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2・ルーファリアという私(2)

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クライドハルト帝国は、大陸全土に影響を及ぼす一大国家。
その歴史は千年にも及び、農業・漁業・林業・工業いずれも不足なく、周辺の国との関係も良好。更には未だ廃止されていない貴族制度にも磨きがかかっている程。

「そう。そんな素晴らしい国の公爵令嬢に四度目の転生を果たした…と」

眼下の薔薇園とその背後にある城を眺めながらポツリと独り言ちる。
ルーファリア=ブラット・ドゥーク。それが四つ目の私の名。
ブラット公爵家は、クライドハルド帝国建立当時から存在する有所正しき四大公爵の一家。先祖に"魔族"を持つ一族で、ブラット家の人間はいずれかの魔物の特性を引いているらしい。ちなみに父上は"魔王"の強度。兄上は"ミイラ"の耐久値、義弟は恐らく"蝙蝠"の透視だそう。
どれも実践向きの素晴らしい力だと思うんだけど、残念ながら私は"サキュバス"のっていう特性。一般的には異性を性的に魅了する―ってものなんだけど、私の特性は少し特殊で異性・同性関係なく魅了してしまうんだとか。
―まぁでもノープロブレム。
魔導士団が開発した"チョーカー"を付けることで私の"魅了"は発動しなくなるんだって。その代わりにずっとチョーカーは付けていないといけないんだけどね。

いやぁでもこの特性本当に傍迷惑なんだよ。
私の特性が発覚したのが五歳のころ。今が七歳だから二年前だね。
その時はまだ誰も私の特性を知らなくて、なにも対策を取らずに城下に出かけたんだ。そうしたらあら大変!無意識のうちに魅了を使っていた私は、賊に襲われるわ、強姦未遂を受けるわ、終いには城下の大勢の人を巻き込んだ混乱が起きるわ。―まぁ賊は普通に捕まって、強姦未遂した人は私の特性のせいだということでほぼお咎め無し。城下の大混乱については私たちの方から帝王に謝罪って形になった。

丁度その後に三回の人生を思い出したから、心の傷もなく。"深窓の令嬢"を二年極めている私は嘘っぱちってことね。
城下の方々には申し訳ないんだけど、この事件のお陰で私は部屋に閉じこもっていても何も言われなくなったし、家族以外と関わらないことを徹底しているお陰で変なお茶会にも顔を出さずに済んで万々歳!

「~~♪~♪さて、そろそろ冒険者ギルドへ行きますか」



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