上 下
103 / 245
第3章 特別任務

特別任務 11

しおりを挟む
 次の日の訓練から、何かにつけてディックと勝負をすることになった。ある時はソード&バックラーで。これはレイの方が技量が上なのだが、ディックが負けを認めず延々と試合を続けることとなった。またある時はダガーナイフでの試合を行った。これは圧倒的にディックが上で、レイはダガーナイフの両手持ちなどを教えてもらった。

 レイは訓練が終わった後、よく一人で自主的にブルズブートキャンプを行ったが、これにもディックは勝負を挑んできた。地獄コース、天国コースと必死についてきていたディックだったが、輪廻転生コースのぶら下がり腹筋でとうとう力尽きた。それでも負けは認めず、「まだ終わってねー」と叫んでいた。

 激しいトレーニングをして体の動かなくなった頃には、ディックがレイに指文字の指導を行った。広間に寝転び、指だけをそっと動かす。

「デカい。もっと小さくだ」
「こうか?」

 とレイがぎこちなく返す。

「もっと小さく自然にだ。秘密裏にやるためのものなんだからな。いいか、よく見ろよ」

 そう言うとディックが、微かにうごかし。

「言ってみろ」
「……でぃ、く、さ、い、きょ、う」
「最初の文字は『ディック』だ」
「……」
「今は人手不足でここにいるが、俺は隠密部隊所属だからな。最初にこれを嫌と言うほど叩き込まれた。せっかくだからお前にも叩き込んでやるよ」
 
 それから体の動かない時は指文字の特訓が始まった。

「ひとつ、ひとつ丁寧にやれ。早さはそのうちついてくる。ほら、これは何て言ってる?」
「せ、ん、せ、い、あ、り、が、と、う」
「そうだ、俺はお前の上官でもあり先生だ。師匠といってもいい。ハハハハハ」
「……」
しおりを挟む

処理中です...