国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが 

静内燕

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最終章

第139話 本当の、最後の敵

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 この場が一気にざわめきだした。

「何だよ」

「勝ったんじゃないの?」

 おろおろとする冒険者たち。しかし、こっちが準備するのを待ってくれるとは思えない。
 すぐに戦闘モードに入ると、ウィンが俺の前に立つ。

 そして──。

 シュゥゥゥゥゥ──ボォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!

「ウィン!」

「うああああああああああああああああ!!」

 いきなり。空が大爆発し始める。ウィンは、気配からすぐに気づいたのだろう。
 大きな声を叫んで、赤く光る盾を出現させた。

 爆発の衝撃が、俺たちを襲い始めた。すぐに、ウィンが出現させた盾に衝突。

 何とか、直撃は免れた。しかし、爆発の威力はすさまじくウィンの障壁が絶えあれそうにない。
 耐えきれず、少しずつひびが入っていく。

「絶対に、耐えて見せます!」

 ウィンは苦しそうに囁く。
 そして──。


「何とか、防ぎました」

 ウィンの障壁は、今にも崩壊しそうなくらいヒビだらけになりながらも、俺たちを守り切ってくれた。
「ありがとう、ウィン」

「ありがとう、ございます……」

 ウィンも、相当消費している。おそらく、爆発の原因のやつとの戦いが待ってる。大丈夫なのだろうか。

 キョロキョロと、周囲の状況を確認。

 他は、耐えきれなかったようだ。ボロボロになって、倒れ込んでいる冒険者の数々。

 そして──。

「ニナ、エリア、ビッツ」

 3人の姿と、後ろから見ていた姿に衝撃を受けた。

 3人とも、ボロボロの姿になって後方に吹き飛ばされていた。魔力は──尽きているようだ。
 生きてはいるが、もうこの戦闘に加わることはできないだろう。

「センパイ、みんなは──守り切りました。あとは、よろしくお願いします」

 ニナの、ボロボロになりながらの声に思わず叫ぶ。

「みんな──周囲を守ろうとして」

「まあ、みんな仲間だからねぇ。守らないわけにはいかないでしょ」

 エリアも、ボロボロの姿になっていて笑顔を作って親指を立てる。

 確かに、エリアの言葉は間違っていない。3人が攻撃を防ぎきれず、ボロボロになった理由はしっかりとわかっている。
 防御結界を出現させ、後ろにいる冒険者たちを守ろうとしたのだ。

 攻撃を完全に防ぐことはできなかった。ボロボロで、戦える状況ではなさそう。
 しかし、3人のおかげで攻撃がかなり軽減され、後ろの人達は直撃を免れ、致命傷にならなかった。

 3人が守らなければ、冒険者たちの大部分が犠牲になっていただろう。彼らだって、大切な仲間を守るために手を尽くしていたのだ。

 倒れ込んでいたビッツが、半ば体を起こして話しかけてくる。

「つうことで、悔しいがこの場で戦えるのはお前とウィンの2人だけ」

「愛情パワーで、あんな奴らやっつけちゃってよ!」

「センパイなら出来るって、信じてますから……」

 そして、エリアとニナ。
 3人の言葉を受け取って、ウィンに視線を送る。

 コクリと、ウィンは頷く。

「みんな分まで、頑張りましょう!」


 強気な表情。強い覚悟を持ったというのが、はっきりと理解できる。
 残りは、俺とウィンだけ……。

「お前は、アッカルド──それとカルシナ」

 敵の正体が、はっきりと理解できた。
 まず右にいるのは、アッカルド。

 以前魔王軍とつながりがあると噂され、俺はウィンと一緒に潜入調査をした。
 そして、証拠をつかんでそれを国王のソルトーンに渡した。

 ソルトーンに証拠を渡すと、彼はアッカルドを呼びつけた後、彼を国家反逆罪としてこの国から追放した。
 その後、アッカルドは姿を消し見ていなかった。

 ソルトーンもアッカルドの今後を考え動向を探っていたが何も見つからなかった、消息を絶ったとしか言えなくなったらしい。

 そして、もう一人はカルシナ。

「ガルド──お前たちを俺は絶対に許さない」

 まずはソルトーン、にやりとした笑みの中には、俺達への憎しみや恨みを持っているのがわかる。
 そして、得体のしれない力の気配を感じる。

「お前のせいで、俺の人生はめちゃくちゃだ──この恨み、晴らさせてもらうぜ!」

 そして、左にいるのがカルシナ。以前より人相が悪くなって、無精ひげをだいぶ蓄えているのがわかる。

 以前、街工場を経営していて魔王軍のやつと手を組んでいたやつだ。
 あれ以降、悪評がたって工場はソルトーンの判断で閉鎖となった。

 こいつも、裏切り行為が国中に広がり、居場所をなくしていたため消息は不明だったのは聞いている。

 そして、舌打ちをしてから俺の方をにらみつけてくる。

「俺たちの立場を奪って行ったお前たちを、絶対に許さない」

「逆恨みじゃないか」

 毅然と言い返す。当然だ、確かに同情できる部分はあるが、あくまで原因を作ったのは自分たちなのだから。

 アッカルドが、舌をなめずりして会話を続ける。

「見捨てられた俺たちに、ヒュドラ様は力をくれたんだ。俺達に味方する代わりに、力になってくれってよ。な、カルシナ」

「そうさ! ほかに頼れるものがない俺たちは──当然すがった。最後の望みなんだもんな」

 確かに、強い力に惹かれるのはわかる。それでも、俺は叫ぶ。

「まずい。そんな力を使うな。今すぐ捨てろ!」

「うるせぇ! 俺たちに勝てないからって、命乞いしてるんじゃねぇよ!」

 アッカルドは全く耳を貸さない。

「どういうことですか?」

 ウィンがきょとんとして質問してくる。

「簡単に言うと、代償があるんだ。だから、止めなきゃ」

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