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第4章 禁術の魔法

禁術の魔法 43

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 一度、両陣営の均衡が崩れると、あとは勝負にならなかった。逃げ惑うトゥーバル兵を、シエンナ、トラヴィスの両騎士、そして傭兵たちが追い立て、戦場には一方的な風が吹いた。トゥーバルは魔法使いの活躍により、将軍を初め本陣を無傷で退却させることができたが、2万にも及ぶ傭兵部隊は壊滅的な損害を受け、そのまま国境近くまで遁走することとなった。

 静かに動いていたコウナの隠密部隊が、しっかりと敵の兵站を潰したことも大きく、トゥーバルに盛り返す隙を与えなかった。



 それから1週間ほどの時間が経った。レイたちは小村マノに残り戦争の後片付けに追われていた。森の近くに穴を掘り、亡くなったトゥーバル兵を埋葬する。敵とはいえ、自分と年端も変わらぬ者もいて、目を背けたくなる様な作業だった。

 情勢が変わっていたら、ここに埋葬されいたのは彼ではなく自分。そして、ノア、トーブ、アルマーマといった仲間だっただろう。とくに最前線にいたランス、ビルバ、モーラなどは紙一重のところに立っていたのだ。レイはやりきれぬ思いを抱き、穴の中に並べられたトゥーバル兵の亡骸を眺めていた。
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