拾った以上最後まで面倒みる責任

お別れ

「貴方の事……もぉ好きじゃない…」



掠れる声でやっと言えた一言に、彼は動きを止め沈黙したたずむ。

二人でお出掛けする時は常に手を繋ぎ幸せを噛みしめて喜んでいたのに、今は彼が伸ばしてくれたその掌を軽く払いのけ悪態を吐き続ける



「私達別れましょ……気紛れでからかってやろうと告白したら貴方本気になっちゃって…め……迷惑なのよ…」


「…………メーシア…なんで…」


「…………っっ」


「僕の悪いところがあるなら何でも直すから、お願いだ別れるなんてそんな悲しい事言わないで！」


「……ぁぅ…………そうやってなんでも私が指摘しなきゃ気付かない所が嫌なの…私と付き合うまで服装だって貧相だし顔が隠れるほど前髪を伸ばしてて、せっかく綺麗な瞳なのにもったいないし、口下手でまったく会話にならないし、私がいっつも沢山話しかけないと会話すら止まる。でもいっつもお話を聞いてくれて嬉しかったし優しい人だなって…でも…でも」


「ごめん……僕頑張ってもっと話すよ！メーシアがそんなに思い悩んでいたなんて……気付かなくてごめんね。」


「はぅぅ……リュック…違う違う…そうじゃなくて飽きたの！そうよ……そうなのよリュックに飽きたの！！だから今日で二人の関係は終わり」


「…………そんな…僕は君が好きだよ…捨てないで…」


「…………私はもぉ好きじゃなくなったの…さようなら」


「待っててぇぇメーシアぁぁぁ」



彼は悲しそうに私に募る……

そんな顔をさせたいわけじゃない、貴方を傷つけたいわけじゃない、でも私なんかが貴方の隣にいると将来の邪魔になるから……







『彼は……クオッド公爵家の唯一の血縁者なのです。』




彼がこの国の三大公爵筆頭のクオッド家の血縁者だったなんて……




私の大好きなリュックがお貴族様だったなんて……



遠い遠い存在……



貴方の為に……別れるのが正しい選択肢……



だから自分の心に嘘をつく……