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3章

イベントが開始されたらしいです⑩

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なんで……


なんで貴方が此処に居るの……


なんで…だってだって行けないって…



ただ驚きで貴方を見つめるしか無い、瞬きも忘れて見栄麗しい金髪の美青年をみつめる。



嘘をつかれたの…?

嘘をつかれたの…?



『ようこそ!キラキラ恋愛高等学園へ♪』

~貴方が桃色レンジャーになるまでの甘い学園生活~18禁乙女ゲーム

そして今目の前で起きているのはヒロインの、イエロールートの夜祭りイベント真っ最中なわけで…



私はこのゲームの役割は…?

【ヒロインの目の前でカイン先輩にあっけなく振られ失恋する当て馬ちゃんそれが私!】

ちゃんと役目果たした、だから自由なモブ娘になって青春を謳歌出来るはずだった…

攻略対象もヒロインも関係ない生活を送るはずだったのに。なのに私は恋をしてしまったのだ、二度と関わるはずのない攻略対象のカイン先輩に、目が回るなんて無謀な恋をしてしまったのだろう…




「この物語の主人公は私では無いのになんで貴方を好きになってしまったのだろう…」




胸が苦しい白鳥さんがカイン先輩を選ぶなら私なんて敵うわけないのに、だって彼女の為の世界であり物語なのだから…

私が勝とうなど無理でムチャで無謀な話しだったのだ…彼を責めるなどお門違い彼は悪く無い、彼はちゃんと物語通りに動いているのだから、このゲームのバグで不具合なキャラクターそれは間違い無く私だ…




「カインお前なんで此処にいるんだ…小野、小野しっかりしろ!!」


「お客さん困りますよ…商品を」


「申し訳ありません支払いはしますので…小野、小野大丈夫か顔が…真っ青だぞ…」



周りが騒がしいでも全然言葉が頭に入って来ない、先程まで色づいていた風景が一気に灰色に染まっている。



私はモブ娘…

私はモブ娘…

私はモブ娘…




「あかりん!!!」



ソレは誰ですか…?

貴方は誰の名前を呼んでいるの…?

私はモブ娘だからあだ名なんて無いそこら辺を歩いている捨てキャラ あれ…?私は何をしようとしてたんだっけ?そうだ林檎飴を買おうと、確か手に掴んで持ってたはず…


なのに今は無惨に地面に落ちている林檎飴、慌ててしゃがんで林檎飴を拾えば私の手にポタポタと水滴が落ちてきて雨でも降ってきたのかな…



「林檎飴が…リンゴアメ…リンゴ…ごめんなさいゴメンナサイ…」


「小野…小野…落ち着け支払い済みだから、立ち上がろう」



スタスタと誰かが近付いてくる足音が聞こえる、きっと私が立ち止まってるから進路妨害してしまっているのだ早くこの場から退かなければ、頭と身体が上手く回らずモタモタする自分



「カイン様すみません林檎飴買うのまだ時間かかりそうで…もうちょっとお待ち頂いても宜しいですか?」


「白鳥さんごめん…僕この子と話し合いたい事があるんだ…ちょっと時間をくれないか…」



やっと林檎飴を拾いあげ私はフラフラと歩きだそうと一歩前に出る、視界がぼやけ見にくく足がもつれてふらついてしまう、青髪の親切な方が私を支えてくれ補助してくれた。



「ご親切にすみません…」


「小野…お前…泣いているのか…」


「あかりん待って…話そう…青柳悪いあかりんの面倒は僕がみるから…」



何やら慌てたご様子の金髪イケメンが私に近付いてくるが、怖くて現実を見るのも知るのも恐ろしくて思わず隠れるように青柳先輩の背後に隠れプルプルと震えてしまう



「あかりん…なんで逃げるの…?」


「カイン様…やはりこの子と深い仲なんですの?」


ヒロインこと白鳥さんがカイン先輩を見つめる、や・は・り・こ・の・子・とはどういう意味なんだろう、この子って私の事だよね…

この人は何かを知っている?嘘をつかれたショックで頭が回らないとにかくこの場から立ち去りたい、今は脳内がグチャグチャでわからない




「カイン…お前デート中なのか?邪魔してわるかったな…小野いくぞ歩けるか?」



「ずみましぇ…ん…」



青柳先輩がズルズル私を引きながら歩いてくれる、私の顔は目からの大量の水と鼻水がズルズルで、人様に見せられ顔じゃない必死に両手で顔を覆って青柳先輩に従い歩くのが精一杯で…



「いやっ…違うんだ…青柳待ってくれ!!デートとかじゃないんだ…」


「カイン様何をそんなに慌ててらっしゃるのですか?」



どんどん遠退く背後でヒロインとヒーローの声が聞こえる、貴方達の夜祭りイベントを邪魔してしまってごめんなさい…



ごめんなさい…

ごめんなさい…



身の程知らずでごめんなさい…


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