アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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フィテアトル編

揺れ動く3皇戦

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 一瞬後方の幸乃を見つめるとベルは一気にアブホースをめがけてダッシュした。

「ブォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」

 当然のようにアブホースはそれを迎撃するかのようにベルを狙って光線を放つ。
 だがその光線をベルは何とかかわすとアブホースの首部分が先ほどと同じように爆発した。
 幸乃の遠距離攻撃である、以前のミリートとの戦いのようにシェリンと力を合わせて強力な光線状の攻撃を出していた、当然体への負担も大きく3回までしかか使えないが……

 ベルは両者の光線を掻い潜りながら大きく飛ぶとアブホースの首元に急接近し一気に自身の剣で首元を切り下ろす。

 そしてその刀がアブホースの首を容易く切断し、さらに返す刀でもう1撃。
 1度地面に着陸するが多少無茶な姿勢でもすぐに立て直し、さらにアブホースに接近し攻撃に移る。
 出来るだけ再生する時間を与えないようにするにはこれしかなかった。
 そしてベルが少し首元を離れたスキに……

「ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン」

 幸乃がさらにもう1撃、アブホースに攻撃を与える。
 そして爆発の粉塵の中にベルは突っ込み──

「嵐のごとくひき裂け!! スレイシング・ストリーム!!」

 ベルが先日幸乃と訓練中に使えるようになった新術式を発動させる。
 普段ベルが切れ込む力の2倍以上に相当する斬撃、それをベルはアブホースののどに叩きこむ。


 そしてとうとうアブホースのコアが露出する形になる。
 ベルはそのまま地面へ落下、その瞬間間髪をいれずに幸乃がシェリンの力を借りて強力な1撃をたたき込む。

 それは今までにないくらいの強力な1撃だった。

「ブォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」


 シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……

 周りにとてつもない威圧感を与えるような巨大な声の断末魔の叫び声をアブホースは上げる、そして断末魔の叫びを叫びながら足先から順に膝、腰が順番にまるで蒸発するように消滅していく、そして時間がたち3分ほどすると全身が消滅した。

「勝った……みたいだね」

 それを見た幸乃が自身の魔力を使い果たしみずほらしい姿になったまま囁く。

 そしてアブホースが消滅するとシャレーを縛っていた真っ黒い縄もまた消滅し、シャレーの肉体はそのまま地面にぐったりと倒れこむ。そしてその場所にベルと幸乃が直行し、2人でシャレーを持ち上げ肩を貸して持ち上げる。

 その瞬間はヴェラッティの魔力「ライトニング・ビジョン」を通してこの競技を固唾をのんで見守っていた人たちにしっかりと目撃された、そしてヴェラッティがその瞬間に自身の姿に映像を切り替え宣言し出す、勝者──

「幸乃、ベルチーム!!」

「素晴らしかったです、僕があらかじめ盛り上げるためにセットしたあんな強い敵を倒した強さと2人のチームワーク、その実力で1戦目を制しました。これは3皇戦の結果は決まったも同然か?」

 そしてそれを見ていた観客達が興奮し出して大歓声が上がる。
 ヴェラッティはさらにこの場を盛り上げるように2人にたいして喝采の言葉を贈る、そしてそれが終わるとカメラ目線になり2人に語りかけるように叫ぶ。

「待っててくれよ、今俺が直々に言葉をかけてやるからな!! 今そっちに行くぞ!!」

 しかし幸乃達は混乱する。なぜなら今日の3皇戦は本来3チームが戦ってその結果最初にシャレーをここから助けたら勝者になるというルールのはずだった。

 確かにジャミア達は幸乃達が倒したしシンクレア達はアブホースに敗北し戦える状態にない、その状態で幸乃達がシャレーを助けた姿を皆に見せれてヴェラッティがあのような勝利宣言をすればこれを見ている人達は2人が勝者だと信じてしまう。

 しかし、当の2人がそれで納得できたかというと──





 2人がヴェラッティを待っている間にシンクレアとロニーが何とか立ち上がる、そしてアブホースを何とか倒したことを告げる、そしてヴェラッティが自分とベルが勝手に照射宣言をしてしまったことも話す。

 そして30分ほどするとヴェラッティが馬に乗って到着する。そして開口1番に4人に話しかける。


「まず混乱させないために冥王のことは一般人には伏せてほしい、それとこれからのことを今話す」

 そう最初に2人に話しかける。話によるととりあえず唯一ここに立っている幸乃とベルが勝者であると宣言してこの場を落ち着けさせただけだという。

「でもそれってずるくないですか? 少なくても公平な勝負には見えません」

「私もベルちゃんと同意見!! そういう事は正々堂々とやるべきだと思う!!」

 幸乃とベルは息を合わせたようにヴェラッティに反論する。
 2人ともいくらなんでもずるをして勝利するのはいい気分ではなかった、そして2人はきちんと国民に話しをして再試合をすることを希望した、しかしヴェラッティはいつになく真剣な表情で言葉を返す。

「俺が話したいのはそういういことではない、今はもう競技をやっている場合ではないという事だ」

「じゃあ、3皇戦自体をやめるという事なんですか?」
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