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第5章 メテオストライク

メテオストライク 27

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「大事なもの?」

 戸惑っているレイの横からタートゥールが口を挟んだ。

「ほら始まった。いいじゃんそんな意地悪しなくても」
「だまれ小僧! お前が管理者権限を持ってなければ、すぐにでも八つ裂きにしてくれるのに!」
「口も悪いし……」

 タートゥールが小石を蹴飛ばす。男は飛んできた小石に指をあて破裂させた。

「フン! 私は紳士だ。約束は守る。さあレイとやら何を差し出す。安心しろ。どんな契約を結ぼうと影響のあるのはお前だけだ。周りの奴らに影響は及ばない」
「……」

 レイは何と答えて良いか迷い腕を組んで押し黙った。

「どれ、少し過去を見てやろう」

 男はレイに向け片手を上げると目を瞑った。

「なるほど。そこにいる女、ノアとか言うのか。よし、その娘に会うのを禁じる」
「!!」

 レイは驚き顔を上げた。

「嫌か? それでは、シエンナ騎士団を抜けてもらおうか」
「……」
「それとも、これまで生きてきた記憶をすべてもらおうか。うん?」
「……」
「どちらにしろ、お前に取って大切なものでなくては契約は成立しない。さあ、どうする? 俺と契約を結ぶんだ。それなりの対価を払ってもらうぞ」

 レイが苦渋の表情を浮かべ押し黙った。

「……1週間猶予がほしい」
「いいだろう。だが3日だ。3日後の夜に来い」
「……分かった」
「では3日後の晩に」
「待て。契約が破られたらどうなる?」
「永劫に魔法が使えなくなるだけだ。契約破棄。まあ、その反動でどうなるかは知らんがな」

 男はそう言い残すと、もと来た空間の裂け目に帰っていった。
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