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チュートリアル
6 ステータス、オープン!
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運命の金曜日。今日は待ちに待ったローラシア・フロンティアの稼働日だ。
といっても、平日なので私たち学生は普通に学校があるんだけど。
学校を休みたい欲求を振り切り登校の準備をする。
真っ白なVRギアをひと撫でする。まっててね、相棒!
教室に入ってクラスメイトと挨拶をする。
そして、いつも通り自分の席に着いて、隣の席のみさとに挨拶をする。
「おはよう、みさと。いよいよ今日だね! もう待ちきれないよ~!」
「おはよう、たくみ。私も楽しみだよ。早くやりたいよねー」
「そういえば、アバターって完成した? 見せてよ!」
「昨日の夜、やっと完成したんだ。はい、これが私のアバターだよ」
そういってみさとはスマホでアバターを表示して見せてくれた。
おおっ! みさとだ! ちゃんと再現されてる!
「うわあ! 凄いね、みさと! ちゃんとみさとだよ!」
「どうよ、可愛かろう? 存分に褒めるがよい」
「本物より数段可愛いよ。これがプロの仕事かあ!」
「お、言ったな? こうしてやる!」
みさとはそう言うと、私の脇腹をくすぐり始めた。く、くすぐったい! やめて~!
身をよじりながら、みさとの手をどけようとするけれど、上手くいかない。こやつ、手練れだな……!
「あはははっ! ちょっ、やめっ! くすぐったぁい!」
「ほれほれ、よいではないか、よいではないか」
「も、もう! お代官さまもほどほどに……ぷぷっ……して下さいましぃ……あはははは!!」
脇の下やお腹周りを散々触られまくった後、ようやく解放された私は息も絶え絶えだった。はあ、はあ……死ぬかと思った……。
そんなやり取りをしていると、担任が教室に入ってきてホームルームが始まった。
昼休み。みんなで屋上に集まる。私のお弁当はママ特製のサンドイッチ弁当。
卵サンドにハムカツサンド、カツサンドにてりたまサンド。
おいしい、おいしい! もぐもぐ……。
「ねえ、はるみ。今日なんか疲れてない? どうかしたん?」
みさとの言葉ではるちゃんを見ると、確かにぐったりしてるように見えた。どうしたんだろう?
「ああ、昨日ちょっと夜更かししちゃって……。ちょっと寝不足なんだ」
ああ、なるほど……。それは辛そうだ……。
「へえ、夜更かしかあ。で、何時間くらいやったの?」
「えっ?!」
「あっ、もしかして……?」
「……二時間くらい?」
「うわぁ、裏切り者がいるぞ!」
「一緒にやろうって言ったのに、酷い!」
「だってえ~、どうしても我慢できなかったんだよぅ」
はるちゃんが夜更かししたのは、ローラシア・フロンティアをやるためだったのか。まったく、しょうがないなあ。
「で、でも、チュートリアルしかやってないから。チュートリアル終わって移動したところで待ってるから大丈夫!」
「チュートリアルでそんなに時間かかるの?」
「うーん、なんていうか……。種族ごとにね、スタート地点が違うの。私はエルフの森から始まって、周りのプレイヤーもエルフだけだった」
「へぇ~、そうなんだあ」
「それって、私たち一緒にゲーム出来ないって事?」
「ああ、それは大丈夫。チュートリアルの前半が終わると大きな街に移動するから。そこでみんなと合流できるよ」
それなら問題ないね。良かった。せっかくゲームが出来ると思ったのに会えないんじゃつまんないしね。
その後、今日の夜にゲームの中で会う約束をした。待ち合わせの時間を決め、お昼ご飯を終えて解散したのだった。
放課後、帰宅してから急いでシャワーを浴びる。
汗を流したら、髪を乾かすのもそこそこに自分の部屋へと駆け込んだ。
VRギアを頭にかぶり、椅子に座る。そして、電源を入れた。
キイィンと音を立てて起動する私の相棒。
さあ、ローラシア・フロンティアの世界へ出発だ!
『リンク、スタートします』
◆◆◆
「わあぁ、ここがローラシア・フロンティアの世界かあ!」
目を開けると、そこには巨大な神殿の中だった。
ギリシャ神話とかにありそうなやつ。パルテノン神殿だっけ?
真っ白な柱に真っ白な床。中央には祭壇のようなものがあって雰囲気出てる。
周囲には多くのプレイヤーがいて、みんなキョロキョロしていた。
みんな、初めてなんだろうね。ワクワクする気持ちが伝わってくるようだ。
私は早速あれをやることにした。あれって何かって? 決まってるでしょ!
ステータス、オープン!
ウインドウを開くと、アルファベットと数字が並んでいた。
HP、MP、STR、VIT、DEX、AGI、INT、PIE、LUK……。
これがステータスなのはわかる。HPとMPは他のゲームでも使われてるし、ラノベでもおなじみのヒットポイントとマジックポイントだ。
STRはたしか力の事だ。INTは賢さだったと思う。LUKは運の良さ。他のはちょっとわからない。
まあ、いいか。後で調べてみよう。
数字で特別高いところはみあたらない。
残念。私はチート持ちじゃなかったようだ。
周りがやけにざわざわするので、ステータス画面を切って周囲を見まわす。
すると、いつの間に来たのか、神官みたいな恰好をした人が祭壇のところに立っていた。
手にはスペードみたいな形をした杖を持っている。かっこいい!
その神官が杖の石突で床を叩くと、カンッという甲高い音が鳴り響いた。
みんな黙って神官を注目する。
「若者たちよ! そなた達は成人を迎え、神に認められた者たちである! 」
大きな声で祝福される。うわ~、嬉しい!
「さて、晴れてこの島から旅立てるのだけれど、その前に試練を行う」
「島の外には凶暴なモンスターがひしめいており、危険である。その為、実力が無い者が島から出たらひとたまりもないだろう!」
「そこで、島にいるモンスターを退治することで、お前たちの実力を測る!」
「各自、村を出て既定のモンスターを討伐せよ! 試練をクリア出来たものは戻ってきて報告するのだ」
その言葉と共に、神官は神殿の奥へと去っていった。
ふたたびざわざわとし始めるプレイヤー達。どうやら説明が終わったらしい。
ピロン! と音が鳴り、ウインドウが表示された。
【チュートリアルクエスト】
以下のいずれかの対象を規定数討伐して長老に持って行く。
・うさぎ(0/10)
・イノシシ(0/5)
・クマ(0/1)
「よし、じゃあ行こう!」
「まだチュートリアルだから楽勝だろ」
「よっしゃ、頑張るぜ!」
そう言って次々と神殿を後にするプレイヤーたち。
私も慌てて後に続いた。あちゃー、出遅れちゃったよ。急がないと……!
といっても、平日なので私たち学生は普通に学校があるんだけど。
学校を休みたい欲求を振り切り登校の準備をする。
真っ白なVRギアをひと撫でする。まっててね、相棒!
教室に入ってクラスメイトと挨拶をする。
そして、いつも通り自分の席に着いて、隣の席のみさとに挨拶をする。
「おはよう、みさと。いよいよ今日だね! もう待ちきれないよ~!」
「おはよう、たくみ。私も楽しみだよ。早くやりたいよねー」
「そういえば、アバターって完成した? 見せてよ!」
「昨日の夜、やっと完成したんだ。はい、これが私のアバターだよ」
そういってみさとはスマホでアバターを表示して見せてくれた。
おおっ! みさとだ! ちゃんと再現されてる!
「うわあ! 凄いね、みさと! ちゃんとみさとだよ!」
「どうよ、可愛かろう? 存分に褒めるがよい」
「本物より数段可愛いよ。これがプロの仕事かあ!」
「お、言ったな? こうしてやる!」
みさとはそう言うと、私の脇腹をくすぐり始めた。く、くすぐったい! やめて~!
身をよじりながら、みさとの手をどけようとするけれど、上手くいかない。こやつ、手練れだな……!
「あはははっ! ちょっ、やめっ! くすぐったぁい!」
「ほれほれ、よいではないか、よいではないか」
「も、もう! お代官さまもほどほどに……ぷぷっ……して下さいましぃ……あはははは!!」
脇の下やお腹周りを散々触られまくった後、ようやく解放された私は息も絶え絶えだった。はあ、はあ……死ぬかと思った……。
そんなやり取りをしていると、担任が教室に入ってきてホームルームが始まった。
昼休み。みんなで屋上に集まる。私のお弁当はママ特製のサンドイッチ弁当。
卵サンドにハムカツサンド、カツサンドにてりたまサンド。
おいしい、おいしい! もぐもぐ……。
「ねえ、はるみ。今日なんか疲れてない? どうかしたん?」
みさとの言葉ではるちゃんを見ると、確かにぐったりしてるように見えた。どうしたんだろう?
「ああ、昨日ちょっと夜更かししちゃって……。ちょっと寝不足なんだ」
ああ、なるほど……。それは辛そうだ……。
「へえ、夜更かしかあ。で、何時間くらいやったの?」
「えっ?!」
「あっ、もしかして……?」
「……二時間くらい?」
「うわぁ、裏切り者がいるぞ!」
「一緒にやろうって言ったのに、酷い!」
「だってえ~、どうしても我慢できなかったんだよぅ」
はるちゃんが夜更かししたのは、ローラシア・フロンティアをやるためだったのか。まったく、しょうがないなあ。
「で、でも、チュートリアルしかやってないから。チュートリアル終わって移動したところで待ってるから大丈夫!」
「チュートリアルでそんなに時間かかるの?」
「うーん、なんていうか……。種族ごとにね、スタート地点が違うの。私はエルフの森から始まって、周りのプレイヤーもエルフだけだった」
「へぇ~、そうなんだあ」
「それって、私たち一緒にゲーム出来ないって事?」
「ああ、それは大丈夫。チュートリアルの前半が終わると大きな街に移動するから。そこでみんなと合流できるよ」
それなら問題ないね。良かった。せっかくゲームが出来ると思ったのに会えないんじゃつまんないしね。
その後、今日の夜にゲームの中で会う約束をした。待ち合わせの時間を決め、お昼ご飯を終えて解散したのだった。
放課後、帰宅してから急いでシャワーを浴びる。
汗を流したら、髪を乾かすのもそこそこに自分の部屋へと駆け込んだ。
VRギアを頭にかぶり、椅子に座る。そして、電源を入れた。
キイィンと音を立てて起動する私の相棒。
さあ、ローラシア・フロンティアの世界へ出発だ!
『リンク、スタートします』
◆◆◆
「わあぁ、ここがローラシア・フロンティアの世界かあ!」
目を開けると、そこには巨大な神殿の中だった。
ギリシャ神話とかにありそうなやつ。パルテノン神殿だっけ?
真っ白な柱に真っ白な床。中央には祭壇のようなものがあって雰囲気出てる。
周囲には多くのプレイヤーがいて、みんなキョロキョロしていた。
みんな、初めてなんだろうね。ワクワクする気持ちが伝わってくるようだ。
私は早速あれをやることにした。あれって何かって? 決まってるでしょ!
ステータス、オープン!
ウインドウを開くと、アルファベットと数字が並んでいた。
HP、MP、STR、VIT、DEX、AGI、INT、PIE、LUK……。
これがステータスなのはわかる。HPとMPは他のゲームでも使われてるし、ラノベでもおなじみのヒットポイントとマジックポイントだ。
STRはたしか力の事だ。INTは賢さだったと思う。LUKは運の良さ。他のはちょっとわからない。
まあ、いいか。後で調べてみよう。
数字で特別高いところはみあたらない。
残念。私はチート持ちじゃなかったようだ。
周りがやけにざわざわするので、ステータス画面を切って周囲を見まわす。
すると、いつの間に来たのか、神官みたいな恰好をした人が祭壇のところに立っていた。
手にはスペードみたいな形をした杖を持っている。かっこいい!
その神官が杖の石突で床を叩くと、カンッという甲高い音が鳴り響いた。
みんな黙って神官を注目する。
「若者たちよ! そなた達は成人を迎え、神に認められた者たちである! 」
大きな声で祝福される。うわ~、嬉しい!
「さて、晴れてこの島から旅立てるのだけれど、その前に試練を行う」
「島の外には凶暴なモンスターがひしめいており、危険である。その為、実力が無い者が島から出たらひとたまりもないだろう!」
「そこで、島にいるモンスターを退治することで、お前たちの実力を測る!」
「各自、村を出て既定のモンスターを討伐せよ! 試練をクリア出来たものは戻ってきて報告するのだ」
その言葉と共に、神官は神殿の奥へと去っていった。
ふたたびざわざわとし始めるプレイヤー達。どうやら説明が終わったらしい。
ピロン! と音が鳴り、ウインドウが表示された。
【チュートリアルクエスト】
以下のいずれかの対象を規定数討伐して長老に持って行く。
・うさぎ(0/10)
・イノシシ(0/5)
・クマ(0/1)
「よし、じゃあ行こう!」
「まだチュートリアルだから楽勝だろ」
「よっしゃ、頑張るぜ!」
そう言って次々と神殿を後にするプレイヤーたち。
私も慌てて後に続いた。あちゃー、出遅れちゃったよ。急がないと……!
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