七色の君へ

餅月箕白

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第一章『Another World』

【第三話:同級生という名の脅威】

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帝国歴 二百八年 五月 九日

 私は、早朝に目が覚め、部屋を出て、朝食を食べ、宿屋を出た。
この日は、行きつけの鍛冶屋に剣の修理を依頼しに行くのだ。
 「エレジオ」は、北区と南区の二つに分けられており、北区は住宅や貴族の施設が立ち並んでいる。南区は、商業施設が多くあり、主な買い物等は南区にお世話になっている。鍛冶屋は南区にある。
これから向かうのは『桜ノ園(さくらのえん)』という名前の鍛冶屋だ。店主の名前は、春乃 シーナ。
 偶然にも、元の世界では同じクラスにいた子なのだ。この世界にやって来て、リアルでゲームをやっていた時と同じ《鍛治職》に就いたらしい。この世界、元のゲームと類似点が多く、《職》は沢山ある。どれに就くかは個人の自由で、《職》も極めると、《マスタークラス》になるらしく、そこまでいくと、色んな意味で便利になるらしい。詳しいことはよく分からないんだけどね。
 三ヶ月前、半壊した剣を直そうとたまたま立ち寄った鍛冶屋がこの『桜ノ園』でそれからは、かなりの頻度でお世話になっている。ちなみに今、私の使っている剣《黒鉄の剣+8》も店主であるシーナが作ってくれたものなのだ。ただ、オーダーメイドの武器を扱うと、この店主ぼったくって来るから、結構めんどくさい。
入口のノブをひねり、ドアを開けると、
「やっほ~、シーナ。修理お願~い」
と、元気よく入店した。
 目の前にいるのは、少し小柄な黒髪ロングの少女だ。今、絶賛棚卸し中である。
後ろを向いたまま、軽い挨拶をしてきた。
「ああ~、いらっしゃい。また、壊したの?今月四回目なんだけど、早過ぎない?どんだけ、剣使いが荒いのよ」
「まぁ、剣への愛が強いんだろうね!」
「強かったら、そんなにボロボロにならないっての」
「んー、そんな事より!修理よろしく!」
「別にそんなことじゃないよ!修理は、しとくよ。最近、どうなの?」
「何が?」
「ギルドの依頼よ、収入源の状況はどうなってるのかなって」
「うーん、あんまり良くはないかなぁ」
そう言いながら、背中に背負ってる鞘を取り、台に置いた。
シーナは、それを手に取り、刀身を少し抜いた。その表情はムッとしている。
「で、何と戦ったらこうなるのよ」
「いや~、その辺の中BOSSクラスですけど~」
「滴のことだから、絶対にスライムとかミニゴーレムでしょ」
「バレたか、、、」
「まぁ、いいけどね。こっちもお金が貰えればそれでいいし。じゃあ、直しておくから、ギルド行って依頼でも確認してきたら?小一時間それで、潰せるでしょ」
「そうだね。じゃあ、よろしくね」
そう言い残し、私はその場を後にした。

 私はギルドに着くと、掲示板へと向かった。本来はびっしり貼ってあるんだろうけど、ここは、割と安全地帯なので、雑魚MOB討伐の依頼がほとんど。しかも、一日に数件しかないことから、ほんとに稼ぎが良くない。宿代、食費、剣の修理費諸々で、大体三千ユピルくらい。そして、一日に稼げる私の最高金額が、三千五百ユピルなのだ。ほんとにカツカツで困っている。
「なんか、いい依頼ないかなぁ。そうだ、受付カウンターで聞いてみるとしますか」

「受付の人~、いい依頼ないですかぁ~」
「そうですねぇ、今出てるものですと、一番高くて、五万ユピルの依頼とかありますよ」
「ご、五万!?なんで、そんなに高いんですか?」
受付の人はちょっと困った顔で、
「近頃この辺に来ている剣士さんが、力試しに付き合ってくれたら、払うって言ってったんですよ」
「それはまぁ、相当な自信家ですね」
「いえ、レベルも実力も滴さんと互角、またはそれ以上だと思いますよ」
それは、結構強いね。レベル18の私と互角と言うと、この周辺では、一位二位を争う仲になりそうだ。あとは、装備、スキル、その辺で勝ち負けは変わりそうだけど、、、。
私は、ある程度のスキルは分かるけど、EX(エクストラ)スキルが絡んでくると、厄介だなぁ。とはいえ、これから街を出るとなると、数え切れないくらい格上と戦うんだ。ここらで自分の実力を確かめておくのも大事だよね。
「じゃあ私、その依頼受けます」
「え!?こ、コホン。分かりました。では、手続きは、こちらでしておきますので、その方は、ちょうどギルドの食事スペースにいらっしゃるので、お会いになってみてください。」
「分かりました」
その足で、私は依頼主に会いに行った。一体どんな人なんだろう。怖い人だったらどうしよう、、、。

ーギルド・食事スペースー

 「あなたが依頼を受けてくれた人?」
そこにいたのは、桃色のポニーテール、蒼の瞳、腰には刀をこさえた私と同じくらいの歳の女の子だった。しかし、どこかで見たことがあるような、、、。
「あ、はい。そうです」
「ありがとう、この辺には私と戦えるレベルの剣士がいなくて困ってたのよ」
そりゃあ、ここが初級冒険者の街だからだよ。
「私は、自分の力試しというか、そろそろ街を出たいから、自分の技力を測ろうかなって、受けました」
「そうなの、よろしくね。私は、愛川 百合明(あいかわ ゆりあ)よ」
「雨草 滴(あまくさ しずく)です。こちらこそよろしく」
挨拶をすると、握手を交わした。

 そして、ようやく既視感の正体に気がついた。この子は、元の世界で、私が通ってた学校のNo.2。《神速の貴女》の異名を持つ、剣道部のエース、愛川 百合明。
これは、とんでもない子を相手にすることになってしまった。
私の剣術で、この人に勝てるのか、、、。
やるしかないか。

ー鍛冶屋・桜ノ園ー

 「戻ったよー、シーナ」
私は、百合明さんを連れて、剣を取りに戻った。声を聞いて、奥の工房から、シーナが姿を現した。
「おかえりーって、うぇっ!?滴、その人って」
「そう、有名人よ、、、」
「別に、私は有名人ではないぞ?」
そう言われても、あなた以外からすると、相当な有名人です。なんせ、いつも成績は、学年トップ、剣道じゃ全国大会に出て二回優勝してるし。元の世界じゃ、うちの学生で知らない人は居ないってくらい有名よ。
「剣は修理終わってるよ、ほら」
 そう言われ、剣を受け取った。
「ありがとう、シーナ」
修理費をそのまま手渡した。
シーナが、不思議そうに百合明さんを見た。
「百合明さんは、刀使いなんだね。私、この世界に来て、初めて見たよ。刀」
百合明さんは、左腰に刺さっている刀に手を乗っけた。
「この刀の名は《アメノウズメ》。私がこの世界に来て、一番最初に倒したBOSSモンスターからドロップした刀だ」
シーナは、少し焦っている。そんな事なのか?
「滴、百合明さんはただ者じゃないのが再確認出来たよ、、、」
「え?どういうこと?」
「《アメノウズメ》は、この世界に存在する刀の中で上から数えて三つ目に強い刀だよ。いわゆる魔刀。超強力な武器だよ」
えぇー!そんなぁ、、、。
ちょっと泣けてくる、、、。
そんなの、相手にできるわけないでしょうが!私の剣は、オーダーメイドの剣だけど、言ってしまえば、その辺で手に入る素材使ってるだけだからなぁ。
普通に考えて、勝つのは無理だ。でも、引き分けになら、もっていけるかもしれない。

ーエレジオ南区・決闘(デュエル)エリアー
 
 私達は、決闘エリアに来た。
ここは、私達がいくら戦いあおうとHPが残り一割になると、戦闘が強制終了する場所なのだ。なので、稀にここで決闘をする人がいるとかいないとか。
 決闘のルールは、二種類。『五割決着』『初撃決着』の二つだ。
今回は、百合明さんの希望でHPが一割になるまで戦うことになった。
今は、決闘前の準備時間、装備の手入れをしている。
 私のステータスは、こんな感じだ。

「雨草滴」・・・レベル18《剣士》
《スキル》・〈ライジングストライク〉〈花火〉〈火影〉〈一閃〉
《武器》・〈黒鉄の剣+9.3〉

 正直、これで勝てるか不安だ。スキルもそんなに数ないし、武器は強化してもらったけど、それでも不安だ。あとは、自分の腕を信じるしかない。
 ーさぁ、行くぞ!

【第四話】に続く、、、。
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