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5・新パーティーと新たな仲間

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「―はぁ」

果たしてこれは今日何回目の溜息だろうか。
"溜息をつくと幸運が逃げる"と言うが、もうこれ以上私から逃げる幸運はないのではと思う。

「ふふふ、そんなに恨みがましく僕を見たって結果は変わらないよ?」

―イラッ!!

「やっぱ無理ッ!ゼノとパーティー組んで冒険者活動とか不可能ッ!SSSS級クエスト!マジ無理ゲーッ!!」
「えぇ、酷いなぁ?僕はまたこうして君と共闘できることを心から嬉しく思っているのに…」
「そういうところが嫌いなんだよッ!ってかなんでわざわざ私!?性悪にもほどがあるでしょ!?」

ゼノと初めての共闘を果してから二週間後―本日。
私は晴れてAランク冒険者になり、ゼノと冒険者パーティーを組むことになった。
―ハイ。何があった?ってね、本当。何があったのか…きっと神が私を見捨てたのね。
さて、みなさんに事の経緯をお話ししましょう。

遡ること三十分前……

「わぁ!ルーファちゃんおめでとう!これでSSSランクまであと四階級よ!」

私の姉のような存在であるリイさんは私のAランク昇格を心から喜んでくれた。

「はい!ありがとうございます!リイさん。これからも頑張ります!!」

全てはスローライフのためにッ!と心の中で付けたして微笑む。

「ええ!応援しているわ!―と、そうだった!貴方もパーティーを組むんですってね?そっちも頑張って!」
「―?パーティー?私はこれまで通り一人冒険者のつもりですけど…?」

誰かと一緒にクエストをこなすのも楽しそうだけど、私ワケありだからね…。

「いいえ、ゼノ君がルーファちゃんとのパーティー申請用紙を提出していたわよ?」
「―はぁ?」

ゼノ?なんでアイツ??
ってか私に無許可だよね?まさかパーティー申請が受理されるなんてことは―。

「それに一度パーティーを組んだことのあるメンバーだと簡単に受理されてしまうから…」

そうだったぁあああああ!!
一度パーティーを組んだ人同士ならある程度の手続きをすれば、簡単にパーティーを組めるんだった!!

アイツへの怒りでわなわなと震えていると、隣から愉快そうな声が聞こえた。

「はい。僕とルーファは今日からパーティーなんです♪」
「なッ!?」

―ゼノぉぉぉぉおおおおおおッッ!!お前――ッ!!

「―ってことらしいわ。Aランク上位の幼二人組がパーティーを組むなんて!って今晩の酒屋は盛り上がりそうねぇ♪」

いや、なんでリイ姉さんは酒屋の話をしているんですかッ!!
この悪魔に捕らえられた哀れな妹を助けてくださいよっ!!



・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・


と、いうことである。
まぁ、簡単に言えば?
この性悪最低男に勝手にパーティー申請をされた上、ゼノは人当りも良いため簡単に受理され現在こうしてパーティーを組むことになったのである。

「―で?アンタは何がしたいのよ?」
「…?何って?」

無邪気な青い瞳を大きくして彼は聞き返す。

「―はぁ。だから、どうして私とパーティーを組んだのかって聞いているの。私の他にもAランク冒険者なんているでしょうに」
「んー?だってルーファ強いし、戦いやすかったんだもん」
「はぁ?!」

予想外の答えに素っ頓狂な声が出る。
戦いやすいって…私勝手に敵を倒していただけなんだけど。

「それに同い年くらいの子って気兼ねないし、楽なんだよね♪」

そりゃいないだろうさ。私たちまだ七歳と八歳なんだから。
こんな会話を普通にしていることにみんな吃驚だよ。

「――――はぁ。もうパーティーになっちゃったし、詳しい活動について考えようか」
「ん?いいの?さっきまで無理ゲー!とかSSSS級クエストー!とか叫んでいたのに?」
「―もういいよ。どうせパーティーを解散する気はないんだろう?」
「無いね」

―即答かよ。ちょっと引くわ。

「じゃあ週何日活動にする?」
「んー、多くて週三、少なくて週一…かな?」

…コイツ案外忙しい?てっきり暇人かと…げっふんげっふん。
って、暇人は深窓の令嬢を極めている私の方か。

「パーティー活動の他に個人活動をするのは?」

私はほぼ毎日でもクエストをこなしてSSSランクへ行きたいんだけど。

「許可します――って、言い忘れていたけどこのパーティーのリーダー、ルーファだよ?」
「はぁああ!?なんで私?!普通パーティー結成者がリーダーになるものでしょ?」
「だって僕よりルーファの方が強いし」

そういうものなのッ!?
勝手にパーティーを結成しただけじゃなく、リーダーまで押し付けてくるって…どうなのよ。

「……はぁ。じゃあ次は何曜日に活動するか、ね」
「うーん…それは週によって変わるだろうね」
「―それもそうか」

なんせ週によって三回~一回の幅があるんだから。
…ってかなんで忙しいのにパーティー組んだの?本当。
あーーーーー、スマホが欲しい。
そうしたらメッセージとかで予定を決められるのに。
スマホ…スマホ……スマホ………。
いや、メッセージじゃなくても電話なら作れるんじゃない?


最近本を読んで知ったんだけど、この世界には"十"の属性がある。
まず基本属性として、〈炎〉〈水〉〈風〉〈土〉の四属性。
そして私の〈氷〉含む、〈雷〉〈光〉〈闇〉〈癒〉〈空間〉の特殊六属性。
基本属性はある程度の魔力さえ持っていれば全属性使用可能。特別属性に関しては、宮廷魔導士くらいの実力があれば自由に使えるようになるらしい。
…まぁ私は"大魔導士"のプライドにかけて全属性を制覇したから、どの属性でも中級魔法までは安定して使えるんだけどね♪
前世の世界だと基本四属性しか存在しなかったから何気に嬉しいし。

…と、いうことで―

「必要なのは…風と電気と光と空間―――」

魔石に魔力を通したら、別個体の魔石が共鳴するように仕組んで…あとは風魔法と空間魔法と光魔法の魔法陣を魔石に添付すれば――造れるかもしれないッ!!

「?急にどうしたの」
「―いいや。活動日については私に案があるから気にしなくていいよ。あとは…パーティー名か…」
「あぁ、パーティー名……」

んー…黄金の獅子とか?―強そうだけど厨二病くさいな…。
深海の悪魔―って、まるで蛸じゃん!
暗黒微笑…ってこれは違うッッ!!
えーっと…えーっと…あれ?私もしかしてネーミングセンスがない?

自分に絶望し始めていると徐にゼノが口を開いた。

「―じゃあ、ウィオラケウスは?」
「…?」

どうして紫?
そこを問おうと思うも、私が口を開く間もなくゼノの思考は進んで行く。

「ウィオラケウスだと長いから…ウィオラ、とか?」
「―――ウィオラ…」

…うん、なんかしっくりと来た。
―まぁ今まで"ダークネス・スマイリング~"(笑)とか考えていたせいかもしれないけど。

「じゃあAランクパーティー"ウィオラ"。目標は七年後までにSSSランク!!」
「「えいえいおー!!」」






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こいつら案外仲いいだろ(ボソッ)By、作者。
ちなみにゼノが"紫"と言ったのは、ルーファリアのオッドアイを見たせいです。
え?色変眼鏡かけているのに何時瞳の色を見たかって?
それは続きを読んでください。
…大分先になる可能性もあるんだけどね★

※属性についての説明を追加しました。
 
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