【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

文字の大きさ
74 / 103
パトラ編

第74話 元勇者 エミールの姿に愕然とする

しおりを挟む
「今よ、セフィラ!」

「はい!」

 待ってましたと言わんばかりにカローヴァの左側に移動していたルシフェルは対角線にいるセフィラに向かって叫ぶ。

 2人はここで勝負を決めるといわんばかりに飛び上がった。
 右からはルシフェルが、左からはセフィラが一気に切りかかる。


 2人は全力を込めてカローヴァの体を切り刻む。
 空中でよけようがないため、その攻撃が直撃。大ダメージを受けながら地面に落下。

「ローザ、とどめよ!」

 そしてローザとルシフェルは、勝負を決めるためとどめの一撃を繰り出そうとする。


 虹色に輝く閃光よ、怒りの逆鱗巻き上げ、革命の力今降臨せよ!!

<闇、電気、水、氷、炎、大地、風属性 レインボー・オーバー・エアレイド!!>


 輝きの閃光よ、裁きの力となりて、強大な となれ

<エターナル・シャイニング!>


 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 2人の渾身の術式がカローヴァに直撃

 周囲が粉塵で見えなくなる。そして、数十秒もすると粉塵は消えていき、カローヴァの姿が見えるようになっていく。

「モ、モ、モ、ンモ~~」

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。


 そこには、ぐったりと倒れこんだカローヴァから魔力が消えていく姿。これで勝負は決まった。

「やった……。私たち、勝った──です」

 ローザに笑みがこぼれ始める。するとそこにセフィラとルシフェルがやってくる。
 ルシフェルは大技を使い、斬撃でも魔力を消費し、さすがに疲れが見えている。

「ローザ、セフィラ、ありがとう」

 ルシフェルは喜びのあまり、ローザ、セフィラとハイタッチをする。

「そ、そんなことないです。2人のおかげです」

「そ、そうですよ。特にルシフェルさん。近距離攻撃に、必殺技まで、体とか、大丈夫ですか?」

「まあ、ちょっとふらふらするけど、大丈夫よ……」

 勝利の余韻に浸っている3人は再びカローヴァに視線を移す。すると、倒れていたカローヴァは座り込み始めた。そして……。

「モ~~、モ~~、モォォォォォォォォォォォン!!!!」

 なんと牛は延々と泣き始めたのだ。額に右手を当てながらルシフェルがささやく。

「この子の特徴なの。一度負けると、大声で泣き続ける習性があるの。」

 とにかく声が大きくうるさい。ほかの冒険者たちも、あまりの轟音に耳をふさいでいるのがわかる。

 鳴き声がこのあたり一帯に響き渡り、セフィラとローザは思わず耳を塞いでしまう。

 そして周囲をじたばたしていると、彼の肉体が徐々に透明になっていくのがわかる。ルシフェルがふっと微笑を浮かべながら一言。

「お別れみたいね──」

 そして今までの魔獣のようにカローヴァが消滅していく。カローヴァここを離れるのを拒んでいるかのようにじたばたをしたまま。

 そんな姿を見ながら、安堵の表情でセフィラがささやく。

「とりあえず、こっちは一件落着ですね」

「そうね、セフィラ。あとは陽君だけよ」

「で、でも、陽君だったら、負けないです。絶対勝つです!」

 強気な表情でご部白握る。しかし、ルシフェルは不安そうに遠くを見つめながら。

「──だといいけどね。私も信じるわ」

 セミロングの黒髪をたくし上げ、空を見ながら、ルシフェルは俺の心配をする。

(陽君。絶対に勝って──)



 そして、時は少しだけさかのぼり──。

 その姿に俺は唖然とした。

 腰くらいまでかかった赤髪でポニーテールの長い髪。

 右目は赤、左目は緑色をしたオットアイズと呼ばれる瞳の少女。
 かつて魔王軍と戦った戦友ともいえる存在。


「まさか、こんな形で再開するとはな」

「ああ、俺も信じられないくらいだ」


 エミール・キャロル。かつて、俺と一緒に魔王軍と激闘を繰り広げた戦友。
 強さも、今まで戦ってきた雑魚敵や、種族値だけにかまっていた数字だけの奴とは違う。

 まずはこいつの種族値がこれだ。

 ランク A
 HP 75
 物理攻撃 110
 物理防御 80
 魔法攻撃 110
 魔法防御 90
 速度 115

 強すぎる。俺よりも早い素早さ。物理攻撃も魔法攻撃も高い2刀流。おまけに耐久もそれなりに高い。

「まさか、こんな形で再開するとは思ってもいなかったよ」

 彼女の威圧感に、思わず引いてしまいそうになる。しかし、勇気を出してその場にとどまり、会話を続ける。

「俺は、覚悟していたよ。こうして魔王軍になった時から──。お前と戦うのをな」

 いつものエミールは、一言でいえば少年漫画の主人公のような存在だった。

 ひたむきで、明るくて、まっすぐで、無鉄砲。よく笑っていて、自信家だった。
 しかし、今の彼女からは感じる。悲壮感のようなものを……。

「俺は、できればお前と戦いたくなんかない。今すぐ撤退してくれないか?」

「おいおい、何かの冗談か? 槍を向かている相手に、今更敵意を問うのかよ」

 だろうな。こいつは、一時期の感情で悪いことをする奴じゃない。よほど思い詰めている事情があるのだろう。

 俺がどう叫んだところで、彼女の姿勢は変わりはしないだろう。だったら、俺がとるべき行動は、一つしかない。

「魔王を打ち倒した後、お前にどんな事情があったか俺は知らない。けれど、お前が強い思いで今、こうした戦っていることは理解できる」

「まあ、俺とお前の中だ。変な説教をしてこない分、話が早くて助かるぜ」

「ああ、無駄だとわかっているからな。戦ってお前をねじ伏せる以外、解決するしかない。さあ、行くぞ!」

 やることは1つだけ。全力で戦って、こいつに勝つ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...