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Ⅰ・日常の終わりと初恋

5・いつもの面影はとうに消えて…

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「レヴィが、ね…『すごいな』って、すごいなって、言ったの…っ!私だって、言われたことないのにっ!私だって頑張ったのにぃっ!この十年間っ!一日も頑張らなかった日なんてないのにっ!ずっとずっと、認めてもらいたくてっ、褒められたくてっ、努力したのにぃ!…私の方が側にいたのにっ!どうして、どうして私の居場所、奪っちゃうのぉっ!」

うわぁあああああああんっ!
目から滝のような涙を流しながら、リディアは幼子の如く叫び続ける。

その姿から、いつもの凛とした彼女の面影は全く無かった。
学園内で―いや、社交界で”紅玉ルビーの太陽姫”と謳われている彼女は、いつも明るくニコニコしている。それはレヴィンと一緒にいる時も、だ。だから多くの貴族の意見として「仲が良くとてもお似合いな二人」という評価を得ている。
レヴィンの煌めく王家特有の銀髪と、リディアの絹のように滑らかで美しい金髪。サファイアのように澄んだレヴィンの瞳と、熱く燃えるリディアのルビーの瞳。
何もかもが正反対と言って良いからこそ、二人が一緒にいるだけで周りからは一枚の絵のような評価を受けるのだ。
―っと、閑話休題。

(め、面倒じゃな…。コヤツは一度へこむと時間をかけても治らぬ。たかが一言じゃが…星姫にとってはどんな宝石よりも価値のある言葉じゃし…。ってか、その一言のために十年間努力をするのも普通に可笑しな話じゃわい)

『…ま、まだ居場所を奪われると決まったわけじゃないじゃろ?』

何とか彼女の地雷にならないような言葉を探しに探して、シロはそう諭した。
―けれど。正直、今の彼女に地雷じゃない場所など無かった。

「―違うっ!」

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