アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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フィテアトル編

ベルの実家は

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バードランドを出て３日ほどで幸乃、ベル、リルカ、カラブロの4人はこの国の首都フィテアトルに到着した。

　バードランドを下っていくと気温が上がっていき、半日もすると20度くらいまで上昇していた。
　気温が上がったため、幸乃達はたまらず多めに来ていた服を脱ぎ始め、薄着になっていく。
　その間、以前幸乃達が滞在していたストレンセくらいの規模の都市3つくらいを通り過ぎる。

　街の停留所のような馬車に止まるたびに首都へ向かう乗客を次々に乗せていく。
　16人乗りの馬車は二つ目の都市ミュンヘルで満員になり、慌てて続行運転をする馬車が手配される、首都のフィテアトルへ到着するころには両馬車合わせて30人の乗客がいた。

　城門があり、そこからはこの都市のシンボルでもあるボルフス＝マルク宮殿が垣間見えた。
　幸乃がそれを見て思わず声を上げる、なんてすごい宮殿だろうと。

　アヤ=ソフィアのような巨大かつ端麗な宮殿はここに来た人たちや国民たちにここの皇族の権威を表すには十分なものだった。

　整った石畳の道で出来た街の大通り、それを人込みを横切るように馬車は進んでいく。
　そして繁華街の手前のような場所に馬車の停留所があり、そこで乗客は降ろされる。
　４人とカメラを持ったシェリンが降りると幸乃はシェリンにカメラに街の様子を写させて５分程解説をする。

　それが終わるとベルが案内を始める。
　ここはベルの実家なのでそこでしばしの間泊めてもらう事となった。

　繁華街を抜け、ベルの実家があるフレスト地区へ４人は入っていく。
　そこは先ほどの繁華街と比べると貧しい人達が住んでいる住宅街といった感じで、人々の服が埃っぽく汚れていたり周囲の建物が無秩序で埃かぶっていたり、煉瓦にひびが入っていたりしていて、幸乃達はここが貧困層が住んでいる地域だということを直感的に理解する。

　時折追いかけっこをしている子供たちとすれ違ったりしながら10分ほど歩くと小さいながらも3階建ての年期は入っているが特別周りと比べて古くは見えないありふれた家の前でベルは立ち止まる。

「ここが私の家です」

　家にノックをした後4人が家に入る。
　3人はベルの両親にあいさつをする。

　次にベルは3人の宿泊部屋を案内しはじめる。
　人一人が通れるくらいの狭い階段を幸乃達はベルを先頭に上っていく。
　そして3階に上がるとベルは指を差して説明をする。

「ここが幸乃さんとリルカさんの部屋、カラブロさんはあちらの部屋を使ってください」

　その説明通り案内された部屋を幸乃とリルカが明ける。
　特別豪華ではないが質素で物が少ない部屋といった感じだった。
　そしてリルカと幸乃は長旅の疲れからかベットに身を投げるなりすぐに寝てしまう。

「ご飯にしますよ、起きてください！！」

　ベルが幸乃とリルカの部屋のドアを開けてそう叫ぶ。
　窓を見るとすでに夜になっていていた、カラブロは教団の仲間たちに用事があるらしくそこへ行ったらしい。

　食事はカルボナーラに野菜スープ、コーヒー、味はおいしく家庭の味といった感じだった。
　食事をしながら幸乃達は話しを進め始め、ベルもいつもの無表情で言葉を返し始める。

「そう言えばさあベルちゃん、ちょっといいかな？」

「はい、何でしょうか？」

「ここでは私たち、何をすればいいのかな」

「そうですね、よく話していませんでした、今から説明します」

「まずここではもうすぐ3皇戦というイベントのようなものがありまして、それに私と幸乃さんで出場します」

　ベルの説明が始まる。この国の貴族は歴代三つの派閥に分かれていて、彼らはその派閥ごとに傭兵を作っていた。
　そしてその傭兵を戦わせて５年ごとに優劣を競いあっていた、勝った貴族はこの周辺の鉱山の利益を得る権利を賞金として得ていた。

　そしてそれは次第に国を盛り上げるイベントとなっていき、今の皇帝ベラッティが即位したときに国を盛り上げるイベントとしてお祭り騒ぎとして復活されたというのである。

　無論貴族たちの中にだっていまだに対立感情を持った者たちもいた。
　貴族にだってプライドはある。

　ヴェラッティは彼らの感情を無視したり強引に否定して無理矢理避けようと凝り固まれば、組織は柔軟性を失い、崩壊する。

　対立を無理に否定せず戦い自体は競技という形で公平な条件で継続させ彼らの感情も尊重しつつ競技を通して彼らの親睦を高めていくという作戦であった。

　鉱山の権利も今は勝った方が秘密裏に助成金として負けた方に出すことになっていて負けてもその貴族に損が無い仕組みに変えたのである。
　互いにリスペクトさせ、少しずつ自然に修復させようと考えていたのである。

　そして派閥の1つ、ベルがバーデン家の傭兵として一時的に傭兵に勤めていたので、その時の実力を買われてバーデン家の代表として出場することが決まっていた。
　さらに、もう一人のパートナーもベルが指名してよいということになったので、幸乃を指名し2人で戦うことが決定したのである。

　そして他の貴族の派閥、エーリッヒ家、フランツ家の代表者も代表者が決まっていてその人たちと事前に協議があるとも話していた。

　さらにその間、リルカとカラブロにはやってほしいことがあるという……

　それは周囲に怪しい動きが無いか気を配ってほしいということだった。
　リルカとカラブロはそれを承認する。

「この後ですが、幸乃さんにはあってほしい人物がいます」

　そしてその人物の名前と素性を言った途端幸乃は驚いた、それって敵なのではないかと。
　ベルは無表情ながらもなだめるように言い放つ。

「大丈夫です、その人物は私も会ったことはありますが決して初めて会った人を敵扱いする様な方ではありません」

「うん、それならいいけど……」

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