72 / 103
パトラ編
第72話 元勇者、かつての仲間とご対面
しおりを挟む
魔力が切れたカイテルの心臓部分に何のためらいもなく突き刺した。
「ぐはっ。エミール様。なぜ……」
そしてそれと同時に、出現した魔獣たちが俺たちに向かって攻撃をし始める。
「な、なんで俺たちを襲って来るんだよ。俺たちは魔王軍に協力してきたのに!」
戸惑う冒険者たち。まあ、無理はない。こいつらは魔王軍に内通していて仮に攻めてきても攻撃されることはないと思っていたんだろう。
「ちょっと、こいつらに喝を入れてくるわ」
ルシフェルがあきれたような顔つきで俺の肩に手を置く。まあ、気持ちはわかる。
「敵からしたって、こいつは信用できない奴だ。まず魔王軍側の情報を握っているし、それでいて政府の人間とつながっているのでそこに情報が流れるということ。まずはそれだな」
「それもあるけど、もっと根本的な理由があるわ」
そしてルシフェルは冒険者たちに向かって思いっきり叫ぶ。
「あなたたち、話があるから聞きなさい。どうして魔獣たちがあなたたちを襲っているのか。敵だと認識しているのか」
「っているか助けてくれよ」
「んなの知らねぇよ」
予想もしなかった事態に困惑しながら戦う冒険者たちに、きりっとした表情でルシフェルが答える。
「あなたが自分の利益のためなら国だって裏切る存在、平気で無実の人々を傷つける存在、それらに対して何の罪悪感も持たない存在だからよ!!」
まあそうだな。目先のアメ欲しさに何でもする奴は、いつ裏切るかわからない。だからどこかで口封じに始末する必要がある。
魔王軍だって彼のようなやつは困るのだ。
事切れているカイテルの亡骸を見て冒険者たちは顔を真っ青にして言葉を失う。
そしてその亡骸を大型魔獣の1匹がつかみ口の中へ。
グシャグシャグシャ──、バキッ!!
自分の利益のためなら悪魔にでも魂を売り飛ばす奴にふさわしい末路だ。
俺の元の世界でこんな言葉があったのを思い出した。
強国に追従することは、強国に逆らうのと同じぐらい危険である。という言葉。
何となく意味がわかってきた。
さすがにあの魔獣たちやエミールを俺やルシフェル達だけで相手にするのは酷だ。この冒険者たちの協力が必要となる。
しょうがない、俺も一声かけるか。
「お前たち、カイテルと一緒に魔王軍と手を組んだ時。こう考えていなかったか? これで俺たちは大丈夫。たとえ世界が魔王軍の物になっても、自分たちは守ってくれるだろうとそんなのまやかしだ! 自分たちの故郷、守りたかったら──、自分たちの力で、死ぬ気で守れ!!」
冒険者たちは互いにきょろきょろと目を合わせる。そして──。
「行くぞ、俺たちの街は俺たちが守る」
「かかってこい! 全部倒してやる!」
ちょっとは目が覚めたようだな。
そして再び視線をエミールに向ける。
「俺が冒険者たちに檄を飛ばしている間、反撃してこなかったな」
あの時間は俺にとって大きなスキだった。それなのに全く反撃をせず腕を組んでみているだけ。
「お前たち全員を始末するのも、お前を倒してから取り巻き達を倒すのも、そんなに変わんねぇしな」
自分が最強だと信じて疑わない。この自信過剰とも取れる態度。こいつ、全く変わっていないな。
「まあ、どうして魔王軍に寝返ったかはあえて聞かないでおく、言っても変わらないだろうしな」
「話が分かるねぇ。どっちが強いか、戦って決めようじゃないか」
こいつに何があったかは分からない。けど、共に戦った仲、互いに全力を出し切ればわかることだってある。
行くぞ!!
そして俺とエミールの戦いが始まる。
一方ルシフェル達。
俺とエミールの戦いが始まろうとしているころ。ルシフェルたちも魔獣たちと戦いを始めていた。
「全く、魔王軍と組むなんてどういう神経しているのかしら!」
ルシフェルがぶつくさと愚痴を漏らしながら魔獣たちを次々と倒していく。
「とりあえず、この辺りは片付きましたね」
すると、斧を持った一人の冒険者がルシフェルに話しかける。
「あんた強いねぇ」
「ありがとうね。それで要件は何?」
「あっちに強い魔獣がいて、みんな冒険者たちがやられちまってるんだ。悪いけど協力してくれないかな?」
「わかったわ。今すぐその場所を案内して!」
そして冒険者の後ろをルシフェル、ローザ、セフィラがついていく。
その先の場所は、この街の郊外。緑の草原に牧場と、それを管理する家がある場所だ。
冒険者は左の方向を、警戒した表情で指さす。
「あれだよ。みんなあの魔獣にやられちまっているんだ」
指さす方にいる魔獣にルシフェルは驚く。
「えっ? あれが強い魔獣なんですか?」
「あれ、牛さんですよね……」
ローザの言う通り、そこにいる魔獣らしき姿の動物。それはピンク色の牛だ。そしてルシフェルがその牛をにらみつけながら話し始めた。
「あれは牛型の魔獣『カローヴァ』よ。見たことはあるわ。確か種族値はこんな感じになっているわ……」
ランク C
HP 101
物理攻撃 92
物理防御 99
魔法攻撃 20
魔法防御 78
速度 100
「そこそこの耐久に攻撃。魔法攻撃は、あの数値からして使ってこないですね」
「そうよ。主に物理攻撃を使ってくるわ」
「え? あんな身体付きでS100? 早くないか──。しかもそれだけでなく他の能力値もそれなりに高い。特に耐久」
冒険者も、その種族値の高さに驚く。すると、ルシフェルがローザとセフィラの服のすそをつかみ、戦場へと引っ張って行った。
そして戦場へ。
「ぐはっ。エミール様。なぜ……」
そしてそれと同時に、出現した魔獣たちが俺たちに向かって攻撃をし始める。
「な、なんで俺たちを襲って来るんだよ。俺たちは魔王軍に協力してきたのに!」
戸惑う冒険者たち。まあ、無理はない。こいつらは魔王軍に内通していて仮に攻めてきても攻撃されることはないと思っていたんだろう。
「ちょっと、こいつらに喝を入れてくるわ」
ルシフェルがあきれたような顔つきで俺の肩に手を置く。まあ、気持ちはわかる。
「敵からしたって、こいつは信用できない奴だ。まず魔王軍側の情報を握っているし、それでいて政府の人間とつながっているのでそこに情報が流れるということ。まずはそれだな」
「それもあるけど、もっと根本的な理由があるわ」
そしてルシフェルは冒険者たちに向かって思いっきり叫ぶ。
「あなたたち、話があるから聞きなさい。どうして魔獣たちがあなたたちを襲っているのか。敵だと認識しているのか」
「っているか助けてくれよ」
「んなの知らねぇよ」
予想もしなかった事態に困惑しながら戦う冒険者たちに、きりっとした表情でルシフェルが答える。
「あなたが自分の利益のためなら国だって裏切る存在、平気で無実の人々を傷つける存在、それらに対して何の罪悪感も持たない存在だからよ!!」
まあそうだな。目先のアメ欲しさに何でもする奴は、いつ裏切るかわからない。だからどこかで口封じに始末する必要がある。
魔王軍だって彼のようなやつは困るのだ。
事切れているカイテルの亡骸を見て冒険者たちは顔を真っ青にして言葉を失う。
そしてその亡骸を大型魔獣の1匹がつかみ口の中へ。
グシャグシャグシャ──、バキッ!!
自分の利益のためなら悪魔にでも魂を売り飛ばす奴にふさわしい末路だ。
俺の元の世界でこんな言葉があったのを思い出した。
強国に追従することは、強国に逆らうのと同じぐらい危険である。という言葉。
何となく意味がわかってきた。
さすがにあの魔獣たちやエミールを俺やルシフェル達だけで相手にするのは酷だ。この冒険者たちの協力が必要となる。
しょうがない、俺も一声かけるか。
「お前たち、カイテルと一緒に魔王軍と手を組んだ時。こう考えていなかったか? これで俺たちは大丈夫。たとえ世界が魔王軍の物になっても、自分たちは守ってくれるだろうとそんなのまやかしだ! 自分たちの故郷、守りたかったら──、自分たちの力で、死ぬ気で守れ!!」
冒険者たちは互いにきょろきょろと目を合わせる。そして──。
「行くぞ、俺たちの街は俺たちが守る」
「かかってこい! 全部倒してやる!」
ちょっとは目が覚めたようだな。
そして再び視線をエミールに向ける。
「俺が冒険者たちに檄を飛ばしている間、反撃してこなかったな」
あの時間は俺にとって大きなスキだった。それなのに全く反撃をせず腕を組んでみているだけ。
「お前たち全員を始末するのも、お前を倒してから取り巻き達を倒すのも、そんなに変わんねぇしな」
自分が最強だと信じて疑わない。この自信過剰とも取れる態度。こいつ、全く変わっていないな。
「まあ、どうして魔王軍に寝返ったかはあえて聞かないでおく、言っても変わらないだろうしな」
「話が分かるねぇ。どっちが強いか、戦って決めようじゃないか」
こいつに何があったかは分からない。けど、共に戦った仲、互いに全力を出し切ればわかることだってある。
行くぞ!!
そして俺とエミールの戦いが始まる。
一方ルシフェル達。
俺とエミールの戦いが始まろうとしているころ。ルシフェルたちも魔獣たちと戦いを始めていた。
「全く、魔王軍と組むなんてどういう神経しているのかしら!」
ルシフェルがぶつくさと愚痴を漏らしながら魔獣たちを次々と倒していく。
「とりあえず、この辺りは片付きましたね」
すると、斧を持った一人の冒険者がルシフェルに話しかける。
「あんた強いねぇ」
「ありがとうね。それで要件は何?」
「あっちに強い魔獣がいて、みんな冒険者たちがやられちまってるんだ。悪いけど協力してくれないかな?」
「わかったわ。今すぐその場所を案内して!」
そして冒険者の後ろをルシフェル、ローザ、セフィラがついていく。
その先の場所は、この街の郊外。緑の草原に牧場と、それを管理する家がある場所だ。
冒険者は左の方向を、警戒した表情で指さす。
「あれだよ。みんなあの魔獣にやられちまっているんだ」
指さす方にいる魔獣にルシフェルは驚く。
「えっ? あれが強い魔獣なんですか?」
「あれ、牛さんですよね……」
ローザの言う通り、そこにいる魔獣らしき姿の動物。それはピンク色の牛だ。そしてルシフェルがその牛をにらみつけながら話し始めた。
「あれは牛型の魔獣『カローヴァ』よ。見たことはあるわ。確か種族値はこんな感じになっているわ……」
ランク C
HP 101
物理攻撃 92
物理防御 99
魔法攻撃 20
魔法防御 78
速度 100
「そこそこの耐久に攻撃。魔法攻撃は、あの数値からして使ってこないですね」
「そうよ。主に物理攻撃を使ってくるわ」
「え? あんな身体付きでS100? 早くないか──。しかもそれだけでなく他の能力値もそれなりに高い。特に耐久」
冒険者も、その種族値の高さに驚く。すると、ルシフェルがローザとセフィラの服のすそをつかみ、戦場へと引っ張って行った。
そして戦場へ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる