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第3章 特別任務

特別任務 4

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「どうした。俺の顔に何かへんなもんでも付いてるか?」
「いや……」
「なんだよ。変な奴だな、久しぶりに再開したって言うのに。ハハハ」
「いや……」
「ああ、この格好? 男子校に潜入しててね。まあ、そのうち直るさ」 

 レイは、あまりに違和感なく男になっているノアに、何とも言えぬ居心地の悪さを感じていたが、だからと言って何かを言えるわけではなく、黙って串焼きにかぶり付いた。ノアは相変わらずガツガツと食事をとりながら、今までのことを男言葉のまま話し始めた。
 
 その任務は男装して男子校に通い、ある貴族の子供を秘密裏に護衛するという簡単なものだったらしい。しかし、静かに行動できるようなノアではない。護衛の理由が脅迫状だと言うことを知ると独自に調査をはじめ、派閥争いが絶えぬ殺伐としたクラスでリーダー格の男たちを倒し、自分がボスになった挙句、犯人を見つけ出し吊し上げ、おまけに仲直りまでさせてクラスをまとめ上げたらしい。

「せっかくいいお金をもらえる仕事だったのに余計なことをしたから。アヌシビ様に怒られちった。ハハ」

 そう笑うと、ノアはまったく反省した様子をみせず、ムシャムシャと美味しそうに食を進めていった。

「こっちはどう? みんな元気か? モーラはまた痩せたな」
「おう。飯が足りねー」

 モーラはそう言いながら何も付いてない串をガシガシと噛み締めた。
 トーブが黒パンをちぎりながら真顔で返す。

「ここはまだ平和なもんさ。だがテト地区はいよいよ本格的な戦闘に入りそうな感じで、そのピリピリ感がこっちまで伝わってきてるよ」
「そうか。いよいよか」とノア。
「ランスとビルバが心配だな」レイが口を挟む。
「大丈夫さ、あそこには怪物グレーンがいるだろ。それより、俺らはひとまず日々頑張るしかないぜレイ。はやく、あのブルズブートキャンプを卒業だ。卒業あるのか知らねえが」

 トーブは悲観的が表情で上を見上げた。

「え、お前ら、まだあれやってんの?」

 とノアが驚いた。
 レイとトーブは黙ったまま、ストラスブルを真似てポージングをとった。
 更にパワーアップ筋肉が弾ける様に盛り上がった。
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