冒険者育成学園の日常 

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「おい、ゆうすけ!だいじょうぶか?おい!!」
 職員室の椅子に座らされた僕は大人の男の人に揺さぶられた。痛い。酔う。やめて!
 身長180センチ程の痩せ型、黒髪短髪をワックスで固めており、切れ長の目をしているこの男の人はアルフ・カリオン先生。一年B組の担任だ。
「すみません。ボーっとしてました」素直に謝る僕に先生はため息をついた。
「全くお前はいつもそうだな。まあいい、とりあえず昼飯でも食え。腹が減ってるからろくなことを考えないんだ」そういうと机の上にパンやらおにぎりやらが入った袋を置いてくれた。やったね!いただきます!!
 ……ふう、美味しかった。一息ついた所で先生が話しかけてくる。
「それにしても一人であんなところにいてどうしたんだ?まるで死んだ魚のような眼でふらふらと……自殺でもするのかと思って焦ったぞ」
 どうやら心配させてしまったらしい。申し訳ないことをしてしまったなあと思っていると、どうやら顔に出てしまったらしい。それを見た先生は慌てた様子でこう言った。
「ああ、すまん、言い方が悪かったな。別に怒ってはいないから安心しろ」
「すみません。なんか……こう、ボーっとしてしまって」
 よく覚えていないがとりあえず謝る僕に先生は真剣な顔で話す。
「もしかして、何も覚えていないのか?」
「はい。すみません……」
 困り果てた顔をした僕を見て、先生は頭を抱えると言った。
「もしかして誰かに操られていたのか?それとも洗脳されていたのか?」
 そんなことを言われても困るんですが……困った顔で黙り込んでいる僕をみて先生はため息をつく。
「いいか、このことは誰にも言うな。教師が一生徒に特別に何かしたとなると色々うるさいからな」
 そういって僕に一枚のカードを手渡した。
「なんですか?これ?」
「いいから肌身離さず持っておけ。きっと役に立つ」
 そう言うと先生は立ち上がった。
「じゃあ俺は授業があるからもう行くぞ。お前も教室に戻りなさい」そう言って去って行く先生の後ろ姿を見送りながら渡されたカードを見る。
 名刺サイズのその白い紙には何やら紋章のようなものが書かれていた。盾みたいなマークだなと考えていると予鈴が鳴ったので急いで教室に戻る。なんなんだろういったい?


――放課後になりさざ波のギルドハウスに向かう。するとそこには既に彩先輩と小野がいて一緒に素振りをしていた。
 二人とも汗だくになっている。すごい熱量だ。邪魔しちゃ悪いかなと思いそっと通り過ぎようとすると声をかけられた。
「おう、ゆうすけじゃねえか!ちょうど良かった!手合わせしようぜ!!」
 小野にそう言われたのだが僕が勝てるわけがない。何言ってんだこいつと冷ややかな目で見ていたらにやけながら小野が言う。
「大丈夫、ハンデをあげるから。俺は手足を使わずこの場から一歩も出ない。ゆうすけは好きにすればいい」
 そういって持っていた木刀を投げてよこす。
「じゃあ私はシャワーいってくるね」そういって彩先輩はギルドハウスに消えていった。
 一人残された僕は仕方なく剣を構えると小野に向かって行った。
 結果は惨敗。小野に触れるか触れないかのところまで迫った辺りでいきなり弾き飛ばされたのだ。無様に転がる僕を尻目に「どうだ、俺の実力を見たか!」得意げに言う小野。やっぱりむかつくわこいつ。そんな僕たちのやり取りを見ていたセバス先輩が口を開いた。
「そろそろ明日の打ち合わせを始めますか」
 僕はセバス先輩に手を借りて立ち上がった。
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