暴力系幼馴染と異世界に転生したら、幼馴染が魔王軍に裏切るとか言ったから、そのクソみたいな面を思いっきりぶん殴った

静内燕

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ネフィリムフィア編

第36話 シェルムさんの事情

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「人格。どういうことだ?」

 すると、シェルムさんは真剣な表情になり、さらに会話を進める。

「その人格は、とあるキーを発動させることで、解放させられると聞いています。なのでひとたび幹部の手にかかれば、彼女に魔王軍の配下としての心を植え付けられ。その本能のままに周囲を攻撃してしまうでしょう」

 別人格を忍び込ませているってことか。けど、それ──。

「か、かわいそうじゃない? だってルナって子は本当は戦いたくないんでしょ。それを無理やり戦わせるって──」

 メルアがその少女を心配そうな表情をする。
 確かにそうだ。けど、俺たちが行った所で方法とかあるのか?
 ジルヴィーさんも、俺と同じ疑問を持っていたようで、そんな質問をし始める。

「確かにそれは可哀そうだと思います。しかし、私達は魔王軍と戦うことはあっても、その力についてはよく知らないのです。いった所で、どうにかなる問題ではないかと──」

 しかし、シェルムは食い下がる。そりゃあ、友人のことだもんな。そのためにこんな遠い地まで来たってことは、それだけルナって少女を何とかしようとしているってことだ。

「この村はいつも魔王軍との戦いをしていることで有名です。なので、あなたたちの力を借りればルナを救えると噂で聞きました。お願いします。どうかルナを助けてください」

 そしてシェルムさんが頭を下げ、俺たちにお願いしてくる。必死な彼女の口調や表現からシェルムさんが本気でルナという少女を助けたいという気持ちが伝わってくる。

 しかし──。

「魔王軍の人格から解放って、できる人、いるの?」

 メルアが、ひそひそ声で聴いてきた。やはり彼女も疑問に思っていたんだ。

「聞いた事がない、たぶんいないと思う」


 恐らく、俺たちのことをよく知らない人が、うわさを聞いて告げ口した。そしてシェルムさんは藁にもすがる思いでそれを信じ、ここまで来たという事だろう。

 俺たちの世界の大昔、日本のことを遠い国のヨーロッパの人たちが「黄金の国ジパング」だとか「王の宮殿が金でできている」とか噂していたが、そのレベルのでたらめな噂だろう。

 考えたらこの時代にはスマホはおろか、新聞やテレビすらない。だから王都からすれば俺たちは遠い偏狭な地にいる村人。
 魔王軍と戦っている事実は知っていても、どんなことをしているかなんてよく知らない。

 周囲の冒険者たちも、俺と同じような考えをしているというのが表情から分かる。

 でも、どうすればいいんだ。
 確かこの人ギルド協会の偉い人なんだっけ。

 ジルヴィーさんも、気まずい表情をしながら言葉を詰まらせている。
 ギルド的にも、追い返すわけにもいかないのだろう。

「この村の方に遠征した冒険者の人が言っていました。この村なら何とかしてくれると」

 その強い言葉にジルヴィーさんも、彼女を無視することができなくなり──。

「了解しました。シェルムさんの、ルナへの強い気持ち。受け取りました。しかし、私達の村の者が行った所で必ずしも、成功するとは限りません。それは肝に銘じておいてください」

「──了解しました」

 シェルムさんの表情が険しくなる。彼女だって、ギルドで生きてきた人間。すべて物事がうまくいくわけではないというのは理解しているだろう。

「さて、王都へ向かわせるものですが、私達といたしましても、ルナさんを取り戻すために全力を尽くすという意味で、最も魔王軍に対して戦果を挙げた実力者を推薦します」

「そ、そうですか? それはとても心強いです!」

 シェルムさんは顔を上げて表情が明るくなる。そして──。


「私は信一さんと、そこにいる女の子二人を推薦します。名前は右の子供がダルク。左の少女がメルアです」


 お、俺? 何かの冗談だろ──。
 正直予想していなかった。メルアも驚いて言葉を失っているのがわかる。
 俺はジルヴィーさんに詰め寄り抗議。どういうことだ? 俺たちを向かわせたところでどうにかなるわけでもないのに──。

「ま、まてなんで俺たちなんだよ。おかしいだろ!」

 しかしジルヴィーさんはそんなことは気にも留めずに、言葉を進める。
「この3人は、先日魔王軍が襲撃したときに、幹部であった ゾドムとヒュドラを退治した」

「わかりました。信一さん、メルアさん。ダルクさん。」

「ちょっと、お前たちこっち来い」

「すいません、シェルムさん。ちょっと彼らと打ち合わせがあるんでいったん事務室へ行きます。ちょっと待っててください」

 そして俺たちはジルヴィーさん連れられて事務所へ。ドアを閉めると、すぐに俺とメルアは抗議。

「ジルヴィーさん! 私達そんな魔法使えないよ」

「そ、そうだよ。あの人、真剣だったぞ。できなかったら、どうするんだよ」

 ジルヴィーさんも、それは理解しているのが表情から分かる。両手を腰に当て、反論してきた。

「彼女はああ見えても、ギルドでも高い身分の人なんだ。もし機嫌を損ねれば、村のギルドへの分配金が減らされることだってあり得る。だから下手な対応はできないんだ」

 その言葉に俺とメルアは矛を抑える。確かに、それは重大だ。
 分配金が減れば、冒険者たちの設備や給料にも影響は出る。

「半端な奴を残しても、別に奴ならできるって粘られちまう。彼女のは本気で救いを求めているんだ。最悪、別の奴を連れてきてくれって言われる可能性がある。だから、ここ最近で一番魔王軍に対して成果が出ているお前たちに行ってもらうんだ。それでだめならばシェルムさんだって、納得してくれるだろう」

「そ、そういうことか──」

 ジルヴィーさんも、中間管理職みたいで大変なんだな。確かに妥当だ。
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