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第1章 シエンナ騎士団

シエンナ騎士団 11

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 相手はしばらくすると間合いも測らず、刀身を真っ直ぐ構えて突っ込んできた。レイは直線的に振り下ろされる剣をサッと避けてすれ違いざまに、相手の剣を叩き落とした。バランスを崩し倒れた相手を見て、師匠アイウェルに「重要なのは間合いだ」と何度も言われていた事が頭をよぎった。

「勝負あり。勝者レイ」

 相手が大した事なかった事に一息つく。怪我もさせずに済んだ。
 それよりもレイはノアが気になった。木製の武器はどれも大きく重い、軽くてもブロードソード。レイピアや軽いスモールソードの類はなかった。彼女のスピードは本物だ間違いない。しかし、自分の武器以外、この男用の重い武器で戦えるのか?

 案の定、ノアは試験官に文句を言っていたようだが、取り合ってもらえなかったようだ。ブツブツ文句を言いながら一番小さな槍を手に取った。
 
 ノアの相手は自分達より明らかに年上の男で、ロングソード(両手剣)を右上段に構えていた。構えが柔らかい、一眼でかなりの経験者だと分かった。それに対しノアは槍の刃先を地面に付けやる気なく引きずるように持ち男の前に立った。

「気をつけろ!」

 レイの声が届く前、開始の合図と共に男の斬撃が飛ぶ。ノアは地を這うように低く斬撃を避け転がった。男は身を翻すと連続で剣を打ち下ろして来る。ノアは身をかわしながらもその斬撃を槍で受けた。バキッという鋭い音と共に、地面についた刃先部分とノアの間で槍が折れた。
 
 激しい戦いに周りの者たちから「オオー」という声が上る。

 ノアは「ありがとう」と呟くと、槍の残った棒の部分を軽く振った。

 「うん、使いやすくなった」

 と、その棒を剣の様に持ち半身で構えた。

 すぐに男は上段からの連撃をしかけてきたが、ノアは風の様に攻撃を避け懐に飛び込むと、男の鳩尾部分にその折れた棒を突き刺した。

 もんどり打って倒れる男を尻目にノアは試験官に「これでいい?」と言ってのけた。
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