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第五章 闇ギルドと猫耳の姫君(プリンセス)
第二十五話 「エピローグ」
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「ちょっと!少し待ってよ、ルドルフ!!」
「ついてくんなよ!!」
ルドルフと呼ばれた青年は苛立たし気に返事を返した後で、はっとした表情となり
「…ごめん」
と後ろを付いて来ていた少女…マキノに謝った。
「別にいいけどさ。どうしたの?」
普段、そんなに激高する事が無い彼女の幼馴染が珍しく声を荒げたの事に驚きつつも、何があったのか優しく尋ねるマキノ。
ルドルフはバツが悪そうな表情を浮かべると、
「別に、どうもしないよ。自分に腹が立つだけさ」
そう言ってふいっと横を向いた。
ルドルフの言葉を聞いたマキノは軽くため息を吐くと、この本当は何でもできるはずなのに考えすぎて行動が起こせない幼馴染をどうしたものかと頭を悩ませた。
マキノは小さい頃から常に一緒にいるルドルフの事が大好きだったし、ルドルフの事なら何でも分かるつもりでいた。
もっとも、ルドルフが自分の事を自分と同じような気持ちで見ていてくれるのかについては冷静な判断は出来ないので考えないようにはしていた。
マキノは最近の大人たちの話を思い返す。
聞けば、人族が自分たちを殺しにやってくるという話で持ちきりだった。
自分達獣人族も人族と同じ人種のはずなのに、人族の連中は獣人族は魔物の一種だと考えているのだと言われた。
見た目が少し違うだけで、何故こんな苦しい思いをしなければならないのか、マキノも理不尽なこの境遇にいら立ちは感じたが、どうすればいいのかは考えても答えは出なかった。
でも、マキノから見てルドルフは常にどうすればいいのかを考えているようだった。そして実際、ルドルフは獣人族の置かれている状況を変えるにはどうすればいいのかを常に考えていた。
本来その部族を統括すべき大人達はただ嘆き、自分達の運命を呪うだけで対策を講じようとはしなかった。
それはこれまでの経験で、何をやっても無駄だという諦めの気持が大きかったのかもしれない。
若いルドルフは新しい方法を常に頭で考えていたが、彼には決定的にかけている素養があった。
それは行動力であった。
どんなに有用なプランを考えても、それを実行しなければ絵に描いた餅である。
実際に行動を起こさなければいけない事は分かっていても動けない。そのジレンマが、ルドフルの心に葛藤を生み出していたのだ。
「俺、ダメな奴だよな…」
そう言って自己批判をするルドルフの姿を見てマキノは胸を締め付けられる思いだったが、どう言ってあげればいいのか考えつかず、マキノも沈黙した。
と、その時、
「だから、こっちじゃないじゃないですか!!」
誰かに怒りをぶつける年若い女性の声が聞こえてきた。
思わず声の方へ眼を向けると、そこには自分たちの方へ向かって歩いてくる一人の人族の少女の姿が見えた。
「ルドルフ!!」
マキノは咄嗟にルドルフへ声をかけ、警戒を促した。
人族に見つかれば、また討伐対象として攻撃されるかもしれない。
こちらに向かってくる少女はまだ幼く見えるのでこの子に何かされる心配は無いと思ったが、もし後々軍隊に自分たちの事をしゃべられると集落全体に迷惑がかかると考えたマキノは、急いでその場を離れようとした。
だが、既にその少女はこちらの事を認識している様子で、「すみませーん」等と言いながら明らかに自分たちの方へ近づいて来ていた。
ルドルフも少女に気づいた様子で、明らかに警戒心を露わにしてマキノの前に立った。
二人の間近まで来た少女は長い銀髪が印象的な恐ろしく美しい少女だった。何故か黒のメイド服を身に付けており、肩口には異様に長い尻尾を揺らす黒猫が乗っていた。
「ごめんなさい、この辺りは何というところなのかしら?どうも道に迷ってしまったようで…」
苦笑を浮かべた少女が気さくに話しかけてくる事にルドルフとマキノは軽い衝撃を受けた。
人族は獣人族を魔物と同一しているのではなかったか?であれば、話しかける事など無いのに、この少女の態度は何だ!?
ルドルフとマキノが少女の問いかけに反応できずにいると、怪訝な表情を浮かべた件の少女は、
「どうかしましたか?」
と二人に問いかけた。
ようやくに再起動したルドルフは、
「あんた、俺たちが誰だか分かってるのか?」
と目の前の少女に警戒心を隠そうともせず疑問を口にした。
「は?…誰って、獣人族の…その獣耳は獅子人族でしょうね。違いますか?」
その答えを聞いた二人は、再び衝撃を受けた。
普通の人族は自分たちを獣人族などと呼ばないし、そもそも獣人に種別がある事など知らないはずなのだ。
そしてこの少女が話しているのが獅子人族の言葉である事をその時初めて気づき、更なる衝撃を受けた。
「…あんた、いったい何者なんだ!?」
強い衝撃と共にそんな質問が思わずルドルフの口をついて出た。
その言葉を聞いた少女は目の前の二人の人物にこう答えた。
「私は旅の美少女占い師、アリスと言います。この子はタロ。よろしくお願いしますね?」
それがアリスとルドルフ、そしてマキノの出会いだった。
【 闇ギルドと猫耳の姫君 ~完~ 】
「ついてくんなよ!!」
ルドルフと呼ばれた青年は苛立たし気に返事を返した後で、はっとした表情となり
「…ごめん」
と後ろを付いて来ていた少女…マキノに謝った。
「別にいいけどさ。どうしたの?」
普段、そんなに激高する事が無い彼女の幼馴染が珍しく声を荒げたの事に驚きつつも、何があったのか優しく尋ねるマキノ。
ルドルフはバツが悪そうな表情を浮かべると、
「別に、どうもしないよ。自分に腹が立つだけさ」
そう言ってふいっと横を向いた。
ルドルフの言葉を聞いたマキノは軽くため息を吐くと、この本当は何でもできるはずなのに考えすぎて行動が起こせない幼馴染をどうしたものかと頭を悩ませた。
マキノは小さい頃から常に一緒にいるルドルフの事が大好きだったし、ルドルフの事なら何でも分かるつもりでいた。
もっとも、ルドルフが自分の事を自分と同じような気持ちで見ていてくれるのかについては冷静な判断は出来ないので考えないようにはしていた。
マキノは最近の大人たちの話を思い返す。
聞けば、人族が自分たちを殺しにやってくるという話で持ちきりだった。
自分達獣人族も人族と同じ人種のはずなのに、人族の連中は獣人族は魔物の一種だと考えているのだと言われた。
見た目が少し違うだけで、何故こんな苦しい思いをしなければならないのか、マキノも理不尽なこの境遇にいら立ちは感じたが、どうすればいいのかは考えても答えは出なかった。
でも、マキノから見てルドルフは常にどうすればいいのかを考えているようだった。そして実際、ルドルフは獣人族の置かれている状況を変えるにはどうすればいいのかを常に考えていた。
本来その部族を統括すべき大人達はただ嘆き、自分達の運命を呪うだけで対策を講じようとはしなかった。
それはこれまでの経験で、何をやっても無駄だという諦めの気持が大きかったのかもしれない。
若いルドルフは新しい方法を常に頭で考えていたが、彼には決定的にかけている素養があった。
それは行動力であった。
どんなに有用なプランを考えても、それを実行しなければ絵に描いた餅である。
実際に行動を起こさなければいけない事は分かっていても動けない。そのジレンマが、ルドフルの心に葛藤を生み出していたのだ。
「俺、ダメな奴だよな…」
そう言って自己批判をするルドルフの姿を見てマキノは胸を締め付けられる思いだったが、どう言ってあげればいいのか考えつかず、マキノも沈黙した。
と、その時、
「だから、こっちじゃないじゃないですか!!」
誰かに怒りをぶつける年若い女性の声が聞こえてきた。
思わず声の方へ眼を向けると、そこには自分たちの方へ向かって歩いてくる一人の人族の少女の姿が見えた。
「ルドルフ!!」
マキノは咄嗟にルドルフへ声をかけ、警戒を促した。
人族に見つかれば、また討伐対象として攻撃されるかもしれない。
こちらに向かってくる少女はまだ幼く見えるのでこの子に何かされる心配は無いと思ったが、もし後々軍隊に自分たちの事をしゃべられると集落全体に迷惑がかかると考えたマキノは、急いでその場を離れようとした。
だが、既にその少女はこちらの事を認識している様子で、「すみませーん」等と言いながら明らかに自分たちの方へ近づいて来ていた。
ルドルフも少女に気づいた様子で、明らかに警戒心を露わにしてマキノの前に立った。
二人の間近まで来た少女は長い銀髪が印象的な恐ろしく美しい少女だった。何故か黒のメイド服を身に付けており、肩口には異様に長い尻尾を揺らす黒猫が乗っていた。
「ごめんなさい、この辺りは何というところなのかしら?どうも道に迷ってしまったようで…」
苦笑を浮かべた少女が気さくに話しかけてくる事にルドルフとマキノは軽い衝撃を受けた。
人族は獣人族を魔物と同一しているのではなかったか?であれば、話しかける事など無いのに、この少女の態度は何だ!?
ルドルフとマキノが少女の問いかけに反応できずにいると、怪訝な表情を浮かべた件の少女は、
「どうかしましたか?」
と二人に問いかけた。
ようやくに再起動したルドルフは、
「あんた、俺たちが誰だか分かってるのか?」
と目の前の少女に警戒心を隠そうともせず疑問を口にした。
「は?…誰って、獣人族の…その獣耳は獅子人族でしょうね。違いますか?」
その答えを聞いた二人は、再び衝撃を受けた。
普通の人族は自分たちを獣人族などと呼ばないし、そもそも獣人に種別がある事など知らないはずなのだ。
そしてこの少女が話しているのが獅子人族の言葉である事をその時初めて気づき、更なる衝撃を受けた。
「…あんた、いったい何者なんだ!?」
強い衝撃と共にそんな質問が思わずルドルフの口をついて出た。
その言葉を聞いた少女は目の前の二人の人物にこう答えた。
「私は旅の美少女占い師、アリスと言います。この子はタロ。よろしくお願いしますね?」
それがアリスとルドルフ、そしてマキノの出会いだった。
【 闇ギルドと猫耳の姫君 ~完~ 】
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