34 / 51
第34話 自分の人生を、歩もう
しおりを挟むあれから数日が過ぎた。
午後、ちょっと時間が空いたのでメルアと一緒に買い物をする。
先日のデートのこともあり、楽しい会話をしながら楽しい時間を過ごす。
まだ、会話はたどたどしいが、生活のことや、周囲のことをよく話した。
彼女との会話は、あっという間で、とても楽しい。
そんな会話をしながら食器や食料などを買っているうちに夕方になる。
いつもの分かれ道──。
「じゃあね、信一君。また明日ね!」
「そうだね。メルア」
お別れ。また明日、会いたいな──。
そして、帰り道に視線を向けるとそこにいた光景、正確には人物の姿にぞっとしてしまった。
民家の壁に寄りかかっているその少女。
動物のような小柄な体型。サラサラの金髪ヘア。透き通った瞳。柔らかくきれいなほっぺ。
「文香、何の用だ? ガムランの所にでも行けよ」
「あのクズですか? 振ってやりましたよ。当たり前じゃないですか。あんなナルシスト全開の奴、一緒にいるだけで虫唾が走ります」
にっこりと今までにないくらいの笑顔を浮かべながら。俺に近寄ってくる。
「っていうかこんな夕方まで何をやっていたの? あのクソ女と寝てたの? ──て無視して通過していくとかどういう態度なの? ありえなくない?」
何だ。赤の他人が偉そうにべらべらと──。俺は文香を無視して教会へ帰る。
マジかよ。まさかこんなところで再開するなんて──。
しかし、あそこまで嫌っていたはずなのに、どうしてストーカーともいえるような行動をとれるんだ?
そんな奴、俺は友達はおろか視界に入れることすら拒絶するレベルだ。
しかし、何で文香は俺にここまでこだわりを持つのだろうか。
「俺が欠陥品のゴミ人間だから、仕方なく付き合ってあげてるのよ」とか言っていたくせに。
あと考えられるのは、俺を「ストレス解消の道具」だと考えていて、そのおもちゃである俺を失いたくないという線──。
そんな扱いは、絶対にごめんだ。ここはきっぱりと言おう!
「視界に入れたくないくらい大嫌いだ。必要に付きまとわれても困る。どっかに行ってくれ」
「つまり、この文香様と別れたいとか抜かしているんですか?」
明らかなつくり笑顔。目には殺気がこれでもかというくらいわいている。
「その通りだ。俺は、世界で1番文香のことが嫌いだ。交際はおろか、同じ空気を吸うのも、一緒の時間を過ごすのも嫌だ。お前の顔を見ているだけで吐き気がする、」
「私と別れるなんてしたら、信一君は産業廃棄物の欠陥品、ゴミ以下ですよ!」
「お前といる時間の方が、俺にとっては産業廃棄物のゴミ以下だった」
すると文香は、俺に同情するような目を向ける。
「私、信一君に動揺します。今まで、持てないし、人気もない陰キャだった信一君。たまたま運よく活躍して、人気者になったことで身の程が理解できなくなって天狗になっちゃったんですね。本当に愚かでゴミ、ダメ人間ですよね──。まあ、そんな信一君だからこそ、この私が必要なんですけれどね」
ふざけるな。俺だって、寄りついてきたやつすすべて手放しで信じ込んでいるわけではない。俺だってそこまでお花畑な人間ではない。
けれど、心の底から嬉しかった。俺に好意的に接してくれるのが。
特に、メルアだ。
明るくて、元気で、それでいて俺のことを想ってくれている。
たくさん、勇気と元気をもらった。
メルアがあそこまで思ってくれていたことが本当にうれしかったんだ。
だから、その分、もらったものを返したかった。確かに完ぺきとはいかないけれど、俺だって彼女のために、みんなのために頑張りたいと思っている。
全員、罵倒ばかりしてきた貴様とは大違いだ。
「信一君はね、ゴミで欠陥品の産業廃棄物なの。だから私が全部支配して指示を出してあげていたの。信一君の無能な行動で私はよくイライラして殺してやりたい衝動に駆られていたのよ。地面に頭がめり込むまで土下座して私に謝りなさい! 信一君の無能な行動で私がイライラするなんて日常茶飯事なのよ。それを私が女神のような慈悲深い優しさで許してあげているの。さあ、早く土下座して謝ってください!」
ふざけるな、さんざん暴力を振って、罵倒しておいて、何て言い草だ。俺はもう、貴様の言いなりになんかならない!
「それは、世界が滅んだってあり得ない。俺はお前に対して、悪いと思ったことは1度もない」
「ハァ?」
「今の言葉を聞いて、やっぱりと思った。俺にとって文香は人生の足かせだたって。いらない──! 俺にとってお前を一言で表した言葉がそれだ!」
文香は強くショックを受けたようで、表情を固まらせてしまう。彼女の心を表わす様に醜悪にゆがんだ表情。はらわたが煮えくり返っているのがわかる。
「もういいわ。心の底から腹立った! 信一みたいなダメ人間、私の方からお断りよ。もう絶対に許さないわ」
「これで意見が一致したな。もうこうして一緒にいる必要はない。互いに幸せだな! やったぜ」
俺はホッと胸をなでおろす。ようやく人生の重荷がなくなったんだと。
文香はどこか不満そうに、俺をにらみつける。
「じゃあな、俺は教会に戻るから」
そして俺はこの場から立ち去ろうとする。文香は両手を強く握り、ムキになったようにして」叫ぶ。
「本当にいいのね。もう知らない。後になってやっぱり文香様が欲しいって泣きついてきても、私足蹴りにして突き放しちゃうからね!」
そんなときは永遠にないから。文香は早足でこの場を去っていく。
その姿は、悔しくてたまらないという感じだった。
俺は、引き留めなんてしない。教会へと歩を進める。
まあ、文香が俺と別れることを認めてくれたのはよかった。
これからは、自分の人生を歩もう。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる