットに憧れるんだろうなぁと、冷静に分析をする。……ただ、もう少し謙虚なほうが生きやすそうだなと素直に思った。
なぜかミスティに腕を抓られ、悲鳴を上げつつ進むこと数分。扉に赤い布を下げている家の中に、長たちはいた。
「どうも、ご無沙汰してます」
「久しぶりやな! 元気そうでなによりや! ……でもな、わしらの雇い主になったのに、腰が低い商人みたいな登場はやめてもらえんか?」
「ふーははははは! 久しぶりだな長たち! セス=カルトフェルンが――」
「やっぱりさっきのでええわ」
「あ、はい」
期待に応えたつもりだったが、どうやら違ったらしい。
そのまま手前に座ろうとしたら、上座に座れや! と怒られる。なんでエルフが上座にうるさいんだよ……と思いつつ、言われた通りの場所に座った。
俺が座ったのを確認し、長が口を開く。
「で、呪いについてはよく分かってへん。ミスティがちょいちょい体を調べてるやろ? その報告を元に話し合っているんやが、なんせ文献とかがあらへんからな。とりあえず、もうちょっと調べてみるわ」
「ミスティが?」
「子供なのに? みたいな顔をしとるが、ミスティは魔法に関しては天才的でな。契約している精霊も二等級と、わしらの中でも最上位に入ってん」
「へぇー。ミスティはすごいんだな」
「えへへ。うち結構やるんやで!」
司令室をうろちょろしたり、エルペルトを手伝ってお茶を注いだり。そんなイメージしか無かったが、ちゃんと理由があって俺の傍へ寄越されていたんだなぁ。
小さな天才児へ素直に感心していたのだが、よく考えるとここ最近は天才ばかりに出会っている気がする。エルペルトとか、スカーレットとか、ミスティとか、ティグリス殿下とか。もしかしたら、他にも隠れた天才がいるかもしれない。
今苦労しておけば、将来は安泰だな。優秀な部下たちに全て任せ、働かない生活を送れそうだと、満面の笑みを浮かべる。小声でエルペルトが言った。
「セス殿下、顔が緩んでおりますよ」
「おっと、失礼。……それで、精霊と契約して呪いをなんたらって聞いてきたんですが」
「あぁ、その通りやねん。ただ、精霊に呪いを解いてもらうっちゅーわけじゃないで? 呪いが魔法なら可能かもしれんが、それすら分からんからな。とりあえずは、危機的な状況にあったとしても、魔法が使えたら身を守れるかもしれない、ってことや」
「なるほどなるほど」
確かに、手は多いほうがいい。それに、魔法ってものに憧れが無いと言えば嘘になるだろう。男の子だからね。
契約について話していると、スカーレットが勢いよく手を上げた。
「あたしも契約したいわ! それで魔法剣士になるの!」
別に、魔法剣士が珍しいというわけではない。エルフの剣士なんて、ほとんどは魔法剣士だ。
適性があるかは分からないが、別に構わないだろうと思っていたのだが、珍しくエルペルトが反対の意を表明した。
「……まず、剣の腕を上げるべきではないですか?」
「そうね、父上の言うことに間違いはないわ。でも、それは魔法を使えてはいけない理由にはならないでしょ?」
「剣の修業が疎かになると私は思います。なので、まだスカーレットに魔法は必要ありません」
「それを決めるのはあたしよ」
「「……」」
あれ? なんだろう、空気が重い? もしかして、親子喧嘩が勃発しかけている? 大丈夫?
気付けば二人は向かい合っており、その間に俺が立っている。他のやつらはそっと離れていた。
視線を左右に動かし、手で小さく冷静にと示しておく。もちろん効果は無い。
「父上は考えが古いのよ。剣も、魔法も、なんだって使えたほうがいいに決まっているわ。選択肢が増えるということは、強くなったということよ。父上もそう教えたじゃない」
「私が教えたのは、強くなれば選択肢が増える、です」
「どっちも同じよ」
「いいえ、違います。ただ選択肢を増やすだけであれば、悪い結果を増やす可能性が高いのです」
我が護衛の二人が、我が陣営で最強の二人が、今目の前で決裂しようとしている。
ここは毅然とした態度で止めねばと、震えながら声を発した。
「ふ、二人とも冷静に――」
「表に出なさい、スカーレット」
「父上に恩返しをする日が来たようね。師匠越えってやつを見せてやるわ」
二人はバチバチに睨み合い、そのまま外へ出て行く。慌てて追いかけたが、すでに斬り合いは始まっていた。マジ勘弁してください。
しかも、それだけではない。
エルフたちが集まり、そのうちの一人が上級魔法を使用して地面をへこませ、まるで決戦場のようなスペースを作った。完全に上級魔法の無駄撃ちである。
「串肉~串肉いらんか~」
「ワインあるで、ワイン! 砦でもらったワインあるでー!」
「現在、8:2! エルペルト8! スカーレット2や! はったはったー!」
エルフ逞し過ぎない? と思っていたら、混成部隊のやつらも混じっていた。どうやら人もエルフも、こういったことは大好きらしい。
いつの間にか用意された特等席へ座り、二人の決闘を観覧しながら呟く。
「……俺の契約どうなったの?」
誰も答えてくれるはずがなく、額に手を当て深く息を吐いた。
勝負の結果については、スカーレットの十戦十敗。さらに泣きの一回を五回やったことで、十五戦十五敗で終わった。
0
あなたにおすすめの小説
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
女神様、もっと早く祝福が欲しかった。
しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。
今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。
女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか?
一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの
山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。
玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。
エリーゼ=アルセリア。
目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。
「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」
「……なぜ、ですか……?」
声が震える。
彼女の問いに、王子は冷然と答えた。
「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」
「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」
「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」
広間にざわめきが広がる。
──すべて、仕組まれていたのだ。
「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」
必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。
「黙れ!」
シャルルの一喝が、広間に響き渡る。
「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」
広間は、再び深い静寂に沈んだ。
「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」
王子は、無慈悲に言葉を重ねた。
「国外追放を命じる」
その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。
「そ、そんな……!」
桃色の髪が広間に広がる。
必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。
「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」
シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。
まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。
なぜ。
なぜ、こんなことに──。
エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。
彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。
それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。
兵士たちが進み出る。
無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。
「離して、ください……っ」
必死に抵抗するも、力は弱い。。
誰も助けない。エリーゼは、見た。
カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。
──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。
重い扉が開かれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる