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エピローグ2

エピローグ2 4

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 中央に立ち構えるだけで、全身から汗が滲み出てきた。ルヴィエの一挙一動に神経を張り巡らせる。初太刀、気づいた時には切っ先が胸元にまで伸びていた。ノアは寸でのところで避けながら、下方よりショートソードを振り上げたが虚しく空を切った。

 二人の激しい応酬が続く。スピードは互角に思えたが、だがやはりルヴィエの方が力が強くノアは押し込まれ後がなくなった。組み合った瞬間、ルヴィエが「パワー不足だ」と呟く。

「パワー不足? 今までのはフェイントさ。昔の私と一緒にするなー!!!」

 ノアはそう言い放つと、ルヴィエを押して飛び退き、残像を残すかのようなスピードで横に回り込んだ。シエンナでの訓練でつけた力を、すべてぶつけ込むように連撃を繰り出す。ルヴィエは下がりならその連撃を綺麗にいなしたが、最後の一撃が頬を掠め血が滲んだ。

「木剣でこの威力、大したものだ」

 そう言って構えたルヴィエの目の色が変わった。凄まじい闘気に気圧されそうになる。同時にノアも負けぬ闘気を奮い立たせた。

「そこまでー!」

 これ以上は危ないと思ったレンシア嬢が声をかけた。

「ノア、もう十分です」
「すみません。あの。お腹に何か入ってれば、もう少し力がでるし強いのですが。着いてすぐ、食事の時間がなかったもので……」

 レンシア嬢は始めて笑って、

「合格よ。これからは私の騎士としてトラヴィスに仕えてもらいます」と言った。

 こうしてノアもシャルルと共にレンシア嬢のお気に入りとなった。その後、どこに行くにも従者と共にレンシア嬢に付いていくとこととなる。


 そしてあっという間に1年が過ぎた。
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