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二つの王国編

第86話 私が、直接行く

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 一方私達。

 マリスネス、ペタンの政務室に、私達はいた。
 夕日の陽光が私達を照らす。

 どよーんとした暗い雰囲気がこの場所を包む。

 リムランドとバルティカがさらなる資金と兵力を対マリスネス用に用意するという一方が届いたからだ。

「そ、そうなんだ……」

「はい、大丈夫でしょうか──私たち」

 ショックで思わずへたり込んでしまう。私だけでなく、ライナやペタン、フォッシュも。
 せっかくここまでやったのに……。

 私達が知恵を出して力を合わせたところで、大国たちはそれを金と強大な力でたやすく押し潰されてしまうのだ。

 今までたまっていた疲労が体を襲い、窓際の壁に座り込んでしまう。

 額に手を当てながらどうすればいいかを頭を回して考える。


 他の人達も、同じような気持ちなのだろう。
 呆然としていたり、うなだれていたり……。

(どうしようかしらね……)

 センドラーもため息をついて腕を組んで考えている。これだけ重い雰囲気でも彼女は何も言わないのは、どうにもならない……ということなのだろう。

 けど、あきらめるわけにはいかない。せっかくここまで来たんだから──。

 まずはこの重い空気を何とかしようと、私はパンと大きく手を叩いた。

「みんな、あきらめるのはまだ早いわ」

 みんなの視線が私に向かう。

「そうですよセンドラー様。あきらめるのはまだ早いです」

 ライナの言葉に、他の人達も互いに顔を合わせ、雰囲気が変わった。
 互いに顔を見合わせると、フォッシュも言葉をかけてきた。

「私も、最後まで力添えするつもりです」

 その言葉を聞いて、私の心に光が差したような気がした。
 みんなの言葉が、私を動かすエネルギーになった。

 ゆっくりと、立ち上がる。

「ごめん──みんな。私、あきらめたりしない」

「センドラー様らしいです。一緒に頑張りましょう」

 この場の雰囲気が、少しだけ明るくなった。
 そうだ。まだ負けたと決まったわけじゃ無い。彼らのためにも、最後まで頑張らないと。

 それから、話し合いが行われた。これから、どうするかだ。

 私の心に、一つの提案が浮かんだ。

 弱者である私達がリムランドに対して対抗するには……相手にスキを突くこと。
 弱点を見抜くこと──だ。

 しかし、それが存在するのかわからない。もし見つからなかったら、さらに意気消沈してしまうだろう。考えに自信がなく、どういえばいいか迷っていると──。

(その通りよ秋乃。でも、もっと自信をもって言いなさい。そうじゃないと、みんなが困ってしまうわ)

 確かに、こんな迷った気持で物事を言ったら、みんなもそれで行けるのかどうか迷ってしまう。
 自信をもって言わないと……。

 顔を両手でパンと叩いて、意見を言う。

「じゃあ、バルティカの弱点を見つけるというのはどう? 絶対、何かあるはずよ」

 私の言葉に、フォッシュが反応する。

「確かに、わざわざ私達にいろいろ突っかかってくるということは、何かがあるとか思います。でも……何があるかは……」

「いろいろ調べて、見つけましょう。絶対に、何かあるはずです」

 ライナの言葉を聞いて、私の頭の中に一人の人物が思い浮かんだ。

「カルノさん──」

 それに、私達と話しているとき──どこかおかしかった。よそよそしかったり、何かを隠しているように見えたり──。

 あの意味深な態度。絶対何かあるはずだ。けれど、あの態度からしてそう簡単にそれを言ってくれるとは思えない。


 それなら、答えは一つしかない。

「バルティカに、直接会いに行ってみる」

「でも、カルノさんってバルティカに住んでるんですよね」

 フォッシュの言う通りだ。
 時間がかかってしまうからみんなでというわけにもいかない。それに私達がバルティカに潜入捜査をしているなんて知れたらそれだけで大問題になるから変装は必須。

 やるならペタンやフォッシュは抜きにして私単独でやらなければならない。
 それなら万が一正体がばれても「私が単独でやった」と主張すれば、2人に比較的火の粉が降りかからなくなるからだ。

 なら、行くしかない。王宮にいるより、色々動いてみよう。
 私は手を上げて、言った。

「私がバルティカに行って、直接話を聞きに行く」

 その言葉にしばらく回りが静まり返ると、ペタンが態度を落ち着かせて言葉を返す。

「わかった。頼りにしているぞ、センドラー」

「ありがとう」

 快く返事をしてくれて、とても嬉しい。期待に応えるような働きをしたいものだ。

 そして、ライナが来た。私に飛びついて

「私もついていきます。力になります」

 キラキラした目つき。一瞬ためらってしまったが、悪くはない。
 やっていいことと悪いことの分別はついているし、力になるだろう。

「わかった。じゃあ一緒に行こう。よろしくね」


「あ、ありがとうございますぅ~~」

 ぴょんぴょんと飛び上がって喜びを表現しながら言葉を返し──。
 チュッ──。

 ほっぺにキスをした。

 満面の笑みを浮かべるライナ。私の顔がカッと赤くなる。
 この場の雰囲気が、少しだけ明るくなった。

 ちょっと落ち込んだりもしたけど、やっぱり諦めるわけにはいかない。
 どんな結果になるかわからないけれど、全力を尽くしていこう。
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