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第4章 禁術の魔法

禁術の魔法 39

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「我はフェンバッハ。トラヴィスの騎士! 敵を討ち取れ! いざ、将軍は我と勝負せよ!!」

 派手な紋章入りのマントをそれぞれに纏ったトラヴィスの騎士が、トゥーバル兵の側面から襲い掛かった。後方に広がる森のなかからは、三千の傭兵たちが続いてくる。

 不意の攻撃を受け、崩れていくトゥーバル兵の陣形。すぐに後方に控えていた騎兵を向かわせたが、勢いに乗ったトラヴィスの進撃を止めることはできなかった。




「ええい。あいつらは退却したのではないのか?」

 ドランド将軍が、こっそり逃げようとしていたオレーヌ卿を怒鳴りつけた。

「……臆病者の馬鹿どもが何故」

 オレーヌ卿はトラヴィスの騎士たちを苦々しい目で見つめ、キリキリと歯を軋ませた。そんなオレーヌ卿の横に、ヒュッと一本の矢が飛んでくる。「ヒッ」とバランスを崩し、馬から落ちそうになるオレーヌ卿。

「オレーヌ下がっておれ」そう言うとドランド将軍が馬上でロングソードを振り上げた。「止めよ! 後方の大隊はトラヴィスの騎士たちにあてよ。急げ!!」



 
 シエンナ騎士団とトゥーバル兵の間では激しいパイク戦が繰り広げられていた。炎の壁により、前線が崩壊混乱していたトゥーバル兵ではあったが、その物量にものを言わせ、シエンナ騎士団の壁に圧力をかけ続けていた。

 風の魔法を使っていた老翁の騎士カディフが、トラヴィスの騎士達の攻撃を見て大きく両手を振り上げた。

「もう少し耐えろ! トラヴィスが側面よりトゥーバルを崩しにかかっておる。耐えるんじゃ」

 そう言うと、右手に風を、左手に炎を孕み、轟音とともに掛け合わせると炎の竜巻を生み出しトゥーバル兵に向かって投げつけた。それまで前線が崩れようとも、後方から絶えず圧力をかけていたトゥーバル兵。その後方にいきなり攻撃が浴びせられ、新たな悲鳴と混乱が沸き起こった。
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