オーパーツ鑑定士の成り上がり 追放された最弱鑑定士、実は最強の魔力を持つ『超古代魔法』の鑑定士だった

静内燕

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44話 ラブラブだー!

 ピンクの瓶を押し付けてくる。さらに、「このシルクの紐、夜のお楽しみ用だ!」とウインク。俺は顔が真っ赤になり、手を振る。

「い、いらない! そんなの、必要ない!」

 エミリは目を丸くし、毛耳をピクピクさせて笑い出す。
「ぷっ、マスター、めっちゃ焦ってるっす!」

 男はさらに畳み掛ける。

「おっと、これはどうだ? 恋の呪文が刻まれたアミュレット! 装着すれば美女が寄ってくるぞ!」

 怪しい輝きの首飾りを振りかざす。僕は後ずさり、叫ぶ。

「い、いらないって! やめろ!」
「カップル割引だ! 二人の愛を熱くするぞ!」

 エミリは腹を抱えて笑っていた。
「マスター、顔真っ赤っす! でも、こういうの嫌いじゃないっすよ!」

 からかっているみたい。僕の耳まで熱くなり、ついエミリの手を引っ張って路地を逃げ出す。
「もう、変な店に入るなよ!」
「マスター、逃げ足速いっすね! でも実は、後でこっそり買ってうちを虜にしたりして」
「ないから」
 エミリの明るい笑顔があまりに無邪気で、俺の困惑もどこか楽しさに変わる。噴水公園に戻ると、虹色の水しぶきが陽光に輝く。
 繁華街の喧騒を抜け、石畳の通りを歩いていた。陽光が輝き、露店の果実の甘酸っぱい香りや焼き菓子の香ばしさが漂う。馬車の車輪が軽快に響き、冒険者たちの笑い声や子供たちの風車がくるくる回る音が街を生き生きと彩る。

 エミリの手には雑貨屋で買った星形のペンダントが揺れていた。彼女の白いブラウスと革のショートスカート、毛耳を飾る赤いリボンが陽光に映え、無邪気な笑顔が僕の胸をざわつかせる。女慣れしていない僕にとって、こんな賑やかな街でエミリと歩くのは、ダンジョンの試練より緊張する。

「マスター、さっきの秘薬の店、めっちゃ笑ったっす! あのオジサン、めっちゃしつこかったっすよね!」
 エミリがパフェのスプーンを振って笑う。毛耳がピクピク動き、琥珀色の瞳がキラキラ輝く。

「やっは、マスター、女慣れしてないっすね! 顔、真っ赤だったっすよ!」
「う、うるさい! エミリだって笑いすぎだろ!」
 彼女の「っす」が通りを弾け、僕の耳が熱くなる反撃するが、彼女のニヤリとした笑顔に言葉が詰まる。女の子とのデートって、こんなに心臓に悪いものなのか?

 路地裏に差し掛かった時、すすり泣く声が聞こえた。細い路地の隅で、うさみみを模した帽子をかぶった小さな男の子が膝を抱えて泣いている。ふわふわの白いうさみみが揺れ、麻のシャツに小さな埃が付いている。

「うわっ、子猫みたいっす!」
「…よし、行ってみよう」
 エミリが声を上げ、俺の袖を引っ張る。一瞬戸惑うが、リーダーとしての責任感が背中を押す。女の子と話すのは苦手でも、子供なら…たぶん、大丈夫だ。俺たちは男の子の前に屈み、目線を合わせる。
「どうしたの? 迷子?」

 声は少し硬いが、優しくしようと努める。エミリが毛耳をピクピクさせ、笑顔で言う。

「ね、泣かないでっす! エミリとマスターが、絶対お家まで送るっすよ!」
「お、お母さんとお父さんが…市場でいなくなっちゃって…」

 男の子は涙で濡れた目を擦り小さな声で言う。エミリが手を差し出した。
「大丈夫っす! あたしたち、超強い冒険者っす! すぐ見つけるっす!」

 エミリの明るさに、男の子は少し笑顔を見せる。僕はエミリの自然な優しさに感心した。、「ああ、僕たちに任せろ。名前は?」
「…リノ、です。」

 男の子がうさみみを揺らしながら答える。僕とエミリは顔を見合わせ、頷く。リノの手を引き、市場の賑わいへ戻る。露店の間を縫い、果物売りの呼び声や魔法具店の光る看板を横目に歩く。
「リノのママ、どんな人っすか?」

「青いスカーフしてる!」

 周囲を見渡す。

「青いスカーフ、か……エミリの目、頼りにしてるよ」
「任せるっす! エミリの目はバッチリっす!」

 エミリは毛耳を立て胸を張る。市場を歩き回り、呼び声を上げながら探す。エミリの軽快な声とリノのうさみみが揺れる姿に、通りすがりの冒険者たちが微笑む。しばらくして、果物売りの露店近くで青いスカーフの女性と革鎧の男性が慌てた様子で立っていた。
 女性が叫び、駆け寄る。
「リノ!」
「ママ! パパ!」

 リノが飛びつき、抱き合う。両親が僕たちに頭を下げた。

「本当にありがとう! カップルさんのおかげで助かったよ!」
「か、カップルじゃない!」

 慌てて否定するが、エミリも毛耳をピクピクさせて頬を赤らめる。すると、両親の後ろから二人の子供が飛び出し、囃し立ててきた。
「カップルだー!」
「ラブラブだー!」
「ち、違うっすよ! ただのパーティーっす!」
 エミリ叫ぶが、子供たちは「ラブラブー!」と笑いながら走り回る。俺の顔が熱くなり、視線を逸らす。
「子供って……」
「マスター、めっちゃ赤いっす!」

 エミリはニヤニヤ。僕の心臓はもう限界。

 リノの両親と別れてエミリと市場を後にする。歩き疲れた足に、街の喧騒が心地よい重さを加える。

「マスター、疲れたっすね。なんか美味しいもの食べたいっす!」
 エミリが毛耳を揺らし、言う。僕も腹が減っていることに気づき、通り沿いの看板に目が留まる。
「星彩のカフェ」
 ――ガラス窓から漏れる暖かな光、木のテーブルに並ぶ色とりどりのスイーツが目に入る。「ここ、いいか?」
「めっちゃおしゃれっす! 行くっす!」

 エミリが目を輝かせる。カフェに入ると、ローストハーブの香りと焼き立てのパンの甘い匂いが漂う。壁には星形の装飾が施され、窓辺には花瓶に活けられた青い花が揺れる。僕たちは窓際の席に座り、エミリがメニューを覗き込む。

「うわ、チョコレートケーキ! ハーブティー! ぜんぶ美味そうっす!」

 エミリの毛耳が興奮でピクピク動く。
「君、なんでも美味しそうに見えるだろ」
 苦笑してつぶやく。注文したのはチョコレートケーキとハーブティーのセット。ケーキには星形の砂糖菓子が飾られ、ティーは淡い緑色に輝く。
「んー! めっちゃ濃厚っす! マスター、食べてみるっす!」

 エミリが一口食べ、スプーンを差し出す。

「じ、自分で食べるよ!」

 僕は顔を赤らめ、慌てて言う。彼女はケラケラ笑った。


「マスター、ほんと照れ屋っす!」
「まあ、こんなことされたらね。ちょっと恥ずかしいよ。けど気持ちは受け取っておくよ」

「マジっすか!? マスターの褒め言葉、めっちゃ嬉しいっす!」と笑う。カフェの暖かな光の中、エミリの笑顔がやけに眩しい。女慣れしていない僕でも、この時間が悪くないと思えた。窓の外、街の喧騒が夕暮れに染まる。

 カフェから出て噴水公園に戻ると、虹色の水しぶきが陽光に輝く。

「マスター、今日、めっちゃ楽しかったっす! マスターと一緒なら、クエストもデートも、最高っす! また行くっすよね?」

 毛耳が揺れ、キラキラした目が僕を射る。僕は顔をそらし、「パ、パーティーの絆のため、だからな…でも、まあ、悪くない。」と誤魔化す。彼女の「ふふ、マスター、照れ屋っす!」

「また、こんな楽しい一日を過ごしてみたいっす」

「ありがとう、そうってくれると、こっちもうれしいよ」

 エミリの、満面の笑み。それを見て、今日一緒にいて良かったって思える。
 またいつか、こんな日々を過ごしてみたいな。

「マスター。不器用だけど、一生懸命だったっす。うちのために、尽してくれたことが、とっても嬉しかったっす」

 こっちもエミリと一緒にいて本当に良かった。これからもよろしくね、エミリ。

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