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第5章 メテオストライク

メテオストライク 30

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 次の日の朝。
 レイは見回り警備の前に時間をもらい、アルマーマとトーブにことの顛末を話した。そしてシエンナ騎士団を辞めることを、静かに去ることを告げた。

「はぁ? 何バカなこと言ってんだよ!」

 最初はふざけて聞いていたトーブだが、最後にはつかみかかる勢いでレイに言った。

「すまん」
「すまんじゃねえよ。何だよそれ。そしていきなりすぎるだろ。えっ? 他に、他に方法はねえのかよ」
「……ない」

 レイは契約条件に関しては、シエンナ騎士団を抜けることしか話さなかった。考え抜いて選んだ選択肢だった。

「レイ、そんな力いらねえだろ。そんな力があってもなくてもレイはレイだ。だからいらねえだろ。行くなよ!! 俺たちは俺たちのできること、精一杯やろうぜ、な」
「俺は…… 精一杯戦いたい。皆のために、この地のために。ラウドの森で、テト地区の戦闘で、力のないことを痛感しただろ。俺はもっと強くなりたい、もっと強く生きたい、皆んなを守れる力が欲しい……」
「レイは、もう十分強いじゃないか。十分だろ」

 トーブは泣きそうな顔をしながらレイの胸ぐらをつかんだ。
 アルマーマが、トーブの手に自分の手を添える。

「トーブ。レイは禁術の魔法使い。私が風の魔法使いで、トーブが炎の魔法使いであるように。レイは禁術メテオストライクの魔法使い。その力は彼の一部。きっと大切な。それを、奪うことは私たちにはできないわ」

 トーブはレイを離すと後ろを向いた。

「俺は、……分かんねえ」

 そう言って足速にその場を去った。
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