41 / 103
第41話 元勇者 ハイドの過去を知る
しおりを挟む
「そして実験の一つで様々な魔力を彼の注入してみた実験をしたのじゃが」
「何をしたの?」
ルシフェルの言葉に医者は平然と答える。
「人間の魔力をこのノルアに注入すると苦しみが治る反応を見せたのじゃ。そしてそれを手がかりに人間達の魔力を手当たり次第注入していたのじゃ」
他人の魔力って……、流石にまずいだろ。その人物にだって負担はかかるはずだし──。
一件聞くと無茶なやり方だと俺は考えた。しかしそれ以外に手立てがない、だからこのようなことをしているのだろう。
そしてルシフェルが一つの事実に気付き叫ぶ。
「じゃああんた、苦しんでいる弟の病気を治すために今まで人の魂を狩っていたっていうの?」
「御名答、そういうことだ。だが量がまだ足りない。もっと魂を狩らなければいけない」
ローザとセフィラはうつむいて黙りこくってしまう。
「なんだ、同情して俺を攻撃する気がなくなったのか? 責任取れとでもいうのか」
彼の皮肉めいた言葉に俺は1回息をのんで反論する
「いいや、それとこれとは別だ。貴様のやっていることは間違っている。何としてでも止める」
そりゃそうだ、いくら理由があったって無実の人達を苦しめるなんて許されるはずがない。 ましてや闇属性の魔術を使って街を恐怖に陥れるなんて間違っている。
「まあ、予想通りの答えだ。お前なら必ずその答えにたどり着くと分かっていた」
「何があったの? このノルアって子に──」
ルシフェルが深刻そうな表情で聞くと──。
「それは俺達が生まれた土地に関係している」
そしてハイドの説明が始める。話によると彼の生まれた場所は黒魔族の聖地のような場所で、母親が黒魔族に関する巫女のような仕事をしていた。
しかし弟が生まれる直前から魔王軍とそれに対抗する戦いが激化。黒魔術に長けたとして知られるこの街も、戦火が増し激戦区となった。
「両親は、お前達との戦いで戦死。故郷は二度と黒魔術が復活することがないよう徹底的に破壊され、住民は子供を覗いて全て処刑された」
そして問題になったのが──。
「俺達の黒魔術は、強大な力を持つ半面その術者には高い代償を支払わなければならない」
確かにそうだ。強い魔術や、闇の力を使った魔術は確かに強大だ。だが──。
「その張本人の両親は死んだんだよな。問題はその代償……、何となく理解したよ」
「ああ、話が分かる勇者で助かる。貴様の想像する通りだ」
そう、その代償として子孫の一人であるノルアに振りかかったのだ。
「その強い呪い。それによってノルアはずっと苦痛を浴び苦しんでいる。最近は意識すらほぼ失っている。悪化しているのじゃ」
「つまり、ハイドは弟のためにあんな真似をしているってことなのか?」
「その通りじゃ。唯一意識を取り戻したり、苦しみが和らいだそぶりを見せたのが人の魂のエネルギーを彼に注入した時。それを知ったとたんこやつは街に飛び出て魂狩りをはじめたという事じゃ」
その背後からの声に俺達は背筋を凍らせ声の方向に視線を送る。
ハイドは俺達に背を向け始め言い放つ。
「まさか俺などに同情するとは。俺には貴様の思考回路は理解不能だ」
「そうだ、その医師の言う事はすべて真実だ。嘘偽りはない」
「貴様に同情されたところで、俺の考えが変わることはないがな──」
「ノルアはたった一人の家族だ、俺の生きがいだ。絶対に取り戻すと誓っている」
その言葉から感じる、強い決意、信念。ゆるぎないものだということがよくわかる。
俺が魔王軍と戦う時、絶対にこの世界を守ると強く心に誓って戦っていたが、あの時の俺に近い。
ハイドがノルアの手を優しくそっと握ると再び出口へ向かっていく。
「俺はもうこの部屋を出る。面会時間は制限されていてもう時間だろう」
「ああ、これからこの子を見なければならんのじゃ。悪いがもう時間じゃ。退出してくれないかのう」
「そ、そうなんですか。失礼しました」
俺達は慌てて部屋を出る。部屋を出て扉を閉めると再びハイドと目を合わせる。
「とりあえずあいつのステータスを確認しよう──」
そして俺は解析魔法を使う。ハイドが見ている前で。どうせこいつほどの強さの奴は何度も解析されていていまさら自分のステータスが割れたところで何とも思わないだろう。
ランク S
HP 80
AT 115
DEF 120
魔法攻撃 105
魔法防御 115
速度 70
え~~と、Sランク??
ああ、確かこいつもSランクだったな。
「あいにくだか俺は貴様と同じ種族値をしている。今までと同じ事をしていてもお前に勝ちは薄いだろう」
「フッ──、気づかいありがとう」
確かにそうだ。今までの相手は俺より種族値が低い。
多少相手が奇襲をしかけたり弱点を突こうとしてもごり押しをして勝つということが出来たが今回はそうもいかない。
戦うとしたら手ごわい相手になる。そしてハイドが俺達を睨みつけてくる。
「俺は貴様たちと戦う趣味など無い──、だが戦うというのならば容赦はしない」
流石にここで戦うわけにはいかない。だが彼を野放しになんて出来ない
ハイドは俺達に背を向けこの場から去っていく。
「私達も帰りましょう。いつまでもここにいるわけにはいきません」
「ああ、そうだな」
セフィラとセリカの言葉通り、俺達はホテルに帰っていく。複雑な感情を胸の中にとどめながら──。
「何をしたの?」
ルシフェルの言葉に医者は平然と答える。
「人間の魔力をこのノルアに注入すると苦しみが治る反応を見せたのじゃ。そしてそれを手がかりに人間達の魔力を手当たり次第注入していたのじゃ」
他人の魔力って……、流石にまずいだろ。その人物にだって負担はかかるはずだし──。
一件聞くと無茶なやり方だと俺は考えた。しかしそれ以外に手立てがない、だからこのようなことをしているのだろう。
そしてルシフェルが一つの事実に気付き叫ぶ。
「じゃああんた、苦しんでいる弟の病気を治すために今まで人の魂を狩っていたっていうの?」
「御名答、そういうことだ。だが量がまだ足りない。もっと魂を狩らなければいけない」
ローザとセフィラはうつむいて黙りこくってしまう。
「なんだ、同情して俺を攻撃する気がなくなったのか? 責任取れとでもいうのか」
彼の皮肉めいた言葉に俺は1回息をのんで反論する
「いいや、それとこれとは別だ。貴様のやっていることは間違っている。何としてでも止める」
そりゃそうだ、いくら理由があったって無実の人達を苦しめるなんて許されるはずがない。 ましてや闇属性の魔術を使って街を恐怖に陥れるなんて間違っている。
「まあ、予想通りの答えだ。お前なら必ずその答えにたどり着くと分かっていた」
「何があったの? このノルアって子に──」
ルシフェルが深刻そうな表情で聞くと──。
「それは俺達が生まれた土地に関係している」
そしてハイドの説明が始める。話によると彼の生まれた場所は黒魔族の聖地のような場所で、母親が黒魔族に関する巫女のような仕事をしていた。
しかし弟が生まれる直前から魔王軍とそれに対抗する戦いが激化。黒魔術に長けたとして知られるこの街も、戦火が増し激戦区となった。
「両親は、お前達との戦いで戦死。故郷は二度と黒魔術が復活することがないよう徹底的に破壊され、住民は子供を覗いて全て処刑された」
そして問題になったのが──。
「俺達の黒魔術は、強大な力を持つ半面その術者には高い代償を支払わなければならない」
確かにそうだ。強い魔術や、闇の力を使った魔術は確かに強大だ。だが──。
「その張本人の両親は死んだんだよな。問題はその代償……、何となく理解したよ」
「ああ、話が分かる勇者で助かる。貴様の想像する通りだ」
そう、その代償として子孫の一人であるノルアに振りかかったのだ。
「その強い呪い。それによってノルアはずっと苦痛を浴び苦しんでいる。最近は意識すらほぼ失っている。悪化しているのじゃ」
「つまり、ハイドは弟のためにあんな真似をしているってことなのか?」
「その通りじゃ。唯一意識を取り戻したり、苦しみが和らいだそぶりを見せたのが人の魂のエネルギーを彼に注入した時。それを知ったとたんこやつは街に飛び出て魂狩りをはじめたという事じゃ」
その背後からの声に俺達は背筋を凍らせ声の方向に視線を送る。
ハイドは俺達に背を向け始め言い放つ。
「まさか俺などに同情するとは。俺には貴様の思考回路は理解不能だ」
「そうだ、その医師の言う事はすべて真実だ。嘘偽りはない」
「貴様に同情されたところで、俺の考えが変わることはないがな──」
「ノルアはたった一人の家族だ、俺の生きがいだ。絶対に取り戻すと誓っている」
その言葉から感じる、強い決意、信念。ゆるぎないものだということがよくわかる。
俺が魔王軍と戦う時、絶対にこの世界を守ると強く心に誓って戦っていたが、あの時の俺に近い。
ハイドがノルアの手を優しくそっと握ると再び出口へ向かっていく。
「俺はもうこの部屋を出る。面会時間は制限されていてもう時間だろう」
「ああ、これからこの子を見なければならんのじゃ。悪いがもう時間じゃ。退出してくれないかのう」
「そ、そうなんですか。失礼しました」
俺達は慌てて部屋を出る。部屋を出て扉を閉めると再びハイドと目を合わせる。
「とりあえずあいつのステータスを確認しよう──」
そして俺は解析魔法を使う。ハイドが見ている前で。どうせこいつほどの強さの奴は何度も解析されていていまさら自分のステータスが割れたところで何とも思わないだろう。
ランク S
HP 80
AT 115
DEF 120
魔法攻撃 105
魔法防御 115
速度 70
え~~と、Sランク??
ああ、確かこいつもSランクだったな。
「あいにくだか俺は貴様と同じ種族値をしている。今までと同じ事をしていてもお前に勝ちは薄いだろう」
「フッ──、気づかいありがとう」
確かにそうだ。今までの相手は俺より種族値が低い。
多少相手が奇襲をしかけたり弱点を突こうとしてもごり押しをして勝つということが出来たが今回はそうもいかない。
戦うとしたら手ごわい相手になる。そしてハイドが俺達を睨みつけてくる。
「俺は貴様たちと戦う趣味など無い──、だが戦うというのならば容赦はしない」
流石にここで戦うわけにはいかない。だが彼を野放しになんて出来ない
ハイドは俺達に背を向けこの場から去っていく。
「私達も帰りましょう。いつまでもここにいるわけにはいきません」
「ああ、そうだな」
セフィラとセリカの言葉通り、俺達はホテルに帰っていく。複雑な感情を胸の中にとどめながら──。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる