七色の君へ

餅月箕白

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第一章『Another World』

【第一話:雨草 滴】

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帝国歴 二百八年 五月 八日

 ここは、だだっ広い草原。
ただいま戦闘真っ只中だ、相手はスライム。私は、スライムめがけて突進した。
背中にこさえている剣を鞘から抜き、高らかな咆哮を上げ、剣を振り下ろした。
 『はぁ!!!』
高速に振り下ろされる刀身はスライムの柔らかい身体を切り裂いた。
切り裂かれた身体は、瞬く間に再生し、ミニ・スライムへと、分裂した。
このスライム、部類は〈妖魔族〉に分けられる。〈妖魔族〉は、かなりトリッキーな戦闘が得意な種族であり、〈分裂〉、〈分身生成〉などのスキルはもちろんのこと、戦闘に有利に働くスキルを多く持っているのが特徴的である。
そのため、大体の初心者は、割と苦しめられる。
現在、レベル18となった私、『雨草滴』はそんなことになることは、ないのだが。
危険を感じてはいないが、一応念の為、数メートルほど距離をとっておいた。
オーバーキルほど、身の危険を高めるものはない。
一息ついた私は、剣を振りかぶり、地面を蹴り、スライムへと再度突進した。
それを見たスライムも、大人しくやられるわけもなく、精一杯の抵抗、つまり「飛び上がったのだ」。ただ飛び上がったのではない。スライムの基本攻撃、たいあたりがこちらに向かって飛んできたのだ。たいあたり自体には、殺傷能力はないため、よほどレベルが低くない限り、避ける必要もない。なので、私はその攻撃を避けず、そのまま真っ直ぐに剣を振り下ろした。神速のごとく振り下ろされた刀身は、スライムの身体を一刀両断した。両断されたスライムは更に分裂することなく、『チリン、、、』というと鈴の音とともに爆散した。残り一体もそのまま同じく倒した。
 ドロップしたアイテム、〈青い液体〉をアイテムストレージから取り出した瓶に入れて、私は剣を背中の鞘に収めた。 
 その後、数匹のスライムを倒し、帰路を辿った。
帰り道は、片道45分。
この狩場から一番近く、近隣では最大の街、「エレジオ」に向かった。
私が、街につく頃には、夕日が、沈んでいた。
私はいつもどおり行きつけの宿屋に向かった。
 そうするのにも理由がある。家を一軒買うのには、頭痛がするレベルの金額がかかる。そんなお金を持っているわけもなく、毎日貧相な宿屋生活を送っているのである。そして、私はこの街に何故かずっと居るのだ。
この世界に来てから、3ヶ月間。
 毎日宿に泊まる用、そして食費、稼ぎに稼いでいるのにも関わらず、その二つに当ててしまうと、一日の稼ぎ分なんてすぐに溶けてしまう。この街は、この世界に来て、戦うのが怖い、もしくは戦い以外で職を見つけたいという冒険者が多く滞在しており、とても栄えている。初級クラスの冒険者ばかりなので、宿泊費も食費もあまりかからない設定になっている。しかし、初級クラスが多くいる街なだけあって、街周辺にはスライムや、ミニゴーレムなどのいわゆる〈最弱MOB〉しか自然ポップしない。そのため、レベルがこの辺であげられる最大値は、20。私は18なので、そろそろこの辺りの限界にくる。
狩る効率はいいが、経験値及びお金の効率は非常に悪い。
 私は、いわゆる〈ソロ〉に分類される冒険者なのだ。
仲間である〈パーティーメンバー〉がいない分、負担はないがリスクがある。
万が一の事態になったら、対処できない。
これが、ソロであるが故に課せられるリスクだ。
 私が、街から出られないのは、ソロであるが故に、強いモンスターに出くわすのが単純に怖いだけなのだ。
 正直そろそろこの街を出て、次の街に行くべきと考えてる冒険者は少なくはない筈だ。私は、パーティーを作ろう作ろうと思ってはいるのだけど、中々一歩が踏み出せずにいた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんなことを考えているうちに、私は宿屋に着いていた。
 ーとりあえず、明日考えよ。
そう、これが毎日のルーティーン。
自分にため息をつくことしかできない私は、一体これからどうしたらいいのだろうか。
 難しいことは何もないのだ。ただ、ギルドの掲示板に『パーティーメンバー募集』の貼り紙を出せばいいだけの話だ。

それが、できない私の臆病さにいつもため息がでる。
夕食を済ませ、寝床につくと、そのまま寝てしまった。
 最弱MOBとは言えど、疲れがでるのは事実だからね。
 最近よく夢を見る。私が仲間と共に、凶悪な敵に立ち向かう姿を。現実になって欲しいけど、そう簡単にはいかないんだな。これが。

【第二話】に続く、、、。
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