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さざ波ギルドのハウスに着くと彩先輩はさっそく説明を始めた。どこからともなく現れたセバス先輩が紅茶を出してくれる。
「まず、ギルドバトルについて説明するわね」
「お願いします」僕が頷くと彼女は話し始めた。
「ギルド同士の戦いにはいくつか種類があるんだけど、そのうちの一つがギルドバトルと呼ばれるものよ」
(それはなんとなくわかる)頷いて続きを促す僕。
「簡単に言えばお互いの要求を通すためにルールを決めて競い合うことね。エンブレムって言うのはそのルールに基づいたバトルの一つ」
「なるほど、それでそのエンブレムっていうのは?」
「ルールは簡単。相手の持つギルドの証を手に入れて自分のギルドハウスに持ってくれば勝ち」
そういって僕に日本刀のようななものを見せる。ツカのところに波を思わせるエンブレムが付いていた。
「え、それってかなり難しいんじゃ……?」
僕の疑問に彩先輩は頷く。
「そうね、これだけ人数差があるとこちらが勝つのは難しいわね」
それを聞いて不安になった僕は、彩先輩に向かって言った。
「あの、やっぱりやめませんか?こんな無謀なことするなんて危険ですよ!」
しかし、彩先輩は首を横に振った。そして真っ直ぐに僕を見つめると言った。
「いいえ、やるわ!申し込んだ以上どのみちもう取りやめは出来ないし負けると決まったわけでもない」強い決意を感じさせる瞳だ。
そこにセバス先輩が口を開いた。
「私からもよろしいですかな?」
「なんですか?」聞き返す彩先輩にセバス先輩は答える。
「このままですとギルドバトル以前にメンバー不足でさざ波ギルドが無くなってしまうのですが」「うっ……」痛いところを突かれたのか、言葉に詰まる先輩。
「ですから、まずは新しいメンバーを勧誘してこないといけませんねえ……」
セバス先輩の言葉に考え込む彩先輩だったが、すぐに顔を上げて言った。
「――わかった、それじゃあ私は職員室に行ってリストをもらってくる。今日はもう遅いしゆうすけ君は帰っていいわ」
そう言うと席を立ち行ってしまった。それを見届けてから僕はセバス先輩に尋ねた。
「あの、リストって何のリストですか?それでギルドメンバーが増えるのですか?」
「そうですね。二、三年生の中にはギルドに入っていない野良の学生もいるので、その人たちを引き込もうとしてるのでしょう。あまりお勧めは出来ないのですけどね」苦笑いしながらセバスさんは言う。
「そうなんですか?」不思議そうに尋ねる僕に彼は答える。
「そうですとも。二、三年生になってギルドに入っていないと言うことは、何かしらの事情がある人たちなのです。例えばギルドから追放されてブラックリストに載っているとか……ね」
「え、それって危険分子をギルドに引き込むってことになりませんか?」
「マスターはそうならないようにリストを見て厳選して勧誘しようとしてるのでしょう。でも、おそらくは見つからないでしょう」そう言うと言葉を続けた。
「ゆうすけさんはまだギルドに入ってない方に心当たりありませんか?お友達とか同級生に」
(友達かぁ)頭の中で思い浮かべてみる。
「セバス先輩。あの……河童はギルドメンバーに含まれますか?」
――――――
黒髪の少女……安倍晴実は自分の部屋のテーブルに置かれた静かに振動するスマホのような端末を手に取る。
「どうだった?」
『依頼完了だ。女たちは指定のホテルに送った』電話口から聞こえる男の声に彼女は微笑む。
「ありがとう、助かったわ」
『ふん……報酬は忘れずに下駄箱に入れておけ』
「はいはい、わかってるわよ」
『それともう一つ』男は続ける。『さざ波と獄炎がギルドバトルするそうだぞ。今しがた救出した二人を賭けてな』
安倍晴実はその言葉に笑みをうかべて答える。
「……そうね、見ていたわ。面白いことになったわね」
『俺は関係ないからな』
「もちろんよ。ここからは私のターンよ」
『好きにしろ』その言葉を最後に通話が切れた。
(さて、どうなるのかしらねぇ)
安倍晴実は静かに笑みを浮かべるのだった。
「まず、ギルドバトルについて説明するわね」
「お願いします」僕が頷くと彼女は話し始めた。
「ギルド同士の戦いにはいくつか種類があるんだけど、そのうちの一つがギルドバトルと呼ばれるものよ」
(それはなんとなくわかる)頷いて続きを促す僕。
「簡単に言えばお互いの要求を通すためにルールを決めて競い合うことね。エンブレムって言うのはそのルールに基づいたバトルの一つ」
「なるほど、それでそのエンブレムっていうのは?」
「ルールは簡単。相手の持つギルドの証を手に入れて自分のギルドハウスに持ってくれば勝ち」
そういって僕に日本刀のようななものを見せる。ツカのところに波を思わせるエンブレムが付いていた。
「え、それってかなり難しいんじゃ……?」
僕の疑問に彩先輩は頷く。
「そうね、これだけ人数差があるとこちらが勝つのは難しいわね」
それを聞いて不安になった僕は、彩先輩に向かって言った。
「あの、やっぱりやめませんか?こんな無謀なことするなんて危険ですよ!」
しかし、彩先輩は首を横に振った。そして真っ直ぐに僕を見つめると言った。
「いいえ、やるわ!申し込んだ以上どのみちもう取りやめは出来ないし負けると決まったわけでもない」強い決意を感じさせる瞳だ。
そこにセバス先輩が口を開いた。
「私からもよろしいですかな?」
「なんですか?」聞き返す彩先輩にセバス先輩は答える。
「このままですとギルドバトル以前にメンバー不足でさざ波ギルドが無くなってしまうのですが」「うっ……」痛いところを突かれたのか、言葉に詰まる先輩。
「ですから、まずは新しいメンバーを勧誘してこないといけませんねえ……」
セバス先輩の言葉に考え込む彩先輩だったが、すぐに顔を上げて言った。
「――わかった、それじゃあ私は職員室に行ってリストをもらってくる。今日はもう遅いしゆうすけ君は帰っていいわ」
そう言うと席を立ち行ってしまった。それを見届けてから僕はセバス先輩に尋ねた。
「あの、リストって何のリストですか?それでギルドメンバーが増えるのですか?」
「そうですね。二、三年生の中にはギルドに入っていない野良の学生もいるので、その人たちを引き込もうとしてるのでしょう。あまりお勧めは出来ないのですけどね」苦笑いしながらセバスさんは言う。
「そうなんですか?」不思議そうに尋ねる僕に彼は答える。
「そうですとも。二、三年生になってギルドに入っていないと言うことは、何かしらの事情がある人たちなのです。例えばギルドから追放されてブラックリストに載っているとか……ね」
「え、それって危険分子をギルドに引き込むってことになりませんか?」
「マスターはそうならないようにリストを見て厳選して勧誘しようとしてるのでしょう。でも、おそらくは見つからないでしょう」そう言うと言葉を続けた。
「ゆうすけさんはまだギルドに入ってない方に心当たりありませんか?お友達とか同級生に」
(友達かぁ)頭の中で思い浮かべてみる。
「セバス先輩。あの……河童はギルドメンバーに含まれますか?」
――――――
黒髪の少女……安倍晴実は自分の部屋のテーブルに置かれた静かに振動するスマホのような端末を手に取る。
「どうだった?」
『依頼完了だ。女たちは指定のホテルに送った』電話口から聞こえる男の声に彼女は微笑む。
「ありがとう、助かったわ」
『ふん……報酬は忘れずに下駄箱に入れておけ』
「はいはい、わかってるわよ」
『それともう一つ』男は続ける。『さざ波と獄炎がギルドバトルするそうだぞ。今しがた救出した二人を賭けてな』
安倍晴実はその言葉に笑みをうかべて答える。
「……そうね、見ていたわ。面白いことになったわね」
『俺は関係ないからな』
「もちろんよ。ここからは私のターンよ」
『好きにしろ』その言葉を最後に通話が切れた。
(さて、どうなるのかしらねぇ)
安倍晴実は静かに笑みを浮かべるのだった。
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