悪役令息アルフレッドのため息〜断罪処刑を絶対回避して平和な未来を手にいれるぞ!〜

コロン

文字の大きさ
7 / 9

7. 王子と主人公と悪役令息

しおりを挟む
 「あーん、アルフレッドこれも食べるんだよ。」

 「うむむ、美味しいです。セドリック様。もぐもぐ‥‥」

 「たくさん食べるんだよ。ふふふ、食べてる姿も可愛いな‥‥」


 ランチの鶏肉のグリルと野菜のソテーを、王子自ら切り分けて、口に運んでくれている。

 学園の食堂の、いつもの光景である。

 が、慣れない!

 こんなのいつまで経っても、慣れる訳ないじゃ無いか!

 むむむ‥‥嬉しいけど、照れ臭いんだよ。

 周りの生徒たちの、何だか生暖かい視線も気になるし‥

 雛鳥に餌付けしてる感覚なのか?

 
 そんな事を思いつつ、いつも王子にされるがままになっちゃうんだけどね‥‥



 そんなかんやで、王太子の婚約者という肩書き以外、全く地味な僕の学園生活は、順調に過ごせていたのだが‥‥


 とうとうやってきたのだ!


 そう、主人公が転入してくるこの時がね。

 僕の今後の運命を大きく左右する彼が、とうとう学園にやって来たのだった。


 彼、主人公であるルークは、入学から遅れて、夏の終わりの時期に、学園に転入して来た。

 お決まりのピンクブロンド髪で、庇護欲をそそる、それはそれは可愛らしいオメガであった。

 平民として暮らしていたルークは、最近になって、父親である男爵に引き取られた。

 かつて、屋敷に勤めていたメイドとの間に出来た私生児であったが、男爵家が跡取りに恵まれなかった事と、ルークが容姿端麗なオメガであるのが分かった事で、高位貴族との縁結びを狙った男爵の思惑に叶った訳だ。

 確か、母親とは引き離されて、別々に暮らしてたんだよな。

 今、16歳なら、前世で言う所の高校一年生に当たるわけで。

 思春期だし、環境が大きく変わって、戸惑ってしまうよな。

 母親がまだ恋しい時期だよな。

 とか、この時の僕は、主人公に対して、断罪の脅威を抱きながらも、同情せずにはいられなかった。


 ん?だからなのか?



 「アルフレッド様~。」

 「早くこちらですよ~。今日は、僕が手作りしたサンドイッチ、一緒に食べましょうよ。」
 
 今、ルークに手を引かれて、学園の庭のベンチへと連れて来られたのは、僕、悪役令息アルフレッドである。

 あれ?何で、主人公とこんな事になってるんだ?

 ルークは、王子であるセドリック様と仲良くなるんじゃなかったけ?

 ほら、セドリック様が、不機嫌そうにこちらに向かって来たじゃないかー!



 たまたま同じクラスになったルークに、ついつい親心で、知らず知らずの内に親切にしてしまっていたらしく、何故かめちゃめちゃ懐かれた。

 隣の席のヘンリーには、王子が焼き餅焼くから気をつけろって言われたけど、それは違うぞ。

 王子は、ルークを好きになる運命なんだ。

 僕は、2人を引っ付けて、穏便に婚約を解消してもらうんだ。


 そう思う度に、何故か僕の心が、ズキっと痛んだ。

 いや、気のせいだ。そう思わないといけないんだ。

 
 僕は、無意識に自分の気持ちに蓋をしてしまっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。 一つは男であること。 そして、ある一定の未来を知っていること。 エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。 意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…? 魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。 なんと目覚めたのは断罪される2か月前!? 引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。 でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉ まぁどうせ出ていくからいっか! 北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)

生まれ変わったら俺のことを嫌いなはずの元生徒からの溺愛がとまらない

いいはな
BL
 田舎にある小さな町で魔術を教えている平民のサン。  ひょんなことから貴族の子供に魔術を教えることとなったサンは魔術の天才でありながらも人間味の薄い生徒であるルナに嫌われながらも少しづつ信頼を築いていた。  そんなある日、ルナを狙った暗殺者から身を挺して庇ったサンはそのまま死んでしまうが、目を覚ますと全く違う人物へと生まれ変わっていた。  月日は流れ、15歳となったサンは前世からの夢であった魔術学園へと入学を果たし、そこで国でも随一の魔術師となった元生徒であるルナと再会する。  ルナとは関わらないことを選び、学園生活を謳歌していたサンだったが、次第に人嫌いだと言われていたルナが何故かサンにだけ構ってくるようになりーーー? 魔術の天才だが、受け以外に興味がない攻めと魔術の才能は無いが、人たらしな受けのお話。 ※お話の展開上、一度人が死ぬ描写が含まれます。 ※ハッピーエンドです。 ※基本的に2日に一回のペースで更新予定です。 今連載中の作品が完結したら更新ペースを見直す予定ではありますが、気長に付き合っていただけますと嬉しいです。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

四天王一の最弱ゴブリンですが、何故か勇者に求婚されています

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
「アイツは四天王一の最弱」と呼ばれるポジションにいるゴブリンのオルディナ。 とうとう現れた勇者と対峙をしたが──なぜか求婚されていた。倒すための作戦かと思われたが、その愛おしげな瞳は嘘を言っているようには見えなくて── 「運命だ。結婚しよう」 「……敵だよ?」 「ああ。障壁は付き物だな」 勇者×ゴブリン 超短編BLです。

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

猫の黒たんは騎士団長!?

ミクリ21
BL
ある日、青年はボロボロの黒猫を拾いました。 青年は猫に黒たんと名付け、可愛がりました。 だけどその猫は、実は………!?

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

処理中です...