百鬼怪異夜行

葛葉幸一

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第三十九夜 骨女─ホネオンナ─

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 牡丹灯籠と聞けば誰でも知っている話である。
「四谷怪談」「番長皿屋敷」この三つは特に有名だと思う。
 同じ大学の人話を持ちかけられた。僕は面識はないが向こうは「霊媒師がいると聞いてやってきた」という。
 そんな変な商売した覚えはないのだ……。
 項垂れて進んだ先は、一人暮らしの男性の家。
 彼は一人ベッドの上で虚空を見つめながらブツブツと呟いている。
「なにか変なのに取り憑かれてるんじゃないかって……」
 先週の末からずっとこんな感じだという。
 何かしら心当たりがあるのではないかと尋ねてみても、言葉を濁すだけで確信めいたことは話さない。
 僕でも朧げに何かが居る、としか見えなかった。
 ふっ、と部屋を見回すと付けっぱなしになったパソコンが目に入った。
 開かれたHPはオークションサイトのもの。
 悪いとは思いながらも彼のアカウントを見てみると、彼が出品したものが目に留まった。
 その瞬間、彼の友人がものすごい剣幕で僕からマウスを奪い取り、そのページを閉じてしまった。
 僕が見えたのは一枚の掛け軸。
 あまりにもおぞましい物で吐き気がした。
 ドス黒い黒で描かれた幽霊画。

─祖父曰く。
 この世で最もタチの悪りぃ外法だよ。
 死者の血で描いた絵さ。
 輪廻転生を封じられ、永遠に死んだ時の苦痛を味わいながら掛け軸の中で生き続けるのさ。
 まさに地獄だ。

 彼らは何かしらの事情でその地獄の入り口とも言うべき掛け軸を手に入れたのだろう。
 そしてこの男は地獄に片足を突っ込んでいる。
 僕は彼の友人に、真実を話せないなら手の施しようがないと伝えた。
 でもそれは嘘だ。たとえ真実を聞いたところで僕の手におえる代物……。人間の手ではどうすることもできない物だ。
 僕を睨みつける友人を後にしてその部屋から去った。

 後日。
 彼らが警察に捕まったというニュースが流れた。
 強盗罪。あの掛け軸は盗んだ物だった。
 心身喪失状態である彼がテレビ画面に映る。その彼は何かを抱きしめるように警官に連れられていた。
 僕にはそれが白骨化した女性を抱いているように見えた。
 そして逮捕された翌日。彼らは留置所で死んだ。
 その死体は白骨と化していたと言う。
 彼らもまた、掛け軸の中の地獄に落ちたのだ。
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