【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

文字の大きさ
66 / 103
パトラ編

第66話 元勇者、敵の資料をあさる

しおりを挟む
「よ、陽君……」

 再びローザの顔がほんのりと赤くなる。大丈夫、お前に危害は加えさせない。
 そう決意し、俺は再び視線をコーザに向ける。

「元勇者、侮れないやつめ──」

 コーザは深呼吸をして、落ち着きを取り戻そうとしてるが、明らかに動揺は収まっていない。

「こっちも、本気でいかせてもらうぞ!」

 そう叫ぶと、そこら中にちりばめられていた騎士たちが整然と隊列を組み始める。

 それも前方には剣や槍、後方には弓矢マスケット銃を持った騎士を配置している。
 少しは頭を使えるようだな。そしてその後方にはコーザが腕を組んで立っている。

「これが俺様の全力、冒険者100人に匹敵するその強大な力。倒せるものなら倒して見せろ!」

 ピッ──。

 そしてコーザが指をはじいた瞬間剣や槍を持った兵士たちが一斉に俺に突っ込んでくる。
 俺は最初に突っ込んできたやつの攻撃をかわしたが、そこへ狙いすましたかのように、銃弾が飛んでくる。

 剣の腹の部分で何とかそれを防ぐが、今度は着地のスキをついて槍を構えた騎士が突っ込んでくる。

 俺は右に飛んでギリギリでかわすと、大きく後退。

 ローザがそれに安心してもっと一息つく。必死に戦っているときは気づかなかったが、顔を隣り合わせにしているので、どうしても彼女を意識してしまう。

 そして優勢になったと思い込んだのか、コーザはニヤリと笑い挑発をしてくる。

「なんだ? 防戦一方ですねぇ。でもそれ、いつまで続きますかねぇ!」

「続くも何も、もう種はわかったし」

「ハァ?」

「だって、これだけ騎士の分身があっても、全部個別に操れるわけではないだろう?」

「あん?」

 コーザがピクリと体を動かし、眉間にしわを寄せる。

「今までの攻防でよくわかった。いくら操れるといっても完全に自由に動かせるのはせいぜい7.8体程度。後はワンパターンな動きしかできていない。それもせいぜい半分くらい。後はこっちに撃ってきたり、槍をついたり、単純作業しかしていない。違うか?」

「まあ、初見殺しや奇襲にはいいかもしれないけれど、わかればそこまで怖くはない。上の下くらいって感じかな。俺が戦ってきた強敵からすれば、1.2歩見劣りがしてしまうね」

 コーザの体は震え、顔は青ざめていた。
 図星だと、顔に書いているようなものだ。

「クソっ、クソっ。ぶっ殺す、ぶっ殺す──」

 そしてコーザは顔を真っ赤に仕出し今までにないくらいのトーンで感情を爆発させ叫ぶ。

「ゴミ野郎ォォォォォォォォォォォォ!! 八つ裂きにしてやるゥゥ──!」


 すると、前にいた騎士たちが一斉に俺に突っ込んでくる。だが俺はかわそうなんて考えなかった。イノシシのように突っ込んでくる騎士相手にただ剣を薙ぎ払う。

 それだけで、剣や槍を手に突っ込んできた騎士が5体ほど、スパッと切断される。


「悪あがきだな、そもそも1体1体は並程度の強さしかない。決まった動きしかできない人形なんだから」

 再び騎士が突っ込んできたが、結果は同じ。突っ込んだ騎士は、俺に接近した瞬間すべて切断され、消滅していった。

「さあ、じゃあ、早く終わらせようか!」

 その言葉と同時に、俺は騎士たちの中に突っ込んでいきく。

 俺の剣が舞うたびに、騎士たちが姿を減らしていく。

 時間にして2.3分ほど。100体あったはずの騎士たちを1匹残らず俺は切り落としたのだった。

「そ、そ、そんな馬鹿な──、お、俺の騎士たちが1匹残らず消滅するなど」

 その姿に呆然とするコーザ。そして俺が剣の先をこいつに向けるとコーザはショックで悲鳴を上げて尻もちをつく。

「お前の負けだコーザ」

「ま、ま、まだだ、まだ終わっていない!」

 そう叫んだ途端、コーザは尻尾を巻いて逃げ出してしまう。そして高い素早さを生かして一気に入り口に歩を進めるが──。

「行かせるわけないでしょう? おとなしく捕まりなさい」

 そしてその場所にはルシフェルの姿。

「お、女? なぜここに?」


 ルシフェルは思いっきり回し蹴りを見舞う。コーザにかわす手段はなく、攻撃を食らった後、壁に激突。そのまま彼は倒れて意識を失ってしまった。

「とりあえず縛っておきましょう」

 セフィラがポケットから縄を取り出し彼を縛る。ありがとう。

「ふう、これでとりあえず邪魔者はいなくなったか」

 そうだな、じゃあ、本来の目的のほうに入るか。

 奥にあるのは書物がたくさんある部屋。
 とりあえず資料のほうをあさり始めよう。

 その言葉通り俺たちは片っ端からあさり始めた。何か秘密があるといいなあ。

 とりあえずこの辺りはローザやセフィラたちがやっているみたいだし、俺はもっと奥へ行こう。

 さらに奥の方にある机へ、鍵がかかっていたが、剣を突き刺し、机ごと破壊。
 強引に机の引き出しを開け、中にある紙類に視線を送る。

 なんだこれは──。

 その中の1枚の紙に俺の心は奪われる。それはこの国の大まかな地図であるのだが。ただの地図ではない。

 この国が3つに色分けされていてその色ごとに、カイテルの名前。そしてかつて戦った魔王軍幹部、ガタノゾーアと、ハスターの名前とサインが記してあった。

 俺はそばで資料をあさっていたルシフェルの肩をたたいて聞いてみる。

「ルシフェル、この意味わかるか」

 ルシフェルはその地図から目をそらし質問に答え始める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...