39 / 103
第39話 元勇者 見張りを始める
しおりを挟む
「わかった、2人にも協力してもらうよ」
「……陽君、ありがとうね」
「私からも、礼を言わせていただきます」
2人とも落ち着きを取り戻す。考えてみれば俺も悪かったな。2人の事も考えず一方的に
何もするなだもんな。もっと相手の気持ち的な事も考えてあげなきゃ──。
「ただ、一つだけ約束してほしい事があるんだ」
「何? 陽君──」
そう言うと俺は真剣な表情になる。確かに2人の気持ちはわかったけどこれは譲れない。仲間を失うなんて嫌だしな……。
「ハイドはものすごく強い。だから見つかったり襲ってきたりしたら戦わないで撤退してくれ」
「撤退……? 陽君」
「戦わなくて、よいのですか?」
2人は予想してなかったのかキョトンとした表情になる。
「はっきりいって2人が勝てる相手じゃない。戦ったら一瞬で魂を奪われて終わりだ」
「そ、そうなんですか……」
「それだけは約束してくれ」
俺の言葉にどこかしょんぼりする2人。まあ、気持ちはわかる、最初のころは俺もそうだった。とにかく敵がいたら自分の安全も考えずに突っ込んで戦って周りに迷惑かけていたっけ。
「ボロボロになっている時に逃げるように撤退したり、敵に背中を向けた事は俺だってある。逃げるのは恥じゃない。けど自分の身を失ったら終わりだ。俺だって2人を失うなんてしたくない。だから勝てないと思ったらすぐに逃げてくれ」
「──わかりました」
「わかった。陽君」
俺の言葉に2人は何とか首を縦に振ってくれた。とりあえずホッとする俺。
ローザは覚悟を決めたように息をのみ真剣な表情になる。みんなの役に立ちたいというのがひしひしと俺にも伝わってくる。
「とりあえず見張りの仕方について簡単に説明する」
俺は勇者だった時の経験を活かして見張りのやり方を説明。ローザ達は興味津々で耳を傾けやり方を聞いていた。
実行は明日からとなった。特に他に予定があるわけでもないしな──。
早く見つかるといいな、ハイド。
そんな事を考えながら今日、平和な1日を過ごす。
そして翌日、作戦の決行となる。朝、ローザとセフィラが目的の病院に到着。
「セフィラちゃん。行こう──」
「ええ、けど覚えてますか? 見つけたら何も言わずに撤退すること、見つかっても戦ったりせず逃げる事」
「う~~、わかってるよ」
ローザは少し不機嫌そうだ。やはり何もできないというのは心では分かっていても感情がどこか許さないのだろう。
うろうろ歩きながら病院の周囲を見張る。といっても日が明けている時間、怪しい動きなど無い。
4交代で病院の周りを見張るという決まりになっている。
朝と昼間はセフィラとローザ、次がセリカ、その次がルシフェルそして1番人通りが少なくて体力的にもきつい夜の時間に俺が回るということになった。
2人が見張る中、特に目立った動きは無く日が落ち始めた昼過ぎ。
「ローザちゃん、セフィラちゃん。やっほー、どうだった?」
「あールシフェルさん。こんにちは、機嫌良さそうですね──」
交代の時間になりルシフェルがやってくる。しかしどこか機嫌よさげな表情、をしている。
「そこにある料理の店行ったんだけど、結構おいしかったのよ。2人ともお腹すいているでしょ、いってみなよ。北国系のシチューが本当においしかったわ」
「まあ、ずっと見張っていましたからね。じゃあ2人で行ってみますね」
「シチュー? おいしそう!!」
その言葉にローザがはっとテンションを高くして喜ぶ。
「店は道をまっすぐ行って繁華街、入口看板の左を右に曲がると見えてくるはずよ」
「わかった。いってみるね!!」
「いってらっしゃい、お疲れ様!!」
そう言ってローザとセフィラはこの場所を去っていく。
次はルシフェルの番だ。
しかし特に問題もなく任務は終了。セリカがやってくる。
「セリカ、こっちよ!!」
「ああ、何か異常はなかったか?」
「特にないわ。大丈夫よ」
そんなやりとりをしながらルシフェルはセリカと交代、そして時間が経つと日が暮れ始め夜になる。
あたりに人気はない。いつもは賑わっていた街も静かな雰囲気に包まれる。
俺はそんな街を周囲に警戒しながら歩いていく。
そして目的地にたどり着いた。
「セリカ。お疲れ、何か怪しい動きとかあったか?」
セリカは特に疲れている様子もなくこっちに振り向くと腕を組んだ姿勢でこっちを振り向く。
「特に問題はなかった。ハイドは現れなかった」
「わかった」
そして交代となる、セリカも疲れているだろうし早く返した方がいいだろう。
「じゃあお疲れ、早く帰って休みなよ」
「気づかいありがとう、じゃあ無理しないようにな。き、気をつけてくれよ」
セリカは顔をほんのりと赤くしていいずらそうに囁く。
そしてセリカはホテルに帰っていく。お疲れ様、今日は帰ってよく休んでくれ
そして夜、さらに闇は深くなり人気は全くない。
漆黒の闇がこの場を包む中俺は集中を切らさずに見張りを続ける。
そんな中、1人の物陰を発見する。
「あいつ、ハイドじゃねぇか!!」
「……陽君、ありがとうね」
「私からも、礼を言わせていただきます」
2人とも落ち着きを取り戻す。考えてみれば俺も悪かったな。2人の事も考えず一方的に
何もするなだもんな。もっと相手の気持ち的な事も考えてあげなきゃ──。
「ただ、一つだけ約束してほしい事があるんだ」
「何? 陽君──」
そう言うと俺は真剣な表情になる。確かに2人の気持ちはわかったけどこれは譲れない。仲間を失うなんて嫌だしな……。
「ハイドはものすごく強い。だから見つかったり襲ってきたりしたら戦わないで撤退してくれ」
「撤退……? 陽君」
「戦わなくて、よいのですか?」
2人は予想してなかったのかキョトンとした表情になる。
「はっきりいって2人が勝てる相手じゃない。戦ったら一瞬で魂を奪われて終わりだ」
「そ、そうなんですか……」
「それだけは約束してくれ」
俺の言葉にどこかしょんぼりする2人。まあ、気持ちはわかる、最初のころは俺もそうだった。とにかく敵がいたら自分の安全も考えずに突っ込んで戦って周りに迷惑かけていたっけ。
「ボロボロになっている時に逃げるように撤退したり、敵に背中を向けた事は俺だってある。逃げるのは恥じゃない。けど自分の身を失ったら終わりだ。俺だって2人を失うなんてしたくない。だから勝てないと思ったらすぐに逃げてくれ」
「──わかりました」
「わかった。陽君」
俺の言葉に2人は何とか首を縦に振ってくれた。とりあえずホッとする俺。
ローザは覚悟を決めたように息をのみ真剣な表情になる。みんなの役に立ちたいというのがひしひしと俺にも伝わってくる。
「とりあえず見張りの仕方について簡単に説明する」
俺は勇者だった時の経験を活かして見張りのやり方を説明。ローザ達は興味津々で耳を傾けやり方を聞いていた。
実行は明日からとなった。特に他に予定があるわけでもないしな──。
早く見つかるといいな、ハイド。
そんな事を考えながら今日、平和な1日を過ごす。
そして翌日、作戦の決行となる。朝、ローザとセフィラが目的の病院に到着。
「セフィラちゃん。行こう──」
「ええ、けど覚えてますか? 見つけたら何も言わずに撤退すること、見つかっても戦ったりせず逃げる事」
「う~~、わかってるよ」
ローザは少し不機嫌そうだ。やはり何もできないというのは心では分かっていても感情がどこか許さないのだろう。
うろうろ歩きながら病院の周囲を見張る。といっても日が明けている時間、怪しい動きなど無い。
4交代で病院の周りを見張るという決まりになっている。
朝と昼間はセフィラとローザ、次がセリカ、その次がルシフェルそして1番人通りが少なくて体力的にもきつい夜の時間に俺が回るということになった。
2人が見張る中、特に目立った動きは無く日が落ち始めた昼過ぎ。
「ローザちゃん、セフィラちゃん。やっほー、どうだった?」
「あールシフェルさん。こんにちは、機嫌良さそうですね──」
交代の時間になりルシフェルがやってくる。しかしどこか機嫌よさげな表情、をしている。
「そこにある料理の店行ったんだけど、結構おいしかったのよ。2人ともお腹すいているでしょ、いってみなよ。北国系のシチューが本当においしかったわ」
「まあ、ずっと見張っていましたからね。じゃあ2人で行ってみますね」
「シチュー? おいしそう!!」
その言葉にローザがはっとテンションを高くして喜ぶ。
「店は道をまっすぐ行って繁華街、入口看板の左を右に曲がると見えてくるはずよ」
「わかった。いってみるね!!」
「いってらっしゃい、お疲れ様!!」
そう言ってローザとセフィラはこの場所を去っていく。
次はルシフェルの番だ。
しかし特に問題もなく任務は終了。セリカがやってくる。
「セリカ、こっちよ!!」
「ああ、何か異常はなかったか?」
「特にないわ。大丈夫よ」
そんなやりとりをしながらルシフェルはセリカと交代、そして時間が経つと日が暮れ始め夜になる。
あたりに人気はない。いつもは賑わっていた街も静かな雰囲気に包まれる。
俺はそんな街を周囲に警戒しながら歩いていく。
そして目的地にたどり着いた。
「セリカ。お疲れ、何か怪しい動きとかあったか?」
セリカは特に疲れている様子もなくこっちに振り向くと腕を組んだ姿勢でこっちを振り向く。
「特に問題はなかった。ハイドは現れなかった」
「わかった」
そして交代となる、セリカも疲れているだろうし早く返した方がいいだろう。
「じゃあお疲れ、早く帰って休みなよ」
「気づかいありがとう、じゃあ無理しないようにな。き、気をつけてくれよ」
セリカは顔をほんのりと赤くしていいずらそうに囁く。
そしてセリカはホテルに帰っていく。お疲れ様、今日は帰ってよく休んでくれ
そして夜、さらに闇は深くなり人気は全くない。
漆黒の闇がこの場を包む中俺は集中を切らさずに見張りを続ける。
そんな中、1人の物陰を発見する。
「あいつ、ハイドじゃねぇか!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる