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第1章 監獄の住人1-16

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彼は、おおよその自身の役割は推測していた。

最後の英国王室、

アン女王が逝去なされたあと、

跡継ぎがいなかったため

いざこざはあったが、

これを継承したのがドイツから来たドイツ人

ジョージ1世、

そして2代目ドイツ人ジョージ2世、

皇帝であるのに英語がまったく話せない、

ドイツに居住御希望されるのだ。

当然、英語が話せるドイツ人はいる、

だが「イングリッシュ」は、

「ポテト」が大嫌いだ。

なぜか、英国に在住のユダヤ人が宮廷を支配し

ハノーファ御付のハッペンハイム卿の

自由にできる国となってしまった。



それに猛攻撃したのが

清教徒オリヴァー・クロムウェルの最大の支援者で

ヴァチカンのスパイ、

トーリー党のハンタギュー公爵家と

実質的にアン女王を殺した故オックスフォード卿と

僭王チャーリーの残り香であるジャコバイトだ。

残党はブルボン・カトリックと結託し、

テロリズムをしている状態であった。




10月末に先王ジョージ2世が崩御し、

じきに戴冠式が行われる。

いままでどおり、

大英帝国の皇帝陛下が、

ハッペンハイムの

傀儡人形であればよいのだが、

次の皇帝は不運か必然か、

「イングリッシュ」が堪能であらせられる。

ユダヤ人を嫌悪されているご様子、不幸なことだ。



ハッペンハイムとその取り巻きのユダヤ人は排斥されつつあり

かつての初代首相ロバート・ウォルポールの盟友で

12支族の族長の家系、

ギデオン男爵でさえ

謁見を拒否される有様だ。



おそらく彼の役割は 

「案内役」だ。

賓客の接待だろう。

外交使節が戴冠式にお祝いに来るのに

「会わない」ということは

大英帝国の次期皇帝でも、

出来ないだろう。



ハッペンハイム銀行の現当主モーセス・ハッペンハイム卿から


直接指名され、接待を任された。

そういうことだろう。

その賓客は名前も不明、

どこから来るどのような人物か、

まったく知らされていない。そこが不安だ。

ハッペンハイム銀行で、

重役である彼が選ばれると言うこと

その年齢を考えれば、

賓客の年齢は「ティーンエイジャー」

だろう。



「子供、か。」
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