神に呪われた男が英雄にされる話

ツワ木とろ

文字の大きさ
2 / 7

2・チートがな話

しおりを挟む

 アルカスは生まれてから3歳までの記憶がない。
 だが、それより前の記憶があり、前世の自我が融合している。

「にーにー」

 2つ下の妹、レピーに懐かれ、溺愛しながら彼は思う。

(何処が呪われてるんだろう)

 ウゼスとのやり取りが夢だったのではないかと思われる。

 アルカスは比較的裕福な村で育つ。
 母、メーネは赤茶な髪で、とても美しい清楚な女性。
 父、アンピリオンはたまにしか帰って来ないが優しく、男でも見惚れて仕舞いそうな容姿で、アルカスとレピーと同じ金髪だ。
 2人の容姿から自分の将来に希望を持つ。

(これはきっとモテるはず)

 そう思った彼は皮を剥いた。

(5歳から剥けてたら立派に育つでしょ)

 将来の安寧を確信している。
 そう思うのも、父が王都に暮らす、裕福か高貴な人だから。
 母は現地妻で、父の支援が村を豊かにしているお陰で村人から良くして貰えている。
 子供にそんな内情を話す者は居ないが、普通の子供でも薄々気付く。

(もしかしたらハーレムスローライフおくれるんじゃね?)

 そんな期待に思いを馳せる。



 6歳の誕生日、男子のその日は祝われると言うよりも振る舞うのが村の習わしだった。
 振る舞われる山羊を自分で捌く。
 それがとにかく憂鬱だった。

(嫌だなぁ、怖いんだよなぁ)

 村で暮らしていれば山羊を絞める所に遭遇する事もしばしばだったが、アルカスはそれが苦手だ。
 見てしまった後は当分肉が食べれなくなる。
 その日の山羊は既に大人が絞めてくれているので捌くだけなのだが、山羊の死骸を前に立ち尽くしてしまう。

「初めは、おっかないよな」

 と父、アンピリオンが後ろから頭を撫でる。
 アンピリオンが朝から家に居るのはアルカスが記憶している限り初めて。

「でも、お前の為に死んでくれたんだからちゃんと捌いて食べてあげないとな」

 言いたい事は分かる。だからといって手の震えは止まらない。
 アンピリオンはそんな息子に手を添えて導く様に一緒に捌いてくれた。

 何とか捌けると、達成感が感じられる。

「綺麗に捌けてますね」

 母、メーネが目線を同じにして頭を撫でる。

「うん。お父さんに手伝ってもらったけど」
「それでもちゃんと出来て、立派ですよ」

 メーネはそう言うと立ち上がり、アンピリオンを見る。

「(良く出来ましたね。練習したのですか?)」
「(ああ。ここ1ヶ月毎日)」

 小声で喋っているのでアルカスは肉に夢中で聞いていない振りをする。
 この通過儀礼は田舎特有のモノで育ちの良いアンピリオンは行っていない。
 なんなら1ヶ月前まで包丁を握った事も無かった。

「(アルカスの為にありがとうございます)」
「(何、ただ父親らしい事してやりたかっただけだよ)」

 両親の愛情を感じる。

(こんな幸せな呪いとかないでしょ)

 ウゼスとのやり取りは夢だったんだと思う。



 10歳になった時、アルカスは数日間高熱にうなされた。

(インフルエンザかな・・・)

 そんな名称は誰からも教わっていないし、そもそもリシギアに存在しない。
 そう言う知識は口には出さない様にしているが、無意識に出てしまう事もあり、村では聡明な子と持て囃されている。

 熱が治まり、ベッドから出ると妹、レピーが居なかった。

「お母さん、レピーは?」
「にーにーが元気になる様にって山羊の乳を貰いに行ってくれてますよ」

 なんと愛おしい妹なのだろうと顔がにやける。

「じゃぁ迎えに行ってくるね」
「体が大丈夫ならいいけど、無理しないでね」
「うん、大丈夫。行ってきます」

 迎えに来たと知った時のレピーの喜び様を想像して、ワクワクしながら家を出た。

「おや?アルカス君。もう風邪はいいのかい?」

 自宅から1番遠い家に来た。
 近頃子を産み、乳の出る山羊が居るのはこの一軒のみ。

「はい、治りました。あの、レピーが来ませんでしたか?」
「レピーちゃんなら一足先に帰ったよ」

 入れ違いだった様だ。

(すれ違って気付かない様な道じゃないんだけどな)

 アルカスは行きとは違う道を足早に戻る。
 そこに男の子3人に囲まれて、うずくまって泣いている女の子。
 女の子をイジメたくなる男の子心は分かるが、見過ごす訳にも行かない。
 急いでいるのだが周りの評価も気になるし、何より颯爽と助けて女の子に好かれたい。

(将来の嫁候補?)

 そんな事を考えながら走りよる。

「やーい、妾の子。お前も妾にしてやろうか」

 アルカスは自分達家族が村の経済に多大な影響を与えているので、自分の力で無いにしても敬われている存在だと思っていた。
 そんな風に言われているとはつゆほども思っていなかった。
 イジメられている娘が妹だと分かった途端、もの凄い怒りが湧いてくる。

「おい!やめろよ!」

 男の子の腕を掴み振り返らせる。

「いてー!いてー!痛いよー!」

 男の子が肩を押さえながら転げ回る。

「てめー、何しやがった!」

 アルカスも状況は理解していない。

「聞いてるのか!?」
「触るな!」

 肩に触れた手を振り払う。

「あぁぁぁ!」

 振り払われた男の子も肘のうら辺りを押さえ、膝から崩れる。
 2人共触れている所より先がダランと垂れている。
 脱臼と骨折か。
 何故そうなったのか分からないが形勢が自分に向いているのは確かなので、

「お前ら、二度と妹に近付くな!」

 と啖呵を切った。

「お前達、何をしているんだ!?」

 男の子の絶叫で大人が集まって来た。

「大丈夫!?」
「レピーちゃんもどうしたんだい?」

 男の子達を介抱する大人とは別に男性が1人レピーの肩を撫でる。

(子供が妾なんて言葉使うって事は大人が話しているのを聞いたからだ)

 そう思うとまた怒りが汲み上げる。
 そしてレピーの肩を男が撫でるのが許せなくなってくる。

「汚い手でレピーに触るな!」

  ぐちゃり

 男の子達の脱臼や骨折は偶然で説明付きそうだったが、今回はそうはならなそうだ。
 明らかにアルカスの握った前腕が握り潰されている。
 彼自身もそれで認識する。
自分が怪力になった事を。

(これってチート能力ってやつ?)

 ウゼスとそんなやり取りをしたような気がする。
 夢ではなかったのだと再認識する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...