【完結】~追放された「元勇者」がゆく2度目の異世界物語~ 素早さ102、600族、Sランクで再び無双するようです

静内燕

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最終章 建国祭編

第84話 元勇者 デートを終えて

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俺の言葉を信じていないのは表情でわかる。まあ、見てなって──。
 結果発表。受付のお姉さんが、壇上で叫ぶ。

「優勝は、最後にアピールを行ったセフィラさんでーす」

「え! 私が──、ドッキリかなにかですか?」

 その言葉を信じ切れず、動揺しているセフィラ。俺はセフィラの前に立ち、両手をぎゅっと握る。

「そんなことないよ、純粋なセフィラの魅力だよ。しょうこに、周囲の声を聴いてみ?」

「やっぱり、セフィラちゃんよね。私も一票入れたわ」
「だよなー。嫁にしたいくらいのかわいさだったぜ」

「うう……」

 その言葉に、認めざるを得ないのだろう。自分の魅力を。

「じゃあ、表彰の方、行ってきなよ」

「──わかりました」

 そしてセフィラは壇上に上がり賞金の金貨と表彰状を受け取る。
 観客席に目を抜け、ぺこりとお辞儀をすると、観客たちから盛大な拍手と歓声を受ける。

「優勝おめでとう。セフィラちゃん!」

「よかったら俺と付き合ってくれないか??」

 何か余計な声が聞こえた気がするが。

 それから俺たちは金庫に金貨と表彰状を置いてから海へ。

 海の底がよく見えるほど綺麗な海に腰までつかる。

「優勝おめでとう。これがセフィラの純粋で、素敵な人だって証拠だよ。とっても素敵な人だと思う。理解できた? もっと自信持ってほしいんだよ。自分のことを。セフィラ、いっつも謙遜ばっかりしてるからさ──」

「そ、そうですか……。ありがとうございます。私、もっと自分に自信を持ってみます!」

 顔が真っ赤にしながらセフィラはそう話す。少し、表情が明るくなったようにも思える。これから、自分に自信が持てるようになるといいね。

「俺なんかと違ってセフィラキレイだし。素敵な人とか、できると思うよ」

「え? 陽平さん、本当に恋愛とかしたことないんですか?」

 その言葉に俺はズキッと心の中に衝撃を受ける。

「俺は……、異性と交際したことはない。」

「え? 普通の年頃の人って異性と交際したりするんですよね。ましてや陽平さんは世界を救いになった勇者。ですよね。異性という観点ならかなり選びたい放題になれますよね。極端な話、女の子いっぱいのハーレム状態とかもできなくはないと思います」

「ハーレムねぇ~~。聞き心地はいいかもしれないけど、実際にあったら地獄だと思うぞ。
 俺は、勇者になるまで、異性とは無縁の生活を送っていて、どう接していいかいまだによくわからないんだ。
 非常時ならまだしも、女の子と日常会話をするって聞いただけで気が重くなる。絶対黙りこくって気まずい雰囲気になって、陰キャとかコミュ障とか陰でボロクソに言われるにきまってる。そんなふうにどうしても考えてしまうんだよ!」

 普通の年頃。確かに普通ならそうかもしれない。けど、俺は普通の年頃じゃないんだ。

「お、俺はなんて灰色の青春を送っていたんだ……」

 俺は涙目になりながら囁く。するとセフィラがオドオドとしながら慰めてきた。

「だ、だ、だ、大丈夫ですよ。 陽平さんを受け入れてくれる人だって絶対にいますから」

 セフィラ、ありがとう。俺、何か勇気が出た。

「セ、セフィラ、ありがとう」

「それに私は知っていますから。陽平さん。確かに異性という観点では物足りなさを感じていますけど、正義感が強くて、どんな時も他人への思いやりがあって、いい人だって、陽平さんと旅ができて、本当に良かったって本当に思ってますから。だから、そこまで自分を卑下するのはやめてください!」

 セフィラが必死になって俺をなだめてくれるのがわかる。本当にありがとう。これからは、自信を持って行動するよ。

 それからも俺たちは海で遊んだ。たまにセフィラがナンパされたり、楽しいこともあった。
 そして夕方──。

「そろそろ、ホテルに帰りましょう」

「──そうだな」

 海に沈む夕焼けを見ながら俺は考えた。

 セフィラ、いつもローザの傍らにいる物静かな子だった。
 お前は決して地味なんかじゃない。
 もっと自信が持てるようになるといいな。


 そんなことを考えながら、俺たちはホテルへと帰っていった。





 夜は、みんなで外に出て出店の屋台をごちそうになる。

 ナンや、ゲバブなど、見たことない異国の料理をおいしくいただいた。
 その中でルシフェルがセフィラに話しかける。

「セフィラちゃん。今日のデートはどうだった?」

「どうだった。というと?」

「陽君、全然しゃべってないとか、場所選びのセンスがないとか、変なことしてきたとか、不満に思ったこと、正直に答えていいのよ」

 まて、前2つはわかるが、最後は何だ最後は。そんなことしないよ。

「そ、そ、そんなことはないです。ちょっと、不器用とは感じましたが、親切でしたし、とても楽しかったです」

 セフィラがあわあわとしながら答える。とりあえず、濡れ衣は着せられなくて。

「そうね。セフィラの言葉、信じることにするわ」

 そしてルシフェルはドリンクを口にする。すると、ローザが手に持っているパンを皿に置くと、話に加わってくる。

「そういえば、明日は警備の日です。うまくいけるといいですね」

「そうだな」

「ええ。平和に建国祭をみんなが過ごせるように頑張りましょう」

 そう、明日は警備の担当日。先日のエミールのこともあり、何があってもおかしくはない。けど、力を合わせて頑張ろう。


 そして俺たちは食事を終わらせ、ホテルへ帰る。
 建国祭の警備、大変なこともあるだろうけど、頑張ろう。
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