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2話 アイドル始めました
しおりを挟む出会ってから3ヶ月。
かくかくしかじかあり、俺はマネジメント業を続けながらシールのマネージャーをしていた。
当然断りつづけていたが、つい先日折れてしまったのだ。
「もし、私をアイドルにできたらおっぱい揉ませてあげる!」
「おっぱいバレーか!」
「この世界の半分やろう」
「竜王か!」
「えー、何だったらいいわけー。じゃあもう何もかも?ぜーんぶあげるからぁ~」
商店街のど真ん中へたり込む、金髪魔女っ子シール。
こいつの実は神女と呼ばれる世界に一人だけの存在で、その証拠に魔力パラメータが存在せず、聖力と呼ばれるパラメータがあるのを見せてもらった。
協会にいる神父に聖力があるのを確認したし、確かに色々と逸脱した存在なのは間違いないらしい。俺調べ。
「この腐った呪いを解いて超絶イケメンにしてくれるとかじゃないと引き受けんぞ俺は」
「いいよ!」「いいの!?」
「当たり前だよ!呪いの一つや二つイケメンの一人や二人、シールの手にかかれば、ちょちょっちょいだもん!」
「なんか、ちょい手間取りそうだな」
「元があれだからねー」
「お前言う時言うよな、断るぞ」
「えー!ごめんごめん!あれだよね!なぎって、目が魚みたいで可愛いよね!!」
「……ほんとに治せんだろうな、この呪い。もし治せなかったら今の暴言に対する慰謝料とこれまでの迷惑料で多額の請求をしてやる!!」
「シールは嘘つかない!絶対治す!」
なんなんだこの自信は。まさか本当に治せるのか……?
そう思ったのが運の尽きだった。
確かに今まで色んな人(町医者から宗教団体まで)に相談してきたが1度も治せるとは言われなかった。
けど、こんなバカに希望を持つなんて……俺の方がバカだった。
「……わかったよ、1株買った」「やった!」「売るけどな」
「じゃあ早速、デビューの曲とー」「ぃゃぅるって……」「衣装!それからー」「……」
「ステージと、日程!色々決めなきゃね!」「話聞けよ!!?」
……という事があり、呪いを解くため、イケメンになって美人エルフと結婚して超可愛い娘を作るため、俺はアイドル事務所を開業したわけだ。
場所はとりあえず、立地のいい(町の中心部にある)HGパレードの2階を使う事にした。(スキンの奴が家賃だのなんだの言ってきたので、「ならこのバカ女の面倒お前が見ろ」と言ったら、見たこともない爽やかな笑顔で「これから宜しくな兄弟」と言ってきた)
「ところで、アイドルってこっちの世界にないよな?なんでお前知ってんだよ」
「んっとねー、曲が聞こえてきたんだよねー」
「なんだよ、オカルトか」
「この、四角いヤツから」
「アイフォン!?」
白ロムとか言われる、ジョブスの遺産じゃん!!
なんでここにある!?
見慣れた機械をふんだくり、操作すると「中島幸太」の携帯であることが発覚した。連絡帳には「中島幸恵」と書かれているのみで生年月日からおおよそ同い年ということが予測できる。
……悲しいやつめ。こいつのことはなんとなくわかる。メアド交換という文化があったガラケー時代は良かった。クラス替えした瞬間、仲の善し悪し関係なくクラス全体がふんぐほぐれつ電波を飛ばし合うイベントがあったのだ。メアド交換の波に乗れば地味な男でも、イケイケ女子とメルアド交換出来た。
しかし、今はもう違う。SNSが普及し、繋がりたい相手とだけ繋がり、独自のコミュニティを設立。そのコミュニティの中でさえ誰々派、何々派のような派閥ができさらに内部分裂するような時代だ。
地味で閉鎖的なメガネ男子にメアド交換など夢のまた夢。
まぁ、俺の事なんですけどね。
同情の念を抱きながらなんとなしに写真フォルダを開くと、黒髪ロングの清楚系美女とのリア充写真が大量に出てきたのでケータイを投げ飛ばした。
中島くんパツキンのイケメンじゃん、同士じゃねぇじゃん!何がずっと一緒♡だよ!!ふざけんな!!
よくよく考えればSNSで繋がってるから携帯の番号とかいらないのか。
「ちょっと!乱暴しないで!壊れたらどうするの!?」
「はっ!確かに!」
シールの言う通りだ。貴重な情報源であるアイフォン、反射的にソファに投げたので問題は無さそうだが、ぽいぽい投げてしまうのは軽率だった。
気を取り直し中島幸太のアイフォンを操作すると、動画フォルダに48、クローバーZ、マニアックな地下アイドルまで多種多様なアイドルのライブ映像が入っているのを見つけた。
「なるほど、ここで色々と情報を仕入れたわけか」
「そうそう!私もこんな風にやりたい!」
やりたいと言われても……
なぎは冷めた痛い子を見る目で、シールを見つめる。
「見つめ返す!」
「お前、問題山積みだぞ……」
実際、アイドル事務所を立ち上げた事など一度もないし、自分自身にプロのマネージャーと呼ばれるような知識も技量も無い。
それプラスでシールにカリスマ性(笑)が備わっているとは思えない。
現世にいた頃の習慣で、インターネット検索をしようとしたが、案の定ネットワーク接続はできなかった。
「あー……万事休すだな」
「何をそんな難しく考えてるのー?やることなんてシンプルでしょ!歌って踊るだけ!」
「って、言うけどな。お前じゃあ踊れるのかよ」
「ううん」
「じゃあ、歌は?」
「うーん、私が歌ったらみんな逃げてった」
「……」
まじかー、まさかうちの子ジャイアンだったなんて。
せめて駆け足アイドルを追っかけるオタクくらいは踊れるかと思ったわー、あらやだ。
「……ちょっと踊ってみろ」
「うん!いいよ!」
「じゃあー、行くぞー」
アイフォンの再生ボタンを押すと「恋するふぉーちゅん♪」と音楽が流れそれに合わせ華麗なステップを披露するシー……ル?
ウィーン、ウィーン、ウィーン
「なんでロボットダンスなんだよ!」
「なんか人前で踊るとこうなるんだよ~」
まじかー、まさかうちの子ロボットだったなんて。
せめて人間だと思ってたわー、あらやだ。
「まずな、リズムをしれ!」
「リズム?」
「ダンスは音に合わせて踊るもんなんだよ!」
「わかった!やってみる!」
ウィーン、ウィーン、ウィーン
「さっきと変わってねぇええよ!」
「えー!じゃあ、なぎ踊ってよ!」
「お、俺!?なんで!?」
「なんか詳しいんだもん!やってよ!」
俺は言われるがまま、アカペラで軽く歌いながら振り付けを見様見真似でやってみた。
所々間違えはしたが一応ワンフレーズ分は踊れた。具体的にはそんなに悪くないところまでだ。
「えっ!凄い!なぎってアイドルだったの!?」
「凄かねぇよ!これが普通なの!」
「えええええ!?も、もしかして!」
「やっと気付いたか、そうお前はなアイドルの才能なんて」
「なぎって、オタク?だったの!?」
「ちげぇよ!話聞けよ!なんでオタク知ってんの!?」
「だって、アイドル好きな人はオタクっていうんでしょ?」
「どこでそれを!?」
「それ」
「またアイフォンかよ!?」
「なんかねー、槍みたいなうねうねーってしたやつ押したら流れたの」
槍みたいなやつ……?あっ、ボイスメモか。なんだ、眼鏡オタクに暴言吐いてるところ録音して、仲間内で誰の暴言が1番傷つくかグランプリでもやってたか?
ちなみにこの悪趣味な大会、経験談なのが辛い。
嫌な記憶を思い出しながら画面をタップすると、15秒ほどの短いボイスメモが一つだけあったので、それを押して音量調整しながら再生する。
『幸太って顔はいいけど、アイドル好きすぎてオタクだよね。ちょっと気持ち悪いから別れて』
こうたぁあああああああああああああああああああああああああ
悪かった!俺が悪かった!お前は好きなもの好きだっただけだよな!ひでぇえ女だ!ぶん殴れ!
「お前、これ聞いて……」
「うん、幸太くん?がフラれたのはわかった」
「えっ、じゃあアイドルなんてやめろよ、嫌われるよ?」
「そんなことないよ!それはその女の子が悪い!」
「おめぇ、わかってんじゃねぇか!」
「でも、こんな風にアイドル見てるのって……ちょっと、気持ち悪い」
シールが指さす画像フォルダには、アイドルによく似たセクシー女優のあられもない姿がリア充写真よりも沢山出てきた。
中には、鎖でしばっているものまで……
「……」
幸太くん、ごめん、俺もそう思うわ。
縛りプレイは好かんのよ。
俺はこっそり、アイフォンをポケットにしまった。
また、夜に開こう。
何のためにだって?もちろん勉強さ。
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