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第1章 シエンナ騎士団

シエンナ騎士団 22

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「バナナを食う、幸せになる、元気回復、体力倍増、どうだコレ」
「……バカが」
「ダメか? 私には効くんだけどな」
「バカだからな」

 ノアのキックが、飛んできてレイの体の前で止まる。

「今は辞めといてやるよ、フン!」
「……」
「……応援するぜ」

 ノアが脚を下ろしながら呟いた。

「ほら、私の祈りはレイが魔法使うやつに勝って通じたし。レイの祈りもこうして叶ったからさ。今度もいけるよ。きっと」

 と言ってノアはバナナを指でクルクルと回した。レイは「すまんな。食べ物の事は祈ってなかった」と心の中で呟いた。

「レイが無事に勝ちます様に」と言ってノアが手を組み上を向いた。そのまま「ごめんな。こんな事しかできなくて」と続けて言う。
「いや」

 レイは誰かの応援を受けることなど、故郷の祖母そして師匠を亡くしてから一度もなかった。ここに来るまで、傭兵、用心棒、人足、農夫の仕事手伝いまで何でもやったが、常に一人、孤独という闇が心の芯を凍てつかせていた。そんな心に炎が灯った気がした。

「私はもう、レイの事、同志だと思ってるからな。だから、本気で応援する」

 レイは大きく息を吸った。そして「十分だ!」と力強く言って目を閉じた。
 脚を組み、膝の上で手を重ね合わせる。

「どうしたレイ? なんだ、何か必殺技でもあるのか? それとも諦めたのか? 諦めるな、この祈りむっちゃ効くからな。諦めるな、レイ~」
「……うるさい黙れ!」とレイが一喝する。
「静かしてやれ。あれは座禅と言って精神を統一する時にやる所作だ。どうだ、俺、物知りだろ」

 モーラと言う男が自慢げに言った。
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